花粉症で咳が出る理由|風邪との違いやアレルギーとの関係
花粉が飛散する時期になると、多くの人がくしゃみや鼻水などのアレルギー症状に悩まされます。
実は、咳も花粉症の症状として挙げられるのですが、咳は風邪などの呼吸器疾患でもよくある症状なので、花粉のせいとは気づかないかもしれません。
この記事では、花粉が咳を引き起こすメカニズムや、咳がひどいときの対処法についてくわしく解説します。
目次
1.花粉症とはどんな病気か
花粉症とは、特定の植物の花粉が粘膜に触れることによって、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどのアレルギー症状が起こる病気です。
【原因となる主な花粉】
・スギ
・ヒノキ
・シラカンバ
・イネ
・ブタクサ
・カナムグラ
特に、スギは全国に広く分布し、花粉の飛散距離も長いため、多くの患者がいます。
スギ花粉に反応する人が多いため、花粉症と言えば「春」というイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、初夏はシラカンバやイネ、秋にはブタクサやカナムグラなどが飛散するため、これらの花粉に反応する人は、夏や秋に症状が現れます。
【参考情報】『主な花粉と飛散時期』環境省
https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/2_chpt2.pdf
2.なぜ花粉に反応して咳が出るのか
花粉により咳が引き起こされるメカニズムには、アレルギーがかかわっています。
2-1.花粉でアレルギーの症状が引き起こされる仕組み
私たちの体は、ウイルスや細菌など体内に侵入してきた異物を「敵」と判断すると、免疫の仕組みにより、これらの異物を攻撃して体外へ排除しようとします。
この免疫の仕組みが、本来は体に害のない花粉を誤って「敵」と判断すると、アレルギーの症状が現れます。
【参考情報】『Allergies』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/allergies/symptoms-causes/syc-20351497
ある特定の植物の花粉が体内に侵入して粘膜に付着し、敵だと判断されると、体内ではIgE抗体と呼ばれる物質が生成され、アレルギーに関与しているマスト細胞と結びつきます。
IgE抗体とマスト細胞が結びついた後に、敵だと認定された植物の花粉が再び体内に侵入すると、今度は花粉とIgE抗体が結びつき、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が放出されます。
それらの物質に刺激され、咳やくしゃみ、鼻水などのアレルギー症状が引き起こされるのです。
2-2.花粉による咳の特徴
風邪やインフルエンザでも咳は出ますが、通常は回復とともに1週間程度で咳は治まります。しかし、花粉症で咳が出ているのなら、花粉が飛散している時期(3カ月程度)はずっと咳に悩まされます。
また、花粉症の場合は、鼻や目にも症状も現れます。特に目のかゆみや充血など「目」に症状が出ているなら、風邪やインフルエンザではなく、花粉症の可能性が高いでしょう。
また、花粉に反応して鼻水が大量に出ると、のどに流れ込んでしまうことがあります。すると、のどに溜まった鼻水を外に出そうとして、咳が引き起こされることがあります。
長期間咳が出る病気としては、喘息や咳喘息も考えられます。これらの場合は、鼻水はほとんど見られないですし、花粉が飛散していない時期でも咳が出ます。
2-3.口呼吸によって症状が現れる可能性
鼻水や鼻づまりの症状が出ると、空気の通り道が塞がれてしまいます。それにより、口での呼吸になってしまいます。
鼻呼吸においては、花粉などの異物をとらえ、気管に入ることを防ぐ機能があります。
しかし、口呼吸になると、直接気管に乾いた空気や冷たい空気が入り込み、喉が乾燥することはもちろん、花粉が喉の粘膜に付着しやすい状態となります。
