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発作のように咳が出る!考えられる原因・病気・対処法

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年08月19日

「突然激しい咳が出て止まらない」など、発作のような咳が繰り返し起こる人は、風邪とは違う別の病気が原因で症状が現れているのかもしれません。

考えられる原因としては、呼吸器の病気やアレルギーなどがあります。

この記事では、発作のような咳の原因や考えられる病気、そして、咳がつらい時にできる一時的な対処法を解説します。

1.咳の発作とは


まずは、「発作」とはどのような状態なのかを説明します。

1-1.発作とは

発作とは、病気の症状が突然現れることを言います。

発作が起こる代表的な病気には、てんかんや脳の病気、心臓病、精神疾患などがあります。

例えば、脳の病気として脳炎や髄膜炎などを発症すると、けいれん発作が起こる可能性があります。

また、心臓病では心臓発作、精神疾患ではパニック発作など、さまざまな病気で急に強い症状が現れることがあります。

1-2.発作のような咳とは

発作のような咳とは、急に咳が出て止まらなくなる状態を指します。

発作が起こる前に、喉がヒクヒク・ムズムズするなどの違和感が生じることがあります。また、咳が急に出て止まらなくなると、咳の刺激でむせたり吐いたりすることもあります。

◆「喉がムズムズ・イガイガしたり咳が止まらないのはなぜ?」>>

また、人前で咳が止まらなくなったり、咳のため会話が中断するなどあれば、日常生活の面でも支障が出てくることでしょう。

2.発作のような咳の原因


発作のような咳が出る病気の多くは呼吸器疾患ですが、鼻や心臓の病気でも咳が出て止まらなくなることがあります。

2-1.呼吸器感染症

ウイルスや細菌などに感染して、肺や気管支に炎症が引き起こされると、激しい咳が出ることがあります。

呼吸器感染症の中でも、発作のように激しく咳が出る病気としては、気管支炎や肺炎、新型コロナウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎、百日咳などがあります。

2-2.アレルギー

ダニや花粉など、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)によって、体の免疫反応が過剰に働くことで、咳が出ることがあります。

例えば、花粉症や食物アレルギー、猫アレルギー、過敏性肺炎などがあると、アレルゲンに反応して、突然咳が出て止まらなくなることがあります。

◆「アレルギー性の咳は、市販薬でよくなるの?」>>

2-3.喘息

喘息とは、気道に慢性的な炎症があるため、咳や息苦しさなどの症状が現れる病気です。

炎症によって過敏になった気道の粘膜は、健康な人なら反応しないわずかな刺激にも敏感に反応して、咳の発作を引き起こします。

喘息の原因には、ダニやペットの毛などによるアレルギーが原因であるものと、過労やストレスなどアレルギー以外のものがあります。

◆「喘息」についてもっとくわしく>>

2-4.咳喘息

喘息とよく似た病気ですが、息苦しさなどの症状はなく、咳だけが長く続く病気です。

咳喘息でも、喘息と同じように、咳が急に現れて止まらなくなることがあります。

咳喘息を治療せずに放っておくと、そのうち3分の1が喘息に移行するとされています。

◆「咳喘息」についてくわしく>>

2-5.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

主に、長期間の喫煙が原因で、肺や気管支に慢性的な炎症が生じる病気です。

この病気になると、炎症により気管支が狭くなることに加え、痰の量が多くなるため、痰を排出するために発作のような咳が出ることがあります。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

