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車に乗ると咳が出る!アレルギーとの関係は?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年11月05日

「車に乗るとなぜか咳が出る」という人は、アレルギーの疑いがあります。

車の中には、カビやホコリのようなアレルギーを引き起こす物質が蓄積していることがあります。

また、車に使われている塗装剤などに含まれる化学物質が、アレルギーの原因となることもあります。

この記事では、車に乗ると咳が出る原因と対策について説明します。

1.車に乗ると咳が出る理由


車に乗ったときに咳が出たり、喉がイガイガ・ムズムズする場合に考えられる理由としては、以下のようなものがあります。

1-1. カーエアコンが汚れている

車内の快適な温度を保つために欠かせないカーエアコンですが、清潔にしていないとカビや汚れが発生し、咳の原因になることがあります。

カーエアコンの冷房を使用すると、内部が結露しやすくなり、これがカビの発生につながります。

また、車のドアを開け閉めする際に入ってくるホコリや花粉がカーエアコンに付着して、汚れの原因になることもあります。

これらのカビや汚れは、エアコンのスイッチを入れた瞬間に風と一緒に放出され、それを吸い込むことで咳が出ることがあります。

【参考情報】『カーエアコンとカビ汚染』におい・かおり環境学会誌35巻5号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/35/5/35_5_230/_pdf/-char/ja

1-2.エアコンの冷気による刺激

特に夏の暑い時期は、車に乗り込むとすぐに車内を冷やしたいと思う方も多いでしょう。

しかし、冷房の温度を下げ過ぎたり、エアコンから出てくる冷気を直接浴びたりすると、冷気で気道が刺激され、咳が出ることがあります。

【参考情報】『The impact of cold on the respiratory tract and its consequences to respiratory health』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6031196/

1-3.車内の乾燥

冬場はもともと湿度が低く、空気が乾燥しがちです。さらに車内で暖房を使用すると、湿度は一層下がります。

車内の湿度が低いために気道が乾燥すると、ホコリなどの異物を排除しようとする気道粘膜の防御反応が低下して、咳が出やすくなります。

◆「咳が止まらない時こそ乾燥に注意!」>>

1-4.車内の汚れ

車の中は、汚れが溜まりやすい場所です。例えば、靴に付いた泥や砂などが落ちてそのままになっていたり、ドアの開け閉めによってホコリや花粉が入ってきたりと、さまざまな原因で汚れていきます。

そのため、車内の掃除が不十分だった場合、ホコリや砂などの汚れを吸い込んで気道が刺激され、咳が出ることがあります。

また、車内にラグやぬいぐるみなどの布製品を置きっぱなしにしていると、ダニが発生することがあります。

ダニが発生すると、死骸やフンが空気中に舞い上がり、それらを吸い込んでしまうとアレルギーを起こし、咳の原因となることがあります。

1-5.VOCの影響

車に使われている塗装剤や接着剤から、VOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)という化学物質が発生することがあります。

これを吸い込むと、アレルギー反応を引き起こし、咳などのさまざまな症状が現れることがあります。この状態は「シックカー症候群」とも呼ばれています。

特に新車を購入した直後は、VOCの濃度が高い状態です。また、車内の温度が上がると、VOCの濃度も高くなることが分かっています。

【参考情報】『車室内VOC低減に対する自主取り組み』日本自動車工業会
https://www.jama.or.jp/operation/ecology/hazardous_substances/voc.html

