指の関節がこわばる人はリウマチの疑いがあります
「朝起きると、指の関節がこわばる感じがする」。そんな症状が続く時は、リウマチ(関節リウマチ)の疑いがあります。
リウマチは、自己免疫疾患の一種で、関節の炎症や痛みを引き起こすことが多く、早期発見と治療が重要な病気です。
目次
1.リウマチとはどのような病気か
リウマチとは、本来、細菌やウイルスのような異物から身を守る「免疫」の仕組みが異常を起こし、関節の組織を「異物=敵」とみなして攻撃することで、痛みや炎症が引き起こされる病気です。
初期症状としては、「からだがだるい」「熱っぽい」「食欲がない」などの症状が続くほか、朝起きた時に、指や手首、足首などの小さな関節の周囲がこわばるという特徴があります。
また、ものがつかみにくくなったり、「ボタンをかける」「靴ひもを結ぶ」といった、指を使った細かな動作がしづらくなってきます。
リウマチが進行すると、手指の関節が腫れ、ひじやひざ、肩、股関節など全身の関節に症状が広がっていきます。さらに悪化すると、関節の骨や軟骨が変形したり、痛みや動きにくさによって、日常生活が妨げられます。
【参考情報】『関節リウマチ(RA)』日本リウマチ学会
https://www.ryumachi-jp.com/general/casebook/kansetsu-riumachi/#:~:text=%E9%96%A2%E7%AF%80%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%9E%E3%83%81%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%8C%E6%8C%87%E6%91%98%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
2.リウマチの原因と体質
リウマチの原因ははっきりとはわかっていませんが、細菌やウイルスの感染、過労やストレス、出産やけがなどをきっかけに発症することがあると考えられています。
また、タバコを吸う人や歯周病の人は、リウマチになりやすいことがわかっています。女性は男性よりリウマチになりやすく、特に30~50代で発症する人が多いです。
近年の遺伝子研究の結果、リウマチの発症原因の約40%は遺伝子が原因だとわかっています。そんな話を聞くと、「母がリウマチだから、私もリウマチになるのでは?」と心配になる人もいるかもしれません。
しかし、同じ体質を持つ一卵性双生児でも、一人がリウマチにかかり、もう一人はかからないことがあるので、病気そのものが遺伝するわけではありません。
ただ、リウマチになりやすい体質は遺伝することがあるので、一般女性のリウマチ発症率を200人に1人と考えた場合、身内にリウマチがいる方の発症率は100人に1人ぐらいに上がります。
遺伝性筋ジストロフィーなどの遺伝病は、たった一つの遺伝子で発症するのに対して、リウマチの場合は、おそらく10種類以上の遺伝子の組み合わせで発症すると考えられています。
ですから、親からリウマチに関する遺伝子を受け継いだのに健康な人もいますし、逆にリウマチに関する遺伝子を持たない人でも、ウイルス感染などにより遺伝子が傷つけられたことが原因で、リウマチになることがあります。
3.リウマチの検査
リウマチが疑われる症状が続くときは、「リウマチ科」「リウマチ外来」のある病院、または、リウマチ専門医のいる内科や整形外科を受診しましょう。
病院では問診のほか、血液検査、画像検査、尿検査などが行われます。
血液検査では、リウマトイド因子(リウマチ因子)や抗CCP抗体と呼ばれる自己抗体(免疫の仕組みが体内の細胞や組織に反応して攻撃するときに出る物質)の値を調べ、画像検査では関節の状態を確認します。
尿検査は、他の病気と区別したり、薬の副作用をチェックするために行います。
4.リウマチの治療
リウマチの治療には、免疫の異常を改善する「抗リウマチ薬」を中心に、腫れや痛みを抑える「非ステロイド抗炎症薬」、炎症に対して補助的に使う「ステロイド」、骨や軟骨、関節の破壊を抑える「生物学的製剤」を用います。
これら薬物治療を中心に、関節の機能を保つためのリハビリテーションや、場合によっては手術を組み合わせていきます。
リハビリには、「患部を温める」「手指の運動」など自分でできるものや、コルセットなどの装具や医療機器を利用して行うものがあります。編み物や書道、パソコンの操作など、趣味としても楽しめる作業が有効なこともあります。
いずれも医師や理学療法士、作業療法士と相談して行いましょう。
関節の変形が進み、日常生活に困るようになった場合は手術を行うこともあります。また、痛みがよくならなかったり、変形した手指の見た目が気になる場合も手術をおすすめすることがあります。
