咳を繰り返す3つのパターンと考えられる病気について
・何度も咳を繰り返してなかなか治まらない
・一度治まった咳がまた出てきた
このような症状があると、何か深刻な病気ではないかと不安に感じる人もいるでしょう。
ひとくちに「咳を繰り返す」といっても、その期間や、悪化しているかどうかなどで、考えられる原因は異なります。
この記事では、咳を繰り返す時の3つのパターンを紹介し、考えられる病気や対処法について説明します。
目次
1.咳を繰り返す3つのパターン
まずは、咳を繰り返す3つのパターンを解説します。
1-1.1日に何度も咳が出る
1日に何度も咳を繰り返しても、1週間ほどで治まってくることはよくあります。
このような場合、咳を繰り返す原因は、風邪などの身近な呼吸器感染症であることが多いです。
風邪やインフルエンザにかかると、発症から数日間は症状が強く出ます。しかし、徐々に咳は治まり、気づけば自然に治っていることもあります。
1-2.治ったと思ったらまた咳が出る
咳が治まったと思ったら、また出ることを繰り返す場合があります。
このような場合、一度呼吸器感染症にかかって治った後に、また新たな呼吸器感染症にかかって咳が出ていることが考えられます。
特に小さな子どもは、まだ呼吸器感染症に対する免疫が十分にできていないため、保育園や幼稚園で次々に感染することがよくあります。
もう一つ考えられるのは、アレルギーが原因で、以下のような条件のもとで咳を繰り返すケースです。
・季節の変わり目に咳が出る
・特定の食材を摂取したときに咳が出る
・寝る時だけ咳が出る
アレルギーが原因の場合は、適切な治療を行わないと、いつまでも咳が繰り返されることが多いです。
1-3.咳が2週間以上続いている
毎日のように咳が続き、2週間以上繰り返している場合には、いくつかの原因が考えられます。
例えば、マイコプラズマ肺炎のように、咳が長引く呼吸器感染症にかかっている可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症にかかった人なら、後遺症で咳が残っていることもあるでしょう。
これらの場合、時間はかかりますが、咳は徐々に治まることが多いです。
そのほか、喘息のような感染症以外の呼吸器疾患が生じている可能性もあります。この場合、市販薬では咳が良くならないので、病院を受診して適切な治療を受ける必要があります。
2.咳を繰り返す時に考えられる病気
咳を繰り返す病気の多くは、呼吸器に関係しています。
この章では、咳が繰り返される際に考えられる呼吸器疾患について解説します。
2-1.風邪などの呼吸器感染症
風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などにかかると、一時的に咳が繰り返し出ることがあります。
そのほか、喉の痛みや痰、鼻水、全身の倦怠感といった症状も現れることもあります。
多くの場合、これらの症状は時間とともに改善しますが、乳幼児や高齢者では重症化する恐れもあるため、悪化しているようなら、早めに病院を受診してください。
また、マイコプラズマ肺炎や百日咳、肺結核などに感染すると、咳が2週間以上繰り返されることもあります。
2-2. アレルギー
花粉症や食物アレルギーなど、アレルギーが原因の病気により、咳を繰り返すことがあります。
原因となる花粉を吸いこんだときや、アレルギーを引き起こす特定の食材を摂取したときなど、アレルギーの原因となる物質や刺激に触れるたびに咳が出ます。
アレルギーが原因の咳は、検査で原因となる物質(アレルゲン)がわかれば、適切な治療を行うことで症状が抑えられます。
2-3.喘息
喘息は、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じることで、咳や息苦しさなどが生じる病気です。
喘息の人の気道は炎症によって敏感になっているため、ホコリや冷気、煙などのわずかな刺激にも反応し、咳を繰り返します。
治療には、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などを用います。
2-4.咳喘息
喘息と似ている病気ですが、息苦しさや喘息特有の呼吸音はなく、咳だけが長期間続く病気です。風邪やコロナなどの呼吸器感染症などをきっかけに発症することがあります。
咳喘息を未治療のまま放っておくと、喘息に移行する場合があります。治療には、喘息と同様に、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などを用います。
