インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」の特徴と効果、副作用
ゾフルーザは、バロキサビルマルボキシルという成分を配合したインフルエンザの治療薬です。
インフルエンザ治療薬の中では最も新しい薬で、2018年の発売です。発売当初は成人のみの適用でしたが、2023年より12歳未満の子どもにも推奨されるようになりました。
この記事では、ゾフルーザの使い方や副作用、使用上の注意点などについて解説します。
目次
1.ゾフルーザとはどのような薬か
ゾフルーザは、有効成分であるバロキサビルマルボキシルを配合したインフルエンザ治療薬です。
【参考情報】『Influenza Antiviral Drug Baloxavir Marboxil』CDC
https://www.cdc.gov/flu/treatment/baloxavir-marboxil.htm
インフルエンザウイルスには、自分で増殖する能力が備わっていないため、人間の細胞を利用して増殖していきます。
ウイルスは、口や鼻を通して気道粘膜の細胞に侵入し、人体のさまざまな酵素の働きを借りてどんどん増えていきます。そのため、ウイルス増殖に必要な酵素の働きを抑えることが治療のカギとなります。
インフルエンザウイルスは、RNAという遺伝子と、脂質から成るエンベロープという膜で構成されているのですが、従来のインフルエンザ治療薬は、細胞内で増殖したウイルスがエンベロープの外に出るために必要な「ノイラミニダーゼ」という酵素のはたらきを抑えるものでした。
ノイラミニダーゼ阻害薬には「タミフル」「リレンザ」「イナビル」「ラピアクタ」があります。タミフルはカプセル状で内服薬、イナビルとリレンザは粉末の吸入薬、ラピアクタは点滴薬で、それぞれの効果は似ているとされています。
一方、エンドヌクレアーゼ阻害薬であるゾフルーザは、細胞内でウイルスの増殖に必要な酵素「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ」のはたらきを阻害することで、ウイルスの増殖そのものを抑えます。
ゾフルーザを服用すると、服用翌日にウイルス量がタミフル服用時の1/100くらいに下がり、周囲の人への感染についても、従来の薬より少なくなると考えられます。
【参考情報】『インフルエンザ委員会(statement)「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬について」』日本感染症学会
https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=14
ゾフルーザの大きな特徴として、1回服用するだけで治療が終わることが挙げられます。食事に関係なく服用が可能なので、処方された後すぐに服用すれば飲み忘れもありません。
一方、代表的なインフルエンザ治療薬である「タミフル」は、1日2回の服用を5日間継続する必要があります。
また、ゾフルーザと同じく1回の服用で治療が終わる「イナビル」は吸入薬であるため、小さい子どもや、吸う力が衰えた高齢者には服用が難しいというデメリットがあります。
ゾフルーザには、錠剤のほかに顆粒もあります。錠剤が飲み込みにくい人は、顆粒の方が適しているかもしれません。ただし、顆粒は薬価未収載のため保険適応外となります。
ゾフルーザは、65歳以上の方や持病のある方に対し、同居している人がインフルエンザにかかってしまった場合などに、感染予防のために投与することもできます。
ただし、予防のために服用する場合は、保険適応外となります。
2.ゾフルーザの使い方
ゾフルーザは、年齢や体重によって服用量が異なります。服用前に、医師から指示された量をきちんと確認しておきましょう。
2-1.インフルエンザ治療の場合
【12歳以上、80kg未満】
ゾフルーザ錠20mgを2錠、または顆粒4包を服用
【12歳以上、80kg以上】
ソフルーザ錠20mgを4錠、または顆粒8包を服用
【12歳未満の子ども、体重10kg以上20kg未満】
ゾフルーザ錠10mg1錠を服用する。
【12歳未満の子ども 20kg以上40kg未満】
ゾフルーザ錠20mgを1錠、または粒4包を服用
【12歳未満の子ども、40kg以上】
ゾフルーザ錠20mgを2錠、または顆粒4包を服用
2-2.インフルエンザ予防の場合
治療ではなく、予防目的で使用する際の服用量は以下となります。
【12歳以上、80kg未満】
ゾフルーザ錠20mgを2錠、または顆粒4包を服用
【12歳以上、80kg以上】
ゾフルーザ錠20mgを4錠、または顆粒8包を服用
【12歳未満の子ども、20kg以上40kg未満】
ゾフルーザ錠20mgを1錠、または顆粒2包を服用
【12歳未満の子ども、40kg以上】
ゾフルーザ錠20mgを2錠、または顆粒4包を服用
3.ゾフルーザの副作用
ゾフルーザの主な副作用は、以下となります。
・下痢
・悪心(おしん)
・かゆみ
悪心とは、みぞおちのあたりから喉にかけてむかつき、吐きたいという不快な感覚が生じることをいいます。
また、めったにありませんが、アナフィラキシーショックや出血などがみられることがあるので、服用後は体調変化に注意してください。
アナフィラキシーショックは、ゾフルーザに対して過剰にアレルギー反応が起きると生じます。症状は、全身にかけての蕁麻疹や呼吸困難、意識消失などです。
出血は、血液が固まりにくくなるために起こることがあります。服用後に鼻血や血尿、血便などがあれば、すぐに医療機関を受診してください。
4.使用上の注意点
ゾフルーザを安全に使用するための注意点を紹介します。
4-1.妊娠中・授乳中の方
タミフルやリレンザ、イナビルなどのインフルエンザ治療薬は、お腹の中の赤ちゃんへの影響が少ないと考えられていますが、ゾフルーザについては、新しい薬であるためデータが不足していることもあり、推奨はされていません。
また、動物実験では、ゾフルーザが母乳へ移行したことも報告されているため、授乳中の方がゾフルーザの使用を検討している場合は、主治医に確認してください。
4-2.未成年
かつて、インフルエンザにかかった子どもが、飛び降りなどの異常行動を起こしたという報道がありました。
しかし、このような行動は、タミフルやゾフルーザなどの薬のせいではなく、インフルエンザという病気そのものによって起こるということがわかりました。
このような異常行動は、小学生以降の未成年男子にみられる傾向があります。
薬の副作用として異常行動が起こるわけではありませんが、家族や同居人がインフルエンザにかかった場合、窓やドアを施錠したり、1階で就寝させるなどの対策を行ってください。
5.ゾフルーザの薬価
ゾフルーザの薬価(2024年8月調べ)は以下となります。
・ゾフルーザ錠10mg 1錠1535.4円
・ゾフルーザ錠20mg 1錠2438.8円
ゾフルーザ顆粒2%分包は薬価未収載のため、保険適応では処方できません。
また、ゾフルーザの代わりに使えるジェネリック医薬品や市販薬はありません。
6.おわりに
インフルエンザの治療薬には、ゾフルーザのほか、タミフルやリレンザ、イナビルなどがあります。
インフルエンザの治療薬は、症状が現れてから48時間以内に服用することで、効果が発揮されます。
健康な大人なら、安静にしていれば特に治療をしなくても通常は回復しますが、発熱や咳、だるさなどの症状がつらい場合は、インフルエンザ治療薬を服用すると少し回復が早くなる可能性があるので、病院を受診してください。