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管理栄養士が教える、糖尿病の方でも血糖値に影響が出にくい間食“8つ”のルール

執筆者: すずきともこ(管理栄養士)
最終更新日 2024年10月14日
おやつ

糖尿病の方、または血糖値の気になる皆さん、ついつい間食をしていませんか?

間食をすると血糖値に影響してしまうと頭では分かってはいても、好きなものはなかなかやめられないものです。

当院では管理栄養士による栄養カウンセリングを日々行っていますが、患者さんからよく次のような質問をいただきます。

「間食したいけれど、糖尿病だから絶対だめですか?」
「食べていいタイミングはありますか?」
「食べるとしたら洋菓子と和菓子、どちらの方がいいですか?」
「カロリーが低ければ間食しても大丈夫ですか?」

などなど……。

そこでこの記事では、糖尿病の方の間食におすすめの食品や食べるタイミングなど、間食をする時にこれだけは気を付けていただきたいというポイントをお伝えします。

1.糖尿病と間食の関係

まず、糖尿病と間食の影響について見ていきましょう。

1-1.糖尿病とは


糖尿病は、インスリン(食後血液中に増えたブドウ糖を筋肉や肝臓などへ取り込んで血糖を下げる働きを持つホルモン)の効き目が十分でないため、血糖値が高くなったままになってしまう病気です。

糖尿病は、大きく2種類に分けることができます。

・1型糖尿病
インスリンを作る膵臓の細胞が何らかの原因でこわされることで、インスリンが作られなくなり発症します。子どもや若年者に多くみられます。

・2型糖尿病
食べ過ぎや肥満によって、インスリンの分泌が少なくなったり、働きが悪くなるために起こります。

日本の糖尿病患者の約90%がこの2型糖尿病といわれています。おもに中高年以降にみられますが、最近は若年者の発症も増加しています。

糖尿病に目立った初期症状はなく、発見が遅れることがありますが、糖尿病のサインとしてあげられるのは、高血糖による症状で、以下のようなものがあります。

・喉がよく渇く

・尿の回数の増加

・体重減少

・疲れやすい

血糖値が高すぎると意識障害を引き起こすこともあります。

また、血糖値が高い状態が続くと、血液がドロドロになり、スムーズに流れなくなることで、血管に負担が生じ傷がつきます。

このように血管に傷がつくことで、失明してしまうこともある「糖尿病性網膜症」や、手足のしびれ・痛みなどの症状が出る「糖尿病性神経障害」、むくみ・血圧上昇・腎不全といった症状の「糖尿病性腎症」といった合併症を引き起こす恐れがあり、糖尿病は怖い病気といえます。

◆「放っておくと怖い糖尿病」について>>

◆「糖尿病になりやすい人の特徴と予防法」について>>

◆「糖尿病の検査」について>>

1-2.間食をすると血糖値にどんな影響が出るのか

血糖値の変化に大きく影響を与える栄養素が「糖質」です。糖質はごはん・パン・麺類・お菓子など、いろいろな食べ物に含まれています。

食後の血糖値の変化は食事や間食の種類によって異なり、糖質の多い食品を食べるほど血糖値が上がります。

血糖値は、食べてから時間が経つにしたがって徐々に下がっていきますが、間食を摂る時間によっては、血糖値が十分に下がりきらない状態で次の食事を摂る事になります。

そして、血糖値が高いまま就寝すると、朝まで高血糖の状態が続くことにもなります。

糖質が多い食品を食べて血糖値が上がると、それを下げようとしてインスリンが大量に分泌されますが、これを繰り返していると血糖値が1日の中で年中上がったり下がったりするようになります。