2-5.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
主にタバコに含まれる化学物質が原因で、肺や気管支に炎症が生じる病気です。
この病気になると、肺や気管支の炎症により慢性的に咳や痰が出ます。さらに、呼吸がしにくくなって息苦しさが現れます。
患者のほとんどは喫煙者ですが、家族や職場の人がタバコを吸っていれば、その煙を吸い込んで、非喫煙者でも発症することがあります。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
2-6.肺がん
肺にがんができても、初期はほとんど症状が現れませんが、進行すると咳を繰り返し、徐々に悪化してくることがあります。
さらに血痰や息苦しさ、倦怠感などが現れることもあります。
2-7.その他
その他、間質性肺炎や肺MAC症、気管支拡張症などの呼吸器疾患でも咳が繰り返されることがあります。
また、副鼻腔炎や心疾患、胃食道逆流症など呼吸器以外の病気でも、咳を繰り返す場合があります。
【参考情報】『Sinus Infection (Sinusitis)』Mayo Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/17701-sinusitis
3.呼吸器内科で行う検査
咳を繰り返す患者さんに対し、原因を調べる必要があると判断したら、呼吸器内科では必要に応じて下記の検査を行います。
3-1.画像検査
レントゲン(X線)やCTで肺とその周辺の写真を撮影し、炎症など異常の有無を確認します。
レントゲンだけでは判断が難しい場合には、CT検査が行われます。X線は1回に1方向から1枚の画像を撮影するのに対し、CTではいろいろな角度から複数の画像を撮影するので、より多くのデータを得ることができます。
3-2.血液検査
血液を採取し、その中にある抗体や成分を調べて病気の診断につなげます。
血液検査では、アレルギーの有無や、アレルギーの原因となる物質がわかるため、アレルギー疾患が疑われる場合に行われることが多いです。
3-3.呼吸機能検査
スパイロメトリーやモストグラフなど、呼吸機能を測定する専門の医療機器を用いて行う検査です。
喘息や咳喘息、COPDの疑いがある場合に、よく行われる検査です。
4.咳が出るときの対処法
何度も咳が繰り返されてつらいときは、自分でできる対処法を試してみましょう。
一時的ではありますが、症状が和らぐ可能性があります。
4-1.水分を摂る
喉の粘膜が乾燥していると、刺激に弱くなるので、咳が出やすくなります。こまめに水分をとり、喉を潤しましょう。
特に冬場は、あまり喉が渇いた感じがしないので、水分の補給を忘れがちです。しかし、自分でも気づかないうちに喉が乾燥していることもあるので、意識して水分を摂ってください。
4-2.部屋を加湿する
空気が乾燥すると、喉も乾燥しやすくなります。喉への負担を減らすため、部屋の湿度を保ちましょう。
健康的な湿度は40~60%です。加湿器を利用したり、室内に洗濯物を干すなどして、適切な湿度を維持しましょう。
湿度が60%を超えると、ダニやカビが繁殖しやすくなるので、特にアレルギーを持つ方は咳が出やすくなります。
反対に、40%より下がるとウイルスの活動が活発になるので、風邪などの呼吸器感染症のリスクが上がります。
4-3.寝姿勢を変える
うつ伏せや仰向けの姿勢で寝ると、気道が圧迫されて咳が出やすくなるので、横向きの姿勢で寝てみましょう。
また、枕などを使って頭を高くすると、気道の圧迫が軽減され咳の緩和に役立ちます。
4-4.アレルゲンの除去
アレルギーがある、またはその疑いがある方は、アレルギー症状の原因となるダニや花粉などを取り除きましょう。
寝室や家具の隙間は、ダニやホコリが溜まりやすい場所です。こまめに掃除を行い、アレルゲンが蓄積しないように心がけましょう。寝室に空気清浄機を使用するのもおすすめです。
毛布やシーツ、布団カバーなどは定期的に洗濯して、清潔を保ちましょう。
5.おわりに
咳を繰り返すことが2週間以上続いていたら、風邪ではない別の原因があると考えてください。
咳が出ている期間や頻度、他の症状があるかどうかで異なりますが、主に呼吸器疾患やアレルギーが疑われます。
2週間には満たなくても、繰り返し咳が出て日常生活に支障が出ている場合は、病院を受診して適切な治療を受けましょう。