手術には、炎症を起こしている滑膜(かつまく:関節の内側を覆っている部分)を切除する方法や、変形した関節を人工関節に置き換える方法などがあります。
5.リウマチと似た症状がある病気
リウマチ以外にも、指の関節の痛みや腫れを起こす病気はいくつもあります。そのため病院では、他の病気ではないことを確認してから診断を下します。
5-1.ヘバーデン結節
変形性関節症の一種で、指の第1関節が腫れてこぶのように膨らんだり、曲がってしまう病気です。ズキズキとした痛みを伴うことや、患部に水ぶくれができることもあります。
女性ホルモンの一種であるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が減少するとなりやすいと考えられ、更年期以降の女性に多くみられます。
【参考情報】『へバーデン結節』日本臨床整形外科学会
https://jcoa.gr.jp/%E3%81%B8%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3%E7%B5%90%E7%AF%80/
5-2.バネ指
腱鞘(けんしょう)炎の一種で、指を曲げる腱が炎症を起こして、手のひらの指の付け根に固い部分ができます。指を曲げたり伸ばしたりするときに引っかかりがあり、症状が進むと、指を完全に伸ばすことができなくなります。
【参考情報】『バネ指(成人)』日本整形外科学会
https://jcoa.gr.jp/%E3%83%90%E3%83%8D%E6%8C%87%EF%BC%88%E6%88%90%E4%BA%BA%EF%BC%89/
5-3.その他
その他、ウイルスや細菌に感染することで起こる関節炎や、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群など膠原(こうげん)病に含まれる疾患でもよく似た症状が現れます。
また、肩こりがひどい時や更年期の症状としても、関節の痛みやこわばりが出ることがあります。
6.食事とサプリメント(葉酸)の注意点
リウマチでは、病気による食べ物の制限はありません。ですから、健康な人と同じように、栄養バランスのとれた食事を心がけてください。
肥満が病気の悪化につながることを報告する研究データもあるので、太り過ぎには注意しましょう。
【参考文献】『Contribution of Obesity to the Rise in Incidence of Rheumatoid Arthritis』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22514156
リウマチの薬の一種である「メトトレキサート(リウマトレックス)」を処方されている人は、葉酸入りのサプリメントや青汁などの健康食品は避けましょう。
メトトレキサートを処方する際は、薬の副作用を防ぐために葉酸を処方することがあるのですが、ここでさらに葉酸入りのサプリメントや青汁を摂ってしまうと、葉酸の摂り過ぎとなり、かえってメトトレキサートの効果を弱めてしまいます。
葉酸は、枝豆やほうれん草、海苔などの食材に多く含まれていますが、食事で適度に摂る分には問題ありません。
心配な時は、当院の管理栄養士に相談することもできますので、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。
7.肺の病気に注意して、タバコはやめましょう
関節リウマチの患者さんは、間質性肺炎をはじめとした肺の病気を合併する可能性が高いため、定期的に肺の検査をする必要があります。
65歳以上の方には、肺炎球菌ワクチンの予防接種もおすすめしています。
リウマチの治療に用いる抗リウマチ薬や生物学的製剤には、免疫機能を抑えるはたらきがあるため、薬を使っている間は感染症のリスクが高まります。
風邪やインフルエンザなどが流行している時期は人混みを避け、冷えや乾燥にも注意しましょう。もし感染症にかかったら、早めに病院を受診しましょう。
タバコを吸っている人は、必ず禁煙してください。タバコはリウマチの発症リスクを上げ、治療にも悪影響を及ぼします。また、慢性気管支炎や肺気腫など呼吸器の病気が誘発され、重い肺炎を引き起こす危険性も高まります。
副流煙の害も大きいので、患者さん本人だけではなく、ご家族の方もぜひ禁煙して治療に協力してください。
8.おわりに
かつてリウマチは、進行を止めることはできない病気とされてきましたが、現在は新しい治療薬が開発され、状況が大きく変わっています。
早めに適切な治療を行えば、病気の進行を抑えて関節の機能を保ち、日常生活や仕事への影響を少なくすることができます。朝起きた時に「手指のこわばり」を感じることが続いたら、早めに専門医に診てもらいましょう。