2.車内で咳が出るときの対処法


車に乗ると咳が出る人は、まずは自分でできる対策を試してみましょう。

2-1.掃除

車の中は、一見、汚れていないように見えても、実際にはホコリなどが残っていることが多いものです。定期的に掃除を行い、車内を清潔に保ちましょう。

また、カーエアコンからカビのような匂いがする場合は、早めに掃除をしましょう。カビをそのままにしていると、エアコンの風でカビの胞子が車内に広がってしまいます。

自分でエアコンを掃除するのが難しい場合は、ガソリンスタンドなどで依頼すると対応してもらえます。

2-2. 換気

車内に溜まったVOCは、換気することで濃度が下がります。乗車する前にしっかりと換気を行い、VOCを外に追い出すことで咳が出にくくなります。

特に新車に乗る際は、こまめに換気を行いましょう。

2-3.水分を摂る

気道の乾燥を防ぐため、ドライブ中に咳が出たらこまめに水分を摂りましょう。

ただし、冷たい飲み物は気道を刺激する恐れがあるため、常温または温かい飲み物を選んで喉の潤いを保つようにしましょう。

3.車内で咳を繰り返す時に考えられる病気


車内の掃除や換気、湿度の管理などの対策を行っても効果が感じられない場合は、以下のようなアレルギー性疾患を発症している可能性があります。

3-1.喘息

喘息は、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じることで、咳や息苦しさなどの症状が現れる病気です。

喘息の原因は、アレルギーによるものと、アレルギー以外のものがありますが、アレルギーが原因の場合は、ホコリやダニによって咳が引き起こされている可能性があります。

◆「喘息」についてくわしく>>

3-2.咳喘息

喘息とよく似た病気ですが、息苦しさなどの症状はなく、咳だけが長期間続く病気です。風邪やコロナなどの呼吸器感染症をきっかけに発症することがあります。

咳喘息も喘息と同様に、アレルギーが原因の場合があるので、車内にアレルギーを引き起こす物質があれば、反応して咳が出ることがあります。

◆「咳喘息」についてくわしく>>

3-3.アトピー咳嗽

以前にアレルギー疾患にかかったことがある人や、アレルギー疾患を持つ家族がいる人が発症しやすい病気です。

この病気の人は、咳に対する感受性が高くなり過ぎているため、冷たい空気のようなわずかな刺激にも反応して咳が出ます。

◆「アトピー咳嗽」についてくわしく>>

3-4.アレルギー性鼻炎

アレルギーを引き起こす物質を吸い込むことで、鼻の粘膜が刺激され、鼻水やくしゃみ、鼻づまりなどの症状が現れる病気です。

アレルギー性鼻炎により鼻水が生じると、鼻水が気道に垂れ込んで咳が引き起こされることがあります。

【参考情報】『アレルギー性鼻炎』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/allergic_rhinitis.html

4.呼吸器内科で行う検査


咳の原因を調べるには、各種検査が必要です。

この章では、呼吸器内科で行う検査を紹介します。

4-1.画像検査

レントゲン(X線)やCTなどで肺の写真を撮影し、異常や炎症の有無を確認します。

アレルギーが原因で咳が出ている場合、画像では異常が見つからないことがほとんどですが、似た症状を持つ他の呼吸器疾患と区別するために検査を行うことがあります。

◆「レントゲン写真から、呼吸器内科でわかること」>>

4-2.血液検査

血液検査では、アレルギーの有無や、アレルギーを引き起こす物質を調べることができます。

アレルギーを引き起こす物質には、ダニや花粉、ペットの毛などがありますが、何に対してアレルギー反応を起こすのかは、人によって異なります。

◆「咳の原因は猫アレルギー?症状と対処法を解説します」>>

4-3.呼吸機能検査

肺や気道の機能を調べる検査です。スパイロメトリーやモストグラフなどの種類があります。

喘息や咳喘息の疑いがある場合に行われることがあります。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

5.おわりに

車に乗ると咳が出る原因には、ホコリやカビのほか、車の素材から揮発する化学物質の影響が考えられます。これらの原因を特定することは難しいものの、掃除や換気で減らすことができます

しかし、掃除や換気を十分に行っても咳を繰り返す場合は、アレルギーの疑いがあります。

アレルギーが原因の咳は、市販の咳止め薬では良くなりません。心配な場合は、病院で咳の原因を調べてもらい、適切な治療を受けましょう。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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