子どもの咳が止まらない…小児喘息の原因と症状、治療法
「風邪は治ったはずなのに、咳だけが続いている」
「昼間は元気なのに、夜中になると、コンコンと咳き込んでいる」
お子さんがこんな症状で苦しんでいるのなら、喘息の疑いがあります。
この記事では、小児喘息の原因や治療法を説明します。お子さんの健康を守るため、病気についての正しい知識を持ち、適切なケアを行いましょう。
目次
1.喘息とはどんな病気なのか
喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こって狭くなり、咳や息苦しさが現れる病気です。
一度咳き込むとなかなか止まらなくなったり、ひどい時には呼吸困難を起こして救急搬送が必要になることもあります。
喘息の患者さんは、呼吸をする時に「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という特徴のある音が出ることがあります。
これは、狭くなった気道を、空気が無理に通り抜けようとするときに出る音で、「喘鳴(ぜんめい)」と言います。
しかし、乳児や幼児の場合ははっきりと聞こえないことがあります。
喘鳴がないから喘息ではないと判断せず、息苦しい様子があるか読み取ってあげることが重要です。
また、喘息の発作は、夜間や明け方に多く起こるので、昼間に症状が出なかったから問題ない、とならないようにしましょう。
一方で、喘鳴があると思い込んで病院に行くと、喉で痰が絡まっているだけということもあります。
判断のポイントとして、息を吐くときに音がする、息を吐きづらそうにしている、息を吐く時間が吸う時間に比べて長くなっているという場合は喘鳴である可能性があります。
喘息の前段階とみなされる病気として咳喘息がありますが、咳喘息では喘鳴が起こりません。
2.小児喘息の原因
喘息の原因には、アレルギーによるものと、過労やストレスなどアレルギー以外のものがありますが、子どもの喘息は、ほぼアレルギーが原因です。
2-1.アレルギーとは
私たち人間の体には、細菌やウイルス、寄生虫などの異物などから身を守るため「免疫」という仕組みが備わっています。
この免疫の仕組みが、本来は体に害のないものにまで反応して攻撃すると、咳やくしゃみ、発疹などの症状が現れることがあります。これをアレルギー反応といいます。
咳が続いているお子さんは、ダニをはじめとした特定の物質(アレルゲン)に反応している可能性があります。
【代表的なアレルゲン】
・ダニ
・ハウスダスト(ホコリ)
・カビ
・ペットの毛
・花粉
アレルゲンは検査で調べることができます。検査の結果、症状を引き起こす物質がわかったら、その物質をできるだけ取り除き、避けることで、症状の悪化を防いでいきます。
【参考情報】『Childhood asthma』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/childhood-asthma/symptoms-causes/syc-20351507
2-2.咳を引き起こす刺激
炎症により過敏になった気道は、ほんの少しの刺激にも敏感に反応してしまいます。そのため、喘息のお子さんは、以下のような刺激でも咳き込むことがあります。
・煙:タバコ、花火、線香
・天気の変化:台風、気圧の乱高下、季節の変わり目
・冷たい/温かい空気:エアコンの風、お風呂の湯気
・強い香り:香水、カビ取り剤
・汚れた空気:排気ガス、黄砂
さらに、風邪などの呼吸器感染症をきっかけに咳が長引いたり、運動により咳が引き起こされ、息苦しくなることがあります。
【参考情報】『運動誘発喘息とは何ですか?』山梨大学アレルギーセンター
https://yallergy.yamanashi.ac.jp/ynavi/a_id-288
刺激への反応を繰り返すうちに、ますます気道は敏感になり、炎症が悪化していきます。すると、さらに気道が狭くなっていきます。
この悪循環を「気道のリモデリング」といい、難治化につながる原因となります。
【参考情報】『Airway Remodeling in Asthma』Frontiers
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmed.2020.00191/full
3.小児喘息の治療
喘息の疑いがあるとき、病院では以下の手順で診断し、治療を行います。
3-1.問診
小さいお子さんは、自分の症状をうまく説明することができません。そこで大事なのが、保護者からの情報です。
「いつから咳が出ているのか」「どんな時に咳が出るのか」など、なるべく具体的に話してもらえると、診断の助けになります。
また、親や祖父母、きょうだいにアレルギーがあれば、それも伝えてください。
アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなど、喘息以外のアレルギーがあれば、そちらも教えてください。
3-2.検査
主な検査は、呼吸機能検査と血液検査です。