この状態を「血糖値スパイク」といい、動脈硬化や脳卒中、自律神経を乱すなどのリスクが高くなるので注意が必要です。

◆「糖尿病予備軍は「血糖値スパイク」を要チェック!」>>

2.間食8つのポイント

健康に気を付けて間食するためには、注意したいポイントがあります。ここでは間食における適切な種類やタイミング、注意点について見ていきましょう。

2-1.間食は1日200kcalまで

間食したいからといって、1食抜いてその分のカロリーを減らせばいいというわけではありません。

・ごはんなどの主食
・肉や魚などのたんぱく質のおかず
・ミネラルや食物繊維が豊富な野菜

1回の食事でこの3つをきちんと食べた上で、間食はあくまでも「オマケ」として考えましょう。

1日あたりの間食は80~160kcalが理想です。多くても200kcal以内に収めましょう。

ただし、「200kcal以内だからいいだろう」と、菓子パンなど糖質量の多いものを毎日食べてもよいというわけでもありません。

どうしても食べたくなった時だけ、1日に食べる量を半分~3分の1くらいにして2日に分けて食べるなど、工夫することが大切です。

2-2.間食は「たんぱく質」が理想です


間食を食べる時は、たんぱく質と一緒に摂ると血糖値の上がり下がりが穏やかになります。

例えば、

・ごま・チーズ・豆が入っているおせんべいを選ぶ
・菓子パンではなく、ツナやたまごのサンドイッチにする

などです。

たんぱく質を摂る事によって、腹持ちもよくなるのでおすすめです。

特にたまごは、たんぱく質だけでなく、ビタミン・ミネラル・カルシウム・鉄・亜鉛などの必須アミノ酸が全て入っている理想の食品です。

◆「鉄分の主な特徴」について>>
◆「亜鉛の主な特徴」について>>

1個あたり80kcal程度なので、ゆでたまごを間食に取り入れるのもおすすめです。

◆「たんぱく質をたっぷり摂って美と健康を」>>

2-3.ナッツ・フルーツを選びましょう

ナッツとフルーツをおすすめする理由は、食事で足りない栄養素を補うことができるからです。

・ナッツ類(アーモンド・カシューナッツ等)

ナッツ類にはマグネシウムなど普段不足しがちな栄養素や良質な油が含まれています。さらに、噛みごたえもあるのでおすすめです。

ただし、ナッツはカロリーが高いので20粒程度に抑えましょう。また、塩味付きのものだと塩分を摂り過ぎてしまうので、無塩タイプが良いでしょう。

・フルーツ

フルーツを生で食べると、ビタミンCを摂取することができます。特におすすめなのが、食物繊維も豊富なキウイです。

◆「ビタミンCの主な特徴」について>>

「果物は甘いけど大丈夫なの?」と心配な方もいるかもしれませんが、果物に含まれる糖質は血糖値をほとんど上昇させないので、適量であれば食後高血糖にはなりにくいです。

もちろん、食べ過ぎると中性脂肪に変わってしまいますから、なるべく80kcal以内くらいの適量を守りましょう。

<80kcalの目安>
・キウイ1個半
・グレープフルーツ半分
・いちご5粒
・りんご半分
・みかん2個

2-4.間食のタイミングはいつが良いか

最も良くないタイミングは、夜寝る前です。

食べ終わった直後で、まだ血糖値が高い状態のまま眠りについてしまうと、就寝中や翌朝の血糖値に影響が及びます。

また、就寝中はエネルギー消費量が少ないため、肥満の原因にもつながります。

当院の糖尿病患者さんの中には、

「午後のおやつタイムに、付き合いで食べてしまう」
「寝る前になんとなくお腹が空いて、つい食べてしまう」

という方が多くいます。

間食は活動量が多い昼間、特に運動や活動を始める前に食べれば、ある程度のエネルギー消費が期待できるため、血糖値が上がったままになりません。

【参考情報】糖尿病ネットワーク
http://www.dm-net.co.jp/oyatsu-meijin/

また、食事と次の食事の間ではなく、食事のすぐ後に、デザート的な流れで食べるという方法もあります。

この方法には、1日の血糖上昇の山を、朝・昼・夕の3つと考えて、その3食以外の時間帯に血糖値を下げることができるというメリットがあります。

「間食」という言葉にならって、食事と食事の間でおやつを食べてしまうと、昼食後しばらくしてせっかく血糖値が下がり始めたところ(もしくはまだ上がったまま)の15時頃におやつを食べてまたグンと上がり、それが下がりきらないうちに夕食を食べてまたさらに上がるという、「ホップ・ステップ・ジャンプ現象」が起きてしまいかねません。

このように、一日中だらだらと血糖値の高い状態が続いてしまうのが一番よくないのです。

2-5.食べ過ぎない秘訣


間食は、あらかじめ取り分けておきましょう。

目の前に食べ物があると、つい「あとちょっとだけ……」と、どうしても余計に食べてしまうものです。

「今日はこのくらいにしよう」という分をお皿に取り分けて、ゆっくりとよく味わって食べることで満足感につなげましょう。

また、おやつを買い置きすることもやめておいた方が良いでしょう。

2-6.カロリーだけでなく「糖質量」もチェック

当院の栄養カウンセリングに通われている患者さんに、

「洋菓子よりも和菓子の方がカロリーが低いから、カラダに良いんでしょ?」

と、よく質問されますが、和菓子は糖質のかたまりです。

カロリーももちろん大切ですが、血糖値を上げる原因である「糖質」が少ないものの方が、血糖値の上がり下がりに影響しない良い間食だと言えます。

例えば「糖質」という観点から、主なお菓子の原材料をみてみると、

<どら焼き>
 ・皮…小麦粉と砂糖
 ・あんこ…小豆と大量の砂糖
<大福>
 ・皮…もち米と砂糖
 ・あんこ…小豆と大量の砂糖
<おせんべい>
 ・うるち米
<クッキー・マドレーヌ>
 ・小麦粉と砂糖
<ポテトチップス>
 ・じゃがいも

