新型コロナウイルス感染症の咳の特徴
咳は風邪や喘息など呼吸器の病気にかかった時に出るほか、健康な人でも急に冷たい空気を吸った時などに出ることがあります。
しかし、新型コロナウイルス感染症が流行してからは、軽く咳込んだだけでも「もしかしてコロナに感染したのでは?」と不安に思う人が増えたのではないでしょうか。
この記事では、新型コロナウイルスに感染した時の咳について解説しながら、咳が出るほかの病気についても紹介します。咳が続いて心配な人は、ぜひ読んでください。
目次
1.新型コロナウイルス感染症患者の約半数は咳が「出ない」
国立感染症研究所の感染症発生動向調査によると、国内の新型コロナウイルス感染症の患者のうち、46.1%に咳の症状が出ています。
【参考情報】『IDWR 2020年第16号<注目すべき感染症> 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2487-idsc/idwr-topic/9596-idwrc-2016.html
逆に言うと、新型コロナウイルスに感染した人のうち53.9%、つまり半数以上の人に咳の症状がなかったということが、この結果から読み取れます。
咳以外の症状としては、発熱76.8%、のどの痛みなど咳以外の急性呼吸器症状9.0%、重篤な肺炎6.9%となっています。
咳は新型コロナウイルス感染症の患者さんによく見られる症状ではありますが、咳が出ない患者さんも意外と多いということを覚えておいてください。
2.突然咳が止まらなくなったら要注意
新型コロナウイルスに感染すると、発熱やのどの痛み、咳など風邪のような症状が1週間ほど続きます。咳は空咳のような乾いた咳が出ることもあれば、痰が絡んだ湿った咳が出ることもあります。
【参考情報】『Symptoms of COVID-19』CDC
https://www.cdc.gov/covid/signs-symptoms/?CDC_AAref_Val=https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/symptoms-testing/symptoms.html
インフルエンザにかかった時のような、強いだるさや筋肉痛、関節痛がみられることもあります。嗅覚異常や味覚異常を訴える人も目立ちます。
咳があってもなくても、発熱があり、風邪やインフルエンザのような症状がだらだらと長引いていたら、新型コロナウイルス感染症を疑いましょう。
咳だけでほかの症状がほとんどない場合は、喘息や咳喘息など別の呼吸器疾患を疑います。
発熱から1週間ほど経ってから、それまで軽症だった人が突然呼吸困難になり、咳が止まらなくなることがあります。
その場合、新型コロナウイルスが肺炎を引き起こしている可能性があるので、すぐに最寄りの相談窓口に連絡しましょう。
【参考情報】厚生労働省 新型コロナウイルスに関する相談・医療の情報や受診・相談センターの連絡先
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html
ただし、咳がほとんどないのに肺炎を起こしている患者さんもいます。咳だけで感染の有無や重症度を判断するのは難しいのが、この病気の特徴です。
3.咳が止まらなくなる病気・長引く病気
新型コロナウイルス感染症のほかにも、咳が出る病気はいろいろあります。
コロナにばかり気を取られていると、別の病気を見逃してしまう危険もあるので、咳が続いている人は以下の説明もチェックしてください。
3-1.感染症による咳
風邪やインフルエンザのように、ウイルスや細菌によって引き起こされる病気で咳が出ることがあります。子どもでは、マイコプラズマ肺炎やクループ症候群などの感染症で咳が激しく出ることもよくあります。
乳幼児の病気と思われがちな百日咳も、子どもの時に接種したワクチンの効果が弱まった大人が感染するケースが増えています。高齢者では、肺炎球菌による肺炎や肺結核にも注意が必要です。
3-2.アレルギーによる咳
アレルギーとは、有害物質から体を守る免疫のシステムが異常を起こし、本来は体に害のないものを攻撃することで、咳やくしゃみ、かゆみなどが出る反応です。
呼吸器のアレルギーで最も多いのは、喘息です。
喘息とは、気道の粘膜が慢性的に炎症を起こすことで、咳や痰、息苦しさが出る病気ですが、そのうち6割はダニやホコリなどによるアレルギー、4割は別の原因によって起こるとされています。
喘息の前段階とみなされる「咳喘息」でも咳が長く続きます。
3-3.その他の咳
ほかにも、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や薬の副作用など咳が続く原因はさまざまなので、咳が2週間以上続いたら、呼吸器内科を受診して原因を調べましょう。
新型コロナウイルス感染症の症状は多彩なので、咳だけで診断がつくことはありません。また、アレルギーなどほかの病気が原因で咳が出る時も、やはり検査が必要です。
3-4.新型コロナかも?受診の目安と方法
横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニックでは、「37.0℃以上の体温の方」「行政の相談窓口で当院を紹介された方」「自費でPCR検査を受けたい方」向けに診療枠を設けております。
完全予約制で1日に受けられる人数に限りがありますので、必ずお電話にてご予約ください。
発熱や鼻水などの症状はないのに、咳が2週間以上長引いている、という方は、呼吸器内科専門医のいる医療機関を受診しましょう。
【参考情報】『専門医検索』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/search/specialist/index.php
4.検査と治療について
コロナの疑いがあれば、検査を行います。検査で陽性となれば、治療を検討します。
4-1.検査
検査方法として、PCR検査、抗原検査があります。
PCR検査は、現在ウイルスに感染しているのかを調べることができる検査です。
採取は鼻の奥の粘液や唾液から行います。精度は高いものの、医師による診断が必要で、実施できる医療機関が限られています。また、検査費用が高く、結果が出るまで数時間~数日かかる場合があります。
抗原検査は、検出にはより多くのウイルスが必要であり、PCRに比べて精度が劣りますが、結果が迅速に得られる利点があります。
抗原検査キットは、一般用の自己採取型もありますが、精度はPCR検査よりも低いです。
【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の一般用抗原検査キット(OTC)の承認情報』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27779.html
抗原検査キットで陰性反応が出た場合でも、発熱などの症状があるときは再度PCR検査を受けることをおすすめします。
4-2.治療
軽症なら、自宅で安静にしているだけで治ることがほとんどです。しかし、咳などの症状が強い場合は、咳止め薬などを用いて、辛い症状を和らげます。
基礎疾患がある、高齢であるなど、重症化リスクの高い人は、軽症でもラゲブリオなどの治療薬を用いて重症化を防ぎます。
症状が重かったり、重症化リスクが高いなど、医師が必要だと判断した場合は、入院して治療を受けることがあります。
5.おわりに
新型コロナウイルスに感染しても、8割の人は軽症か無症状なので、ただの風邪とはなかなか見分けがつきません。
軽症の場合、咳が出ていても1週間程度で治まってきますが、念のため毎日の体温と症状を記録しておくと、重症化したときに役立ちます。
【参考情報】厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q5-1
咳が1週間程度で治まり、その後体調が回復すれば、ひとまず安心です。しかし、咳が2週間以上続く場合は、喘息をはじめとする呼吸器の病気にかかっている可能性があります。
市販の咳止め薬の中には、喘息の症状を悪化させるものもあるので、一度病院で検査して自分に合った薬を処方してもらうことをおすすめします。