重症の花粉症~早めの対策で悪化を防ごう!
花粉症に悩む人は年々増えており、中には症状が重くなるケースもあります。くしゃみや鼻水だけでなく、目のかゆみや頭痛、倦怠感などが悪化し、仕事や勉強に支障をきたすことも少なくありません。
この記事では、花粉症が重症化する原因や症状について解説し、効果的な治療法や日常でできる予防策も紹介します。つらい症状に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.花粉症とはどのような病気か
花粉症とは、特定の植物の花粉によってアレルギー症状が引き起こされる病気です。
人間の体には、細菌やウイルスなどの異物が侵入した際に排除する「免疫」という仕組みが備わっています。しかし、この免疫反応が、本来無害である花粉に対して過剰に働くことで、さまざまなアレルギー症状が現れます。
1-1.主な症状
花粉症の代表的な症状には、以下のようなものがあります。
・鼻の症状:くしゃみ、鼻水、鼻づまり
※鼻水は、透明でサラサラしているのが特徴です。
・目の症状:かゆみ、充血、涙目
・喉や気道の症状:咳、喉のかゆみや違和感
・その他の症状:倦怠感、発熱、皮膚のかゆみ
症状の現れ方や重症度には個人差があり、軽い症状の人もいれば、日常生活に支障をきたすほど重症化する人もいます。
さらに、重症化すると治療の効果が出にくくなり、改善までに時間がかかることもあります。
1-2.原因となる花粉
花粉症を引き起こす主な植物には、以下のようなものがあります。
・春:スギ、ヒノキ
・夏:イネ
・秋:ブタクサ、カナムグラ
・冬:シラカンバ(主に北海道)
特にスギ花粉は飛散距離が長く、日本全国に広く分布しているため、スギ花粉による花粉症の患者が多くなっています。
花粉症というと春のイメージがありますが、花粉の飛散時期は植物によって異なります。そのため、どの花粉にアレルギー反応を起こすかによって、季節を問わず症状が出ることもあるのです。
【参考情報】『花粉症対策』厚生労働省
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kafun/dai1/02siryo2.pdf
2.花粉症が重症化する原因
この章では、花粉症が重症化する原因について詳しく解説します。
2-1.長時間花粉を浴びている
花粉を浴びる時間が長くなったり、飛散量が増えたりすると、体に入る花粉の量も多くなります。その結果、アレルギー反応が強まり、症状が悪化することがあります。
特に昼前後や夕方は花粉の飛散量が多くなるため、長時間の外出には注意が必要です。
花粉の飛散量や飛散期間は毎年異なります。その年の飛散予測を把握し、早めの対策をとることで、重症化のリスクを減らすことができます。
2-2. 生活習慣の乱れ
ストレスや睡眠不足、偏った食生活などの生活習慣の乱れは、免疫のはたらきに悪影響を与え、アレルギー反応を強める原因となります。
<ストレス>
過度なストレスは自律神経を乱し、免疫機能を低下させます。
<睡眠不足>
睡眠中に強化される免疫細胞の働きが弱まり、アレルギー反応が出やすくなります。
<栄養不足>
必要な栄養素が不足すると、免疫に関わる「免疫グロブリン」という物質が十分に作られません。
<運動不足>
適度な運動は免疫のはたらきを高め、逆に運動不足だと低下することがあります。
<タバコや過度な飲酒>
喫煙や過度な飲酒は免疫機能を損ない、アレルギー症状を悪化させる要因となります。
これらの要因が重なることで、花粉症の症状が悪化する可能性が高くなります。
2-3.大気汚染
PM2.5や黄砂などの大気汚染物質が花粉と接触すると、花粉が破裂し、中に含まれるアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が放出されます。
放出されたアレルゲンは微細化し、気管や肺の奥深くまで入り込みやすくなるため、アレルギー反応が強まりやすくなります。
