肺年齢とは何か?実年齢より高い人は要注意!
肺年齢とは、肺の健康状態を知る指標です。
同じ年齢でも、若々しい人と老けて見える人がいますが、肺も実年齢より若い人もいれば、衰えている人もいます。
この記事では、肺年齢の測定方法や、肺年齢を若返らせる方法について解説します。息切れが気になる人や、加齢とともに健康に不安を感じてきた人は、ぜひ読んでください。
目次
1.肺年齢とは何か
肺年齢とは、肺の老化を年齢で表したもので、呼吸機能を確認するための指標です。
<肺年齢の判定方法>
一秒間に吐ける息の量(一秒量)を測定し、この値を計算式に当てはめて算出します。一秒量は、性別・年齢・身長によって異なり、20代をピークに健康な人でも加齢とともに低下していきます。
<肺年齢と実年齢の差>
病気やその他の要因で一秒量が低下すると、肺年齢が実年齢より高くなることがあります。特に肺年齢が実年齢より19歳以上高い場合、約90%の確率で肺機能に何らかの障害があるとされています。
<肺年齢が高い場合のリスク>
もし肺年齢が同年齢・同性の標準値より高い場合、呼吸器疾患の可能性があります。その場合は、早めにくわしい検査を受けることが推奨されます。
特に喫煙者は、肺年齢が実年齢より高くなる傾向があり、注意が必要です。
<肺の健康管理の重要性>
肺の病気は、進行しても症状が出にくいことがあります。そのため、病気に気づいた時には重くなっているケースも少なくありません。
しかし、肺年齢と実年齢の差を知ることで、自分の呼吸機能を意識すれば、肺の健康を守るきっかけとなります。
【参考情報】『肺年齢』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/07/dl/s0713-2d.pdf
【参考情報】『肺年齢を測定するには?』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/07/dl/s0713-2b.pdf
2.肺年齢をチェックする方法
肺年齢は、「スパイロメトリー」という検査で数値を測定して算出します。
2-1.スパイロメトリーの検査方法
スパイロメトリーは、肺の機能を測定する検査です。測定した値から、肺の健康状態を確認したり、病気の有無を調べたりします。
<検査前の準備>
・リラックスした状態で椅子に座ります。
・息がしやすいように、きつい服はゆるめます
・鼻から息が漏れないよう、鼻に専用のクリップをつけます
<測定方法>
・検査機器のマウスピースを口にくわえます
・ゆっくりと呼吸をした後、これ以上吸えないところまで息を吸い込みます
・その後、ゆっくりと最後まで息を吐き出して、通常の呼吸に戻ります
・次に、これ以上吸えないぐらいまで息を力いっぱい吸い込みます。
・一気に素早く息を吐き出し、これ以上吐けないところまで吐き切ります
・この手順を何度か繰り返して測定します
<検査時の注意点>
・息が漏れないように、マウスピースはしっかりくわえましょう
・繰り返し大きな呼吸をすると、めまいや頭痛が起きる場合があります。できるだけ少ない回数で正確に測定するため、指示通りに呼吸することが大切です
2-2.スパイロメトリーの測定項目
スパイロメトリーでわかる主な項目は、以下となります。
<肺活量>
胸いっぱいに吸い込んだ空気を、すべて吐き出したときの空気の量。
<%肺活量>
性別や年齢から予測される肺活量と、実際に測定した肺活量を比較した割合。基準値は80%以上です。
<努力性肺活量>
胸いっぱいに吸い込んだ空気を、勢いよく一気に吐き出したときの空気の量。
<1秒量>
努力性肺活量の中で、最初の1秒間に吐き出した空気の量。
<1秒率>
努力性肺活量に対する1秒量の割合。1秒間でどれだけ空気を吐き出せたかを示します。基準値は70%以上です。
肺年齢は、このうち「1秒量」をもとに、決められた計算式に数値を当てはめて算出します。
2-3.どこで検査できるのか
スパイロメトリーは、呼吸器内科を掲げている病院やクリニックで受けることができます。また、健康診断や人間ドックで検査できる場合もあります。
検査を受けられるかどうか分からないときは、病院のホームページで調べてみたり、事前に問い合わせて確認してみましょう。