このように、口呼吸により喉の粘膜に花粉が付着することで、アレルギー反応としてくしゃみや咳などの症状があらわれる可能性が出てきます。
3.花粉症の検査
特定の季節に限って咳が出る場合は、花粉症の疑いもありますが、他の呼吸器疾患やアレルギー疾患の可能性もあります。
まずは以下のような検査を行い、本当に花粉が原因で咳が出ているのかどうか、また、何の植物の花粉が原因なのかを調べる必要があります。
3-1.血液検査
アレルギーの有無や、どんな物質に反応してアレルギーの症状が出ているのかを調べます。血中IgE検査や特異的IgE検査(RAST)などの検査があります。
3-2.鼻汁の検査
鼻水の中に含まれる好酸球の数値を調べる鼻汁好酸菌検査や、鼻にブタクサのアレルゲンを入れて反応を調べる鼻粘膜誘発検査があります。
3-3.皮膚の検査
アレルゲンを皮膚に入れたり付けたりして、反応を調べる検査です。プリックテストやスクラッチテストなどの種類があります。
4.花粉症の治療
咳が花粉によるアレルギーによって引き起こされているとわかったら、以下のような治療を行います。
4-1.対症療法
アレルギーの症状は、アレグラなどの抗ヒスタミン薬を服用して抑えます。
また、気道の炎症や収縮を抑えるために、オノンなどのロイコトリエン受容体拮抗薬を用いることもあります。
花粉症が重症だと診断された場合は、ゾレアという薬を注射する治療も選択肢となります。ただし、治療を受けるには年齢や体重、血液中の総IgE値など複数の条件を満たす必要があります。
ドラッグストアなどで販売されている花粉症用の市販薬を使用する場合は、咳止め薬と一緒に服用しないでください。どちらにも同じ成分が含まれていることがあるので、その成分を摂り過ぎて、副作用が強く出る恐れがあります。
4-2.根治療法
スギ花粉が原因の場合に限りますが、シダキュアなどの薬剤を用いたアレルゲン免疫療法で、症状が出ない体質に変えていくことも可能です。
アレルゲン免疫療法では、アレルゲンとなるスギ花粉のエキスを少量ずつ投与し続けることで、体がスギ花粉に反応しなくなる状態を目指します。
治療には3~5年かかりますが、成功すると治療開始から約1年で効果が現れ始め、7~8年ほど効果が持続します。
5.花粉による咳を緩和・予防する方法
花粉症による咳を和らげるには、薬の服用以外にもできることがあります。自分でできる咳の緩和と予防法を紹介します。
5-1.部屋の加湿
空気が乾燥しているとのども乾燥するので、のどの粘膜が刺激に弱くなり、花粉に反応しやすくなります。
咳を抑えるためには、加湿器などで部屋の湿度を40%~60%程度に保ってのどを潤すのが有効です。
また、加湿器から放出される水分が部屋の中を漂っている花粉に付着すると、水分の重みで花粉が床に落ちるので、体内に入りにくくなります。
5-2.花粉の除去
部屋に入ってきた花粉は、掃除などで除去しましょう。特に、花粉が入りやすい玄関や窓の周辺、花粉が付着しやすいソファなどの布製品をこまめに掃除すると、花粉を減らすことができます。
また、花粉は人とともに家の中に入ってきます。外出先から家に入る前には、髪や服などに付いた花粉を払い落としておきましょう。洗濯物を外に干している場合も、取り込む際に花粉を払い落としましょう。
5-3.マスクなどで花粉を防ぐ
花粉が飛散している時期はマスクを着け、できるだけ花粉を吸い込まないようにしましょう。
マスクを着用すると、花粉を吸い込む量を約1/3~1/6に減らせることが分かっています。
6.おわりに
花粉症の症状のひとつに「咳」があります。特に、喘息や咳喘息の患者さんは、花粉の刺激で咳が悪化しやすくなります。
もし、花粉症の時期に咳がつらいときや、市販薬で効果が感じられないときは、呼吸器内科やアレルギー科で相談しましょう。
花粉症の薬は、花粉が飛散する前から服用しておくと効果が高くなります。毎年花粉のシーズンに咳がひどくなる人は、症状が出始める頃から対策しておきましょう。