さらに、大気汚染は花粉の破裂を助長し、高濃度のアレルゲンを拡散させるため、症状がより悪化することがあります。
特に黄砂はスギ花粉と同じ時期に飛散するため、これらの影響が重なることで症状が強く出ることもあります。
【参考情報】『花粉症と大気汚染の原因物質との関係性を科学的に解明』国立大学56工学系学部
https://www.mirai-kougaku.jp/eco/pages/150727.php
2-4.他のアレルギーの影響
喘息など他のアレルギー疾患を持っている場合、花粉症の症状が重くなりやすいことがあります。
アレルギー体質の人は、アレルゲンに対して過敏に反応しやすいため、花粉が体内に入ると通常よりも強い症状が出ることがあります。
例えば、喘息を持っている人は、すでに敏感になっている気道に花粉の影響が加わることで、花粉症だけでなく喘息の症状も悪化しやすくなります。
また、アトピー性皮膚炎を持つ人は、皮膚のバリア機能が低下しているため、花粉の刺激を受けやすく、症状が出やすい状態になっています。
3.重症の花粉症の症状
この章では、重症の花粉症の症状について説明します。
3-1.1日中くしゃみ・鼻水が止まらない
花粉症が重症化すると、発作的に何十回もくしゃみが続くことがあります。また、鼻水が滝のように流れ続け、なかなか止まらなくなることも。
ティッシュが手放せず、仕事や勉強に集中できない状態になり、日中のパフォーマンスが大きく低下してしまうことがあります。
3-2.鼻づまりがひどくて息がしにくい
1日のほとんどの時間、鼻が詰まっている状態が続きます。さらに、鼻が完全に詰まってしまうと口呼吸しかできなくなり、息苦しさを感じるようになります。
昼夜を問わず鼻づまりが続くと、仕事や勉強に集中できなくなったり、夜は熟睡できなかったりするなど、日常生活に大きな影響を及ぼします。
3-3.眼のかゆみ・充血・腫れが強い
花粉が目に入ると、花粉を追い出そうとしてヒスタミンやロイコトリエンといった物質が分泌されます。これらの物質が目を刺激することで、目のかゆみが生じます。
また、これらの物質の影響で血管が広がるため、目が赤くなったり、腫れたりすることもあります。さらに、目を守るために涙がたくさん出て、花粉を流そうとします。
目の症状が出ると、どうしてもこすったりかいたりすることが多くなります。その際に腫れや充血がひどくなったり、涙が止まらなくなったりすることもあります。
さらに症状が進行すると、角膜や結膜を傷つけてしまい、角膜炎や結膜炎を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
【参考情報】『花粉症と目』日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/health/20/index.html
3-4.頭痛や倦怠感が続く
鼻づまりで呼吸がしにくくなると、体内の酸素が不足しがちになります。さらに、鼻や目の炎症が続くことで、頭痛や強い倦怠感が現れることもあります。
また、症状が悪化すると十分に眠れなくなり、睡眠の質が低下します。その結果、日中に頭がぼーっとしてしまうことも少なくありません。
3-5.咳がひどい
もともと喘息や咳喘息がある人は、花粉症によって咳がひどくなることがあります。
花粉症で鼻に炎症が起こると、その影響が気道にも及びます。さらに、鼻づまりで口呼吸が増えると、花粉が気道に直接入り込みやすくなり、粘膜への刺激が強まります。
このような影響で喘息が悪化すると、発作が重症化し、呼吸困難を引き起こすリスクが高くなるため注意が必要です。
4.重症の花粉症の治療
花粉症の悪化を防ぐには、症状が軽いうちに治療を始めることが重要です。
症状が重くなると、薬の効果が十分に得られない場合もあります。
4-1.対症療法
くしゃみや鼻づまりなどのアレルギー症状は、アレグラなどの抗ヒスタミン薬を使って抑えるのが一般的です。