これらの原材料は、すべて血糖値上昇の原因となる糖質でできています。

カロリー表示だけにとらわれず、原材料に糖質がどのくらい入っているかという視点を持つことも大切です。

2-7.間食の理想的な組み合わせ

お菓子類は糖質が多く、カロリーも高く、ついつい食べ過ぎてしまうのが問題です。

しかし、例えばクッキーが食べたい時は、

・2~3枚のところを1枚に減らし、代わりにチーズやたまごを食べる
・豆乳、カフェラテと一緒に食べる

など、プラス「たんぱく質」を意識した工夫をすれば、血糖値の上昇を緩やかにし、満足感と栄養どちらもとれることになります。

「あと少し」におすすめの間食
・チーズ
・ミニトマト
・フルーツ
・高カカオチョコレート
・あたりめ

2-8.満足の秘訣は「集中食べ」


テレビを見ながら、何かをしながらの「ながら食べ」ではなく、食事中は食べることに集中しましょう。

なぜなら、目の前の食べ物に集中するほど、満足感を得やすくなるからです。

また、間食を食べる時は、

「これは私が今本当に食べたいものなのか」
「目の前にあるからなんとなく食べていないか」
「口寂しいだけで食べていないか」

と、いったん胸に手を当てて考えてみましょう。

食べ過ぎ防止策として、間食の前に温かいお茶やコーヒーをゆっくり1杯飲むのも効果的です。

3.間食についてのよくある質問

ここまで間食のポイントについてお伝えいたしましたが、間食についてよくある質問にお答えいたしますので、ぜひご参考になさってください。

3-1.チョコレートは体にいい?


健康に良いとされるのは、カカオの含有量70%以上の「ハイカカオチョコレート」です。

チョコレートのパッケージの裏側を見て、原材料名の一番初めに「砂糖」と書いてあるものは、「チョコレートの味をした砂糖」だと思ってください。

チョコレートを選ぶ時は、原材料名の一番最初が「カカオマス」のものを選ぶようにしましょう。

カカオには「ポリフェノール」という強い抗酸化作用を持つ成分の一種である「フラボノイド」が含まれています。

ポリフェノールには、老化や生活習慣病の原因とされる活性酸素を取り除く働きがあるとされ、フラボノイドを摂取すると、動脈硬化など糖尿病合併症の予防につながるとされています。

【参考情報】『Cocoa and Chocolate in Human Health and Disease』NCBI
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4696435/#:~:text=Cocoa%20contains%20a%20number%20of,cocoa%20(13%2C%20150).

ただし、ハイカカオだから大丈夫と食べすぎるのは問題です。食べる量は3かけ程度にしましょう。

3-2.カロリーゼロのお菓子や飲み物なら大丈夫?

「カロリーゼロ」「ノンカロリー」と表示されている製品でも、実際には少量のエネルギー(100ml中5kcal未満)が含まれています。

ですから、「カロリーゼロだから大丈夫」と言ってたくさん食べてしまうのは、あまり好ましくありません。

「糖質ゼロ」と表示されているものは、砂糖や甘味料などの糖質が含まれていないので、血糖値の急な上昇を防ぐことができます。

「糖質ゼロ」と似た表示で、「糖類ゼロ」という商品もあります。

「糖類ゼロ」には砂糖は使用されていませんが、糖質ゼロとは違って人口甘味料が含まれています。

人工甘味料には、体内で吸収されずに排出されるタイプと、一部が消化吸収されて血糖値を上げるタイプがあります。いずれも摂りすぎには注意しましょう。

3-3.手作りできるおやつレシピを教えて!

【なめらかお豆腐チョコムース】

<材料(6カップ分)>
・木綿豆腐・・・1丁
・ココアパウダー・・・大さじ3
・メープルシロップ・・・大さじ3
(ラカントS、アガベシロップ、てんさい糖でも可)

<作り方>
(1)木綿豆腐は、ざると重石を使ってよく水切りをしておく。
(2)フードプロセッサーに(1)とその他の材料を入れ、なめらかになるまでよく混ぜる。
(3)容器に入れて冷蔵庫で冷やしてできあがり

お豆腐の臭みはあまりなく、なめらかで濃厚ですよ。

4.おわりに

糖尿病になる方は、そもそも「甘いものが好き」という方が多いため、おやつを完全にやめるのは無理!ということも多いと思います。

そんな時は、この記事で紹介したポイントをぜひ参考にしてください。

また、当院では、管理栄養士による栄養カウンセリングを行っています。

おやつの種類や摂り方など気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

◆当院の栄養カウンセリングについて>>
◆医師が教える!血糖値を下げる5つの方法>>

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