2-6.その他

呼吸器以外の病気でも、急に咳が出て止まらなくなることがあります。

例えば、副鼻腔炎になると、鼻の奥にある副鼻腔に溜まった鼻水が喉に垂れ込んで喉を刺激するため、急に咳が出ることがあります。

また、心不全の患者さんは、肺に水が溜まって呼吸がしんどくなり、咳が出てしまうことがあります。

胃食道逆流症の人は、胃の内容物や胃酸などが食道に逆流した際、その刺激で発作的な咳が出て止まらなくなることがあります。

3.呼吸器内科で行う検査


発作のような咳がたびたびある場合、呼吸器内科では原因を調べるため、以下のような検査を行います。

3-1.画像検査

X線(レントゲン)やCT(コンピューター断層撮影)で肺周辺の画像を撮影し、撮影した画像を見て異常を確認します。

炎症や腫瘍など、肺に異常があれば、その部分が白く写ります。また、COPDの人は、健康な人よりも肺が黒っぽく写ることがあります。

◆「レントゲン写真から、呼吸器内科でわかること」>>

3-2.血液検査

血液を採取して、血液中の抗体や細胞の数などを確認します。

アレルギーの有無や、アレルギーの原因となる物質が特定できるため、アレルギー疾患を疑う場合に行われることも多いです。

3-3.呼吸機能検査

専用の医療機器を用いて、肺の機能や呼吸の状態を調べる検査です。スパイロメトリーやモストグラフなどの種類があります。

喘息や咳喘息、COPDなどの疑いがある場合に行います。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査」について>>

4.咳が止まらなくなったときの対処法


この章では、咳がつらい時にできる対処法を紹介します。あくまで一時的な方法ですが、少しでも咳を和らげたいときに試してみてください。

4-1.水分を摂る

喉が乾燥していると刺激に弱くなるので、咳が出やすくなります。

咳が辛い時は、こまめに水分を摂って、喉を潤しましょう。冷たい飲み物は喉を刺激するので、常温か温かい飲み物がおすすめです。

4-2.部屋を加湿する

部屋が乾燥していると、喉の乾燥を招き、咳が出やすくなります。

部屋の湿度は40%~60%程度に保ち、喉の乾燥を防ぎましょう。

加湿器がなければ、部屋に洗濯物や濡れたタオルを干してもよいでしょう。

◆「加湿器」を選ぶポイントと注意点>>

4-3.頭を高くして寝る

枕などで、頭を少し高めにして寝ると、気道が圧迫されにくいため咳の緩和に役立ちます。

また、横向きで寝ると気道が確保されるので、やはり咳を和らげることができます。

4-4.アレルゲンの除去

アレルギーが原因だと判明している場合は、原因となる物質を避ける・取り除くことが大切です。

特に寝室は、ダニやホコリなどのアレルゲンが溜まりやすい場所です。こまめな掃除や寝具の洗濯で、アレルゲンを減らしましょう。空気清浄機を利用するのもいいでしょう。

◆「空気清浄機がアレルゲンを減らす可能性」について>>

4-5.ハチミツの摂取

子どもの咳には、ハチミツが効果的だと報告した研究結果があります。

お子さんの咳が続いている場合には、お子さんが嫌がらなければ、ハチミツをスプーン1杯ほどなめたり、ハチミツをお湯に溶いて飲んでみるのもいいでしょう。

ただし、1歳未満の子どもにハチミツを与えると、乳児ボツリヌス症という病気になる危険があるので、絶対に与えないでください。

【参考情報】『Effect of honey, dextromethorphan, and no treatment on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents』PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18056558/

4-6.発作治療薬の服用

喘息と診断されている人は、咳の発作が出たら、病院で処方された発作治療薬(リリーバー)を服用しましょう。

治療により症状が抑えられていた人でも、風邪などの呼吸器感染症などがきっかけで、急に喘息の発作が起きてしまうことがあります。

もし、発作の回数が増え、以前より発作治療薬の使用回数が増えてきたと感じた場合は、医師に相談しましょう。

◆発作治療薬「メプチンエアー」の特徴と効果、副作用>>

5.おわりに

発作のような咳を繰り返す時には、喘息をはじめとした呼吸器の病気やアレルギーなどを疑います。

これらの原因で咳が続いているなら、市販薬では効果が感じられないかもしれません。

もし、突然激しい咳が出ることがたびたびあったり、発作のように咳が止まらなくなることが続く場合は、病院を受診して原因を調べ、適切な治療を受けましょう。

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