呼吸機能検査では、スパイロメーターという医療機器を使って肺の機能を調べます。ただし、指示通りに息を吸ったり吐いたりするのは乳幼児には難しいので、小学生未満のお子さんには実施しないことが多いです。
血液検査では、指先から少量の血液を採取してアレルギーの有無を調べる検査や、アレルギーを引き起こす物質を特定する検査を行います。
検査の結果、総IgE値という項目が高ければ高いほど、アレルギーを起こしやすい体質だと言えます。
また、特異的IgE値という項目を見れば、どの物質に対してアレルギーを起こすのかがわかります。さらに、その物質で起こるアレルギーの強さも6段階で示されます。
3-3.治療
治療では、毎日服用する長期管理薬(コントローラー)と、発作を起こしたときだけ服用する発作治療薬(リリーバー)を用います。
長期管理薬のメインとなるのは、気道の炎症を抑えて発作を予防する吸入ステロイド薬です。
【主な吸入ステロイド薬】
さらに症状に応じて、抗アレルギー薬、テオフィリンなどを追加することがあります。
【抗アレルギー薬】
・オノン
【テオフィリン】
複数の成分が配合された薬剤も使われます。
【配合剤】
・レルベア
・アドエア
長期管理薬は、喘息の症状がなくなっても毎日服用する必要があります。
治療により症状がなくなっても、気道の炎症はまだ残っているので、薬の服用を中止すると、再び症状が現れる恐れがあるからです。
もしも発作が起こった時は、医師から処方された発作治療薬を「すぐに」「迷わず」使ってください。
【発作治療薬】
・メプチン
<強い喘息発作のサイン>
◻︎唇や爪の色が白っぽい、もしくは青~紫色
◻︎息を吸う時に小鼻が開く
◻︎息を吸う時に胸がベコベコ凹む
◻︎脈がとても速い
◻︎苦しくて話せない
◻︎息を吐く方が吸うよりも明らかに時間がかかる
◻︎歩けない
◻︎横になれない(眠れない)
◻︎ボーっとしている(意識がはっきりとしていない)
◻︎興奮する・暴れる
発作治療薬を使ってもよくならない場合は、迷わず病院を受診してください。
お子さんが通う幼稚園や保育園、学校に対しても、発作を起こしたときの対処法を、事前に伝えておくとよいでしょう。
◆「喘息の子どもが保育園・幼稚園に入る前に知っておきたいこと」>>
4.小児喘息は治るのか
小児喘息は、思春期までに60~80%が長期寛解または治癒すると言われています。
しかし、保護者の判断で薬を止めてしまうと症状がひどくなって再発することがあるので、医師の判断を仰ぎましょう。
小児の喘息は、治療や管理によって症状をコントロールし、生活の質を向上させることが可能です。
喘息は長期にわたる疾患で、時折症状が悪化することがありますが、適切な治療とケアを受けることで、症状を和らげ、通常の生活を送ることができます。
◆「喘息治療のゴールと治療法」とは?>>
5.喘息の発作を予防するには
発作の予防に役立つのは、「掃除」、「呼吸器感染症の予防」、「天候の変化への対処」の3つです。
5-1.掃除
ダニをはじめとしたアレルゲンを減らすには、掃除が有効です。
布団やシーツなどの寝具、ソファやぬいぐるみなど布製の家具や雑貨は、ダニの棲みかとなりやすいので、なるべくこまめにお手入れするといいでしょう。
5-2.呼吸器感染症の予防
風邪やインフルエンザ、コロナなどの呼吸器感染症にかかると、喘息の症状が悪化しやすくなります。
手洗いやワクチン接種で感染症を予防するとともに、規則正しい生活や栄養バランスのとれた食事、適度な運動で、感染症に負けない体をつくっていきましょう。
ビタミンDが不足すると、感染症への防御力が低下するという報告もあります。
【参考情報】『Serious vitamin D deficiency in healthcare workers during the COVID-19 pandemic』BMJ Journals
https://nutrition.bmj.com/content/5/1/134
ビタミンDは、日光(紫外線)に当たると体内で合成されるので、1日15~30分程度、屋外で過ごすといいでしょう。
5-3.天候の変化への対処
喘息の発作は、季節の変わり目や台風が近づいている時など、急に気温や気圧が変わる日に起こりやすくなります。
天気予報をチェックして、肌寒い日には羽織るものを用意したり、朝方に冷え込みそうなら寝室を暖かくしておくなど、なるべく体に負担がかからないように対策を行いましょう。
6.おわりに
小児喘息の多くは、寛解(ほとんど症状が出ず治ったと言える状態)になります。
治療は長期にわたるため、根気が必要となりますが、あきらめずに薬の服用を続け、健康な人と変わらなく暮らしていける日を目指しましょう。
乳幼児は気管支が細くて柔らかいため詰まりやすく、気管支炎やRSウイルス感染症のような呼吸器感染症でも、喘鳴のような音が出ることがあります。
そして前述したとおり、喘息でも喘鳴が聞き取れないこともあります。
喘鳴があってもなくても、咳が続いていたり、咳が激しくて心配な時は、病院を受診して原因を突き止めましょう。当院は0歳児から受診可能です。