放っておくと怖い糖尿病の症状・検査・原因・治療の基本情報
健康診断や血液検査で、「血糖値が高め」または「糖尿病予備軍」と言われたことはありませんか?
厚生労働省が発表した「令和元年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる人は1,000万人以上、予備軍と思われる人も1000万人以上、合わせて2000万人以上いることがわかりました。その中できちんと治療を受けている人は、わずか30%程度であるといわれています。
糖尿病は、放っておくと重い合併症を引き起こす恐ろしい病気ですが、早期に発見して適切な治療を受け、生活を改善すれば進行を防ぐことができます。
この記事では、「糖尿病とはどんな病気なのか」「血糖値が高いと何が問題のか」などの基本情報を解説します。糖尿病という病気を理解して、ぜひ予防や改善に役立ててください。
目次
1.糖尿病とはどんな病気なのか
糖尿病とは、インスリンというホルモンがうまく働かないことで、血糖値が慢性的に高くなる病気です。
私たちが食事を摂ると、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が上昇します。すると、すい臓からインスリンが分泌され、食後の急激な血糖値の上昇を抑えてくれます。
ところが、インスリンの分泌や作用に問題があると、血液中のブドウ糖の量を調整することができなくなり、血糖値が高い状態が続いてしまうのです。これが糖尿病です。
糖尿病は、初期の段階ではほとんど自覚症状がないので、病気があっても気づかないことが多いものです。一番わかりやすいサインは「異常なのどの渇き」です。
【参考情報】『What is Diabetes?』National Institute of Diabetes & Digestive & Kidney Diseases
https://www.niddk.nih.gov/health-information/diabetes/overview/what-is-diabetes
2.糖尿病の症状
糖尿病が進行すると、血管に障害が起こり、さまざまな合併症がもたらされます。
血糖値が高い状態が長く続くと、血液中に増えすぎたブドウ糖のせいで、血液がドロドロになります。すると、血液がスムーズに流れなくなるので血管に負担がかかり、傷ついてしまいます。これが合併症の原因となります。
◆「医師が教える!血糖値を下げる5つの方法」>>
糖尿病の主な合併症には、「糖尿病性網膜症」「糖尿病性神経障害」「糖尿病性腎症」があります。
【参考情報】『糖尿病の合併症』日本臨床内科医会
https://www.japha.jp/doc/byoki/030.pdf
3.糖尿病の原因
糖尿病の原因には以下のようなものがあります。
3−1.食生活の乱れ・食べ過ぎ
糖尿病の患者さんや予備軍の方は、血糖値を下げる力が弱まっているので、食べ過ぎることでさらに血糖値が上がりやすく、下がりにくい状態になります。この状態を防ぐには、適切な食事量で、必要な栄養を摂ることが重要です。
3−2.肥満
日頃から食べ過ぎてしまう人は、エネルギー摂取量が多いため肥満になりがちです。肥満になると、インスリンの働きが弱くなり、血糖値が上がりやすくなります。
日本人はもともとインスリンが出にくい体質のため、少しの肥満でも糖尿病になりやすいといわれています。
3−3.飲み過ぎ
アルコールはカロリーが高いだけではなく、食欲を増進させるため、いつの間にかおつまみを食べ過ぎてしまい、肥満の原因になります。
アルコール以外にも、ジュースや清涼飲料水、エナジードリンクの飲み過ぎも血糖値上昇の原因となります。
3−4.運動不足
運動不足は肥満の原因になります。また、普段あまり運動をしない人は、エネルギーを消費しにくい体になりがちです。
運動不足が続くと、体内にエネルギーが残ったままの状態となり、血糖値が上昇しやすくなります。
3−5.遺伝
親や祖父母など親族に糖尿病の人がいると、体質的になりやすいということは、厚生労働省の研究報告などにより明らかになっています。
【参考情報】『糖尿病』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b7.html
ただし、生活習慣の見直しで予防することは可能なので、過度に怖がる必要はありません。
4.糖尿病の種類
糖尿病には、いくつかの種類があります。
4−1.1型糖尿病
自己免疫(自分の細胞を異物だと勘違いし、攻撃すること)が原因で、すい臓のβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなる病気です。
幼少期~青年期に発症することが多いですが、中高年で発症する場合もあります。
4−2.2型糖尿病
生活習慣や食生活の影響で、インスリンの働きに問題が生じ、血糖値が高い状態が続く糖尿病です。日本人の95%の糖尿病患者はこのタイプと言われています。
以前は、中高年で発症することがほとんどでしたが、食生活の欧米化により、現在は若い人にも増えています。
4−3.妊娠糖尿病
妊娠中に糖の代謝が乱れ、血糖値が高くなることがあります。これを「妊娠糖尿病」といいます。
出産後、糖代謝機能は正常に戻ることが多いのですが、将来的に糖尿病になる確率は、血糖値が正常だった妊婦さんに比べて高くなります。
5.糖尿病の検査法
糖尿病かどうかを調べるには、血液検査と尿検査を行います。
血液検査では、血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)、インスリンの値を測定します。空腹時にブドウ糖を水で薄めたものを飲み、2時間後の血糖値を測定する検査を行う場合もあります。
尿検査では、尿中の糖分や、糖尿病の進行によって腎臓の機能が悪化していないかどうかを調べます。
6.糖尿病の治療法
糖尿病の治療には、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つがあります。
6−1.食事療法
食事療法は、糖尿病治療の基本であり、もっとも大切です。しかし、ただカロリーを減らすだけでは意味がなく、栄養のバランスが重要です。
◆「管理栄養士が教える、糖尿病の方でも血糖値に影響が出にくい間食“8つ”のルール」>>
6−2.運動療法
運動療法には、肥満を解消し、血流をよくする効果があります。さらに、インスリンの働きを高めて血糖値を下げる効果もあります。
しかし、極端な肥満や合併症がある人は、運動を控えた方がいい場合もあるので、医師に相談してください。
6−3.薬物療法
糖尿病の主な治療薬は、「インスリン注射」と「飲み薬」です。
1型糖尿病の人は、体内でインスリンを作り出すことができないため、必ず注射でインスリンを補充します。2型糖尿病の人も、状況によってはインスリン注射が必要です。
2型糖尿病の場合、食事療法と運動療法だけで血糖値がコントロールできる人もいますが、難しい場合は、合併症を予防するために飲み薬を服用します。
7.おわりに
残念ながら、糖尿病が完全に治ることはありません。しかし、きちんと医師の指導を受けて、血糖値をコントロールしていけば、合併症を防ぐことができます。旅行にも行けますし、妊娠、出産も可能です。健康な人と寿命も変わりません。
とは言え、糖尿病にならないに越したことはありません。健康診断などで「血糖値が高い」と言われたら、必ず再検査を受けて1日も早く治療を開始し、食生活を見直して生活習慣を改善しましょう。