しかし、症状が重い場合は抗ヒスタミン薬だけでは十分な効果が得られないこともあります。その場合、オノンなどのロイコトリエン受容体拮抗薬を併用することがあります。
さらに、症状の程度に応じてステロイド薬を使用することも検討されます。
これらの薬は、服用後すぐに効果を感じることが多いですが、根本的な治療ではないため、服用をやめると再び症状が現れる可能性があります。
4-2.舌下免疫療法
花粉のアレルゲンを少量ずつ体に取り込み、徐々に慣れさせることで症状を和らげる治療法です。
対象となるのはスギ花粉のみで、治療には「シダキュア」という薬を使用します。
はじめは少量から投与を開始し、様子を見ながら徐々に増やしていきます。一定のアレルゲン量に達した後は、その状態を維持するために数年間継続して服用します。
治療期間は最低でも3年と長期にわたりますが、根本的な改善が期待でき、多くの人が症状の軽減を実感しています。
4-3.ゾレアの注射
ゾレアは、花粉によって作られるIgE抗体に作用し、アレルギー症状を抑える薬です。
花粉が体内に入ると、IgE抗体が作られ、マスト細胞と結びつきます。この結合によってヒスタミンなどの物質が分泌され、アレルギー症状が引き起こされます。
ゾレアはIgE抗体と結合することで、マスト細胞との結びつきを防ぎます。その結果、花粉が体に入ってもアレルギー反応が起こりにくくなります。
この治療法は、スギ花粉による花粉症のみに適用され、従来の治療で十分な効果が得られない重症の患者が対象となります。
5.自宅でできる花粉症対策
花粉症の重症化を防ぐには、治療とあわせて自宅でできる対策を取り入れることが大切です。
5-1.生活習慣の見直し
生活習慣を見直し、免疫のはたらきを維持することで花粉症の悪化を防ぎましょう。
規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとることが大切です。
また、栄養バランスの良い食事を1日3食しっかりと摂るようにしましょう。
さらに、適度な運動やストレス発散も免疫のはたらきを高める効果があります
5-2.掃除などで花粉を除去
花粉は、できるだけ家に持ち込まないことが大切ですが、外出時の衣服や洗濯物、窓の開閉などで室内に入り込んでしまうことがあります。
入ってしまった花粉は、こまめな掃除で取り除きましょう。掃除の際は、花粉が舞い上がらないよう、まずは拭き掃除をしてから掃除機をかけるのが効果的です。また、空気清浄機を活用すると、室内の花粉を効率よく除去できます。
洗濯物は、花粉が多く飛ぶ時期だけでも室内干しがおすすめです。外干しする場合は、取り込む前にしっかりと払い落としましょう。
5-3.マスクや眼鏡で花粉を防ぐ
花粉が鼻や目に付着しないよう、マスクや眼鏡でしっかり対策しましょう。
マスクは鼻や顎までしっかり覆い、顔にフィットさせることが大切です。マスクの表面には花粉が付着するため、できるだけ使い捨てタイプを使用しましょう。
眼鏡は、通常のものより花粉症用のものを選ぶと、目の周りをしっかりカバーでき、花粉の侵入を防ぎやすくなります。コンタクトレンズを付けていると、目の症状が悪化しやすくなるため、花粉が飛散する時期は眼鏡に切り替えるのがおすすめです。
また、外出先で服に付着した花粉を家の中に持ち込まないよう注意しましょう。静電気が発生しやすい素材や、編み目が大きく凹凸のある服は花粉がつきやすいため、できるだけ避けるのが理想です。
帰宅時には玄関前で衣服の花粉を払い落とし、すぐに着替えることで、室内への花粉の侵入を防げます。
6.おわりに
花粉症が重症化すると、長期間の投薬や通院が必要になることがあります。市販薬を服用しても症状が改善しない場合は、早めに病院を受診しましょう。
特に喘息や咳喘息を持っている人は、花粉症の影響で咳が悪化しやすいため注意が必要です。
症状が悪化すると、日常生活に支障をきたし、仕事や学業のパフォーマンスが低下することもあります。医師と相談しながら、自分に合った治療を続けていきましょう。