気管支炎と喘息のちがいとは?
気管支炎も喘息も、主な症状は「咳」です。
専門医による診察や呼吸機能検査によって、咳の原因が気管支炎によるものなのか、喘息によるものなのか、それ以外の病気によるものなのかを判断することは可能です。
しかし、患者さん自身で咳の原因を探ることは難しく、ただの風邪だと思って放っておいた咳が、いつの間にか悪化し、息苦しさや呼吸困難感が出るようになってしまった、というケースも珍しくはありません。
この記事では、気管支炎と喘息の違いを見分ける検査方法や治療方法の違いなどを説明していきます。
1.気管支炎
気管支炎は、ウイルスや細菌などにより、気管や気管支がダメージを受け、炎症が起こる病気です。風邪と気管支炎を見分けることは難しく、併発することもしばしばあります。
主な症状は、咳や痰、発熱で、風邪とよく似ています。治療方法も風邪と同様に、対処療法(咳には咳止め、発熱には解熱など、症状に応じた治療)が基本となります。
基本的には、自己治癒力によって自然に軽快していく病気なので、抗ウイルス薬や抗菌薬は必要ありません。しかし、例外もありますので、自分で判断せずに、主治医と相談しながら治療を進めていきましょう。
◆「咳が止まらない。もしかして、気管支炎かもしれません」>>
2.喘息
喘息は、慢性的に続く気道の炎症(アレルギーやタバコの煙などさまざまな要因があります)によって、咳や痰、呼吸困難感などの症状が出る病気です。
【参考情報】『Asthma』CDC
https://www.cdc.gov/asthma/index.html
激しい咳などの発作を繰り返していくうちに、気道が硬く狭くなって元の状態に戻らなくなり(気道のリモデリング)、難治化していきます。
治療では、病態の根本的な原因である「気道の炎症」を抑えるため、吸入ステロイド薬をメインに使っていきます。
対処療法による自然寛解(自然と症状が治まるのを待つこと)を目標とする気管支炎とは違い、喘息の治療では、発作を予防して、症状がない状態を維持することが大切です。
そのため、症状がなくても、毎日忘れずに服薬する必要があるので、患者さん自身が積極的に治療に臨む姿勢が重要になります。
3.気管支炎と喘息の違いを見分ける検査
気管支炎の診断は、問診や聴診などによって、患者さんの全身状態を把握しながら行います。
さらに、気になる症状がある場合は、血液検査やレントゲン検査などよって、肺炎などの他疾患との鑑別を行っていきます。
一方、喘息の診断では、発作の経験やアレルギーの有無など詳細な問診を行うほか、スパイロメトリーやピークフローと呼ばれる呼吸機能検査や血液検査によって状態を把握していきます。
また、ハウスダストやダニ、ペットの毛などのアレルギー反応が原因だと疑われる場合は、アレルギーの原因物質を探る検査を行うこともあります。
原因物質がわかれば、自身の生活環境を整備し、アレルギー物質との接触を避ける工夫も大切です。
【参考資料】『今日の治療指針2020年版』医学書院
https://www.igaku-shoin.co.jp/misc/fair/tt2020/index.html
4.おわりに
咳を主症状とする病気は多いですが、風邪や気管支炎などの自然治癒が望める病気と、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のように、長期間の治療が必要な病気では、対処方法が大きく異なります。
気管支炎による咳も、長い場合には3週間ほど続く場合もあるので、喘息の咳と気管支炎の咳を見分けるのは難しいこともあるでしょう。
咳が2週間以上続くときは、市販の咳止め薬や風邪薬を用いるのはやめて、病院を受診しましょう。
ただの風邪だと思っていた咳が、実はまったく別の病気によるものだった場合、市販薬がかえって症状を悪化させることもあります。
たかが「咳」とあなどらず、激しい咳やしつこい痰、息苦しさや呼吸困難感が続く場合には、早めに呼吸器専門の医療機関を受診することが大切です。
【参考資料】「病気とくすり2020』南山堂
http://www.nanzando.com/journals/yakkyoku/917113.php