喘息と診断されたら知っておきたいポイントまとめ
喘息とは、空気の通り道である気道が炎症を起こして狭くなり、呼吸がしづらくなってしまう病気です。
呼吸の時に「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」という音がするほか、咳が止まらなくなったり、少し動いただけでも息苦しさを感じるなどの症状が出ます。
喘息は残念ながら完治しない病気ではありますし、医学の進歩した現在の日本でも、命を落としてしまう方がいます。
しかし、正しい知識を持っていれば、喘息になっても健康な人と変わらない生活を送ることができます。
この記事では、あなたやご家族が喘息になった時にぜひ知っておいていただきたい基本の知識をまとめました。ぜひ、一度目を通してください。
目次
1.喘息の原因
喘息だと診断されたら、発作を起こす要因を避けるとともに、重症化につながる生活習慣を見直して、症状をコントロールしていきましょう。
そのためには、自分の喘息のタイプを知っておくことが肝心です。
1−1.小児はアレルギー、成人は非アレルギーが多い
喘息の原因は、大きく2つに分けられます。ひとつはアレルギーによるもの、もう一つは過労やストレスなど、アレルギーとは別の原因によるものです。
【参考情報】『喘息』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-022.html
小児はアレルギー、成人はアレルギー以外の原因で喘息になることが多いのですが、子どもの頃にアレルギーによる喘息だった人が、成人になってから再び発症することもあります。
1−2.喘息とは別の原因で咳が続くことも
喘息以外の病気でも、咳が2週間以上続くことがあります。咳の原因は多岐にわたり、それぞれ治療法も異なるので、咳=喘息と自己判断せず、必ず病院で診断を受けましょう。
特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、放っておくと呼吸困難で寝たきりになったり、最悪の場合は命を落とすこともあるので、早期発見・早期治療が大変重要な病気です。
【参考情報】『慢性閉塞性肺疾患 / COPD』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-046.html
2.検査について
病院では、喘息なのか他の病気なのかを判断するため、血液検査、画像検査、呼吸機能を調べる検査をします。
検査の結果、喘息を引き起こす原因が分かったら、それらの原因をできるだけ避けてください。
3.治療について
喘息は、気道の炎症を抑えて発作を予防する「吸入ステロイド薬」を中心に治療します。
3−1.薬物療法
吸入ステロイド薬は、気道の炎症を改善する薬です。体調がよくても、症状がなくなっても、毎日続けて使用する必要があります。
その他、発作が起きたときに鎮める「リリーバー(発作治療薬)」、気管支を広げる「気管支拡張薬」などを、患者さんの状態を見ながら組み合わせていきます。
3−2.心身の機能を高める
心肺機能を高める運動や、自律神経のバランスを整える訓練法も試してみる価値があります。
症状が落ち着いてきたら、主治医と相談の上、体力作りやメンタルトレーニングにもぜひチャレンジしてください。
3−3.自己管理
喘息の症状をコントロールするためには、患者さん自身の自己管理が欠かせません。
毎日ピークフロー値を測定し、喘息日記に記録して自分の状態を把握すること、そして、日々の生活の中から発作の原因となる習慣を取り除くことが大切です。
4.悪化を予防するには
発作を引き起こす要因は、人によって違いはありますが、どの患者さんにとっても重要なのは、風邪やインフルエンザなどの「呼吸器感染症の予防」です。
4−1.自分に合ったマスクを選んで正しく着用
横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニックでは、喘息の患者さんにマスクの着用をおすすめしています。ハウスダストや花粉などのアレルゲン物質、風邪やインフルエンザなどのウイルスをガードして、喘息の発作や悪化を防ぎましょう。
マスクの効果は、大きさや付け方によっても変わってきます。また、最近はさまざまな機能を備えた製品も販売されているので、自分にピッタリ合ったマスクを選んで、正しい方法で使いましょう。
4−2.季節や天気の変化をこまめにチェック
喘息の発作は、秋に多くなります。また、急に気温が下がる時にも多くなります。
天気予報を見ながら、発作のリスクを軽減するための対策をとり、症状をコントロールしましょう。
4−3.カビが発生しにくい環境を整える
カビは、アレルギー型の喘息の人にとっては大敵です。また、非アレルギー型喘息の人や健康な人にとっても、病気を引き起こす危険があります。
カビのあるところには、必ずダニもいます。また、ホコリの中にもカビやダニが含まれているので、健康な暮らしを守るためにも、カビ・ダニ・ホコリ対策を行いましょう。
5.喘息発作が起きてしまった時の対処法
喘息の発作は症状の大きさによって、「小発作」「中発作」「大発作」に分けられます。
もしも突然喘息の発作が起こったら、症状の大きさに応じて対処しましょう。大発作が起こったら、すぐに救急車を呼ぶなどして、一刻も早く病院に行ってください。
6.喘息と上手に付き合うために
喘息になっても、専門的な治療と自己管理を続けることで、健康な人と変わらない生活を送ることができます。そのために知っておきたい日常生活での事柄をまとめました。
6−1.旅行を安心して楽しむために
喘息だからといって、旅行を控える必要はありません。ただし、特に海外旅行の前には準備が必要です。
国内旅行や日帰り旅行の際も、まさかの発作に備えて、薬は必ず持参しましょう。飛行機に乗る場合は、機内の乾燥対策も忘れずに。
6−2.ペットを飼うときの注意点
一緒に暮らしているペットが原因で喘息の症状が出ているとしても、手放すのは難しいことが多いでしょう。
ペットと共に暮らしていくためには、掃除の徹底のほか、ペットの体調にも気を配り、自身とペットに必要なケアを行ってください。
6−3.妊娠についての注意点
喘息の女性も妊娠・出産することはできます。また、妊娠中でも安全に使える薬もあります。
おなかの中の赤ちゃんへの影響が心配で、自己判断で薬を止めてしまうと、かえって胎児が危険にさらされることがあります。正しい知識を持って、赤ちゃんの成長を見守りましょう。
6−4.喘息の子どもが保育園や幼稚園に入る時は
喘息のお子さんが保育園や幼稚園に入園する際には、配慮してほしいことや発作が起きた時の対処法を園側に伝えておきましょう。
遠足やお泊りなどの行事は、事前に内容を確認しておきましょう。行き先がホコリの多い場所だったり、花火など煙が出るイベントが含まれていたりする場合は、主治医や園の先生に相談しましょう。
7.喘息患者さんへ伝えたいこと
はじめに述べたように、喘息は完治しない病気ではありますが、「治らない」というのは、「ずっと症状が出て苦しいまま」という意味ではありません。
普通の人とあまり変わりない日常生活を送ることもできますし、治療しながらスポーツ選手として活躍している人もたくさんいます。
ただ、調子が良くなってきたときに吸入ステロイド薬の使用を忘れがちになったり、自分の判断で治療をやめてしまったりすると、せっかく治まっていた気道の炎症が再び悪化して重症化します。
そうならないためにも、喘息のことをよく理解して、いつまでも健康な方と同じように過ごせるよう前向きに治療を続けていきましょう。
【参考情報】『About CDC’s National Asthma Control Program』CDC
https://www.cdc.gov/national-asthma-control-program/php/about/index.html