2-4.どんな病気が見つかるのか
スパイロメトリーでは、「肺が硬くなって膨らみにくくなっていないか」や、「空気の通り道である気道が狭くなっていないか」をチェックします。
具体的には、肺の膨らみを「%肺活量」、空気の通り道の狭さを「1秒率」で確認します。
<%肺活量が80%未満>
肺が硬くなって空気を吸い込める量が減る「拘束性換気障害」が疑われます。この場合、気道には問題がないため、息を吐き出すのはスムーズにできます。
拘束性換気障害の原因となる病気には、間質性肺炎があります。また、胸水が溜まっていたり、胸郭に変形があると、肺が膨らみにくくなり、同じ障害が起こることがあります。
<1秒率が70%未満の場合>
気道が狭くなっている「閉塞性換気障害」が疑われます。この状態だと、息を吐くのに時間がかかります。
閉塞性換気障害の原因となる病気には、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息、びまん性汎細気管支炎があります。
◆「びまん性汎細気管支炎とは?」>>
<肺活量と1秒率がどちらも低い場合>
気道と肺の膨らみの両方に問題がある「混合性換気障害」が考えられます。
混合性換気障害の原因となる病気には、肺結核やじん肺症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などがあります。
3.肺年齢が高くなる原因
肺年齢は、生活習慣の乱れや環境の影響で、実年齢より高くなることがあります。
3-1.喫煙
喫煙は、肺年齢を上げる原因となることが分かっています。
喫煙が原因で肺や気管支に炎症が起きると、肺の組織が徐々に破壊されていきます。初めのうちは炎症が起こっても組織は修復されますが、何度も炎症が繰り返されるうちに、元に戻ることがなくなります。
さらに、炎症によって気管支の壁が厚くなり、狭くなってしまうと、空気を吐き出すのが難しくなり、肺年齢が高くなっていきます。
◆「タバコで咳が出る理由と、咳が長引くときに疑われる3つの病気」>>
3-2.汚染された空気
PM2.5や黄砂などで汚染された空気を吸い込むことも、肺年齢が上がる原因となります。
PM2.5や黄砂が肺に入り込むと、肺が傷つくことで「炎症性サイトカイン」というタンパク質が生み出されます。これが炎症を引き起こし、肺が硬くなったり、喘息が悪化したりすることがあります。
【参考情報】『Cytokines』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/24585-cytokines
また、有毒なガスや粉塵を吸い込む環境や職業も危険です。こうした物質を長期間吸い込み続けると、肺が傷つき、炎症が起こることがあります。そして、時間が経つと肺が硬くなり、呼吸がしにくくなることがあります。
3-3.運動不足
運動不足によって呼吸に使う筋肉が衰えると、肺年齢が上がることがあります。
呼吸をするときには、横隔膜や外肋骨筋、内肋骨筋などの筋肉が働いていますが、運動不足でこれらの筋力が低下すると、肺が膨らみにくくなります。
また、運動不足で肥満になると、脂肪によって横隔膜が下がりにくくなり、肺が十分に膨らまなくなります。これが呼吸機能の低下を引き起こします。
最近では、テレワークの増加により運動不足の人が増えています。座ったままの姿勢や、パソコンを使うために前かがみになる姿勢を長時間続けると、呼吸筋の働きを悪くしてしまうことがあります。
3-4.呼吸器疾患
喘息やCOPDなどの慢性的な呼吸器疾患の患者は、肺年齢が実年齢より高くなりがちです。
喘息の発作が起きると気道が狭くなり、息を吐き出すのが難しくなります。発作が頻繁に起こると、呼吸機能がさらに低下します。
COPDの患者は、主に喫煙が原因で肺や気道の組織が傷つき、炎症を起こしています。この炎症が長期間続くと、肺の弾力性が失われて硬くなり、気道が狭くなるため、呼吸機能が低下します。その結果、肺年齢が実年齢よりも高くなります。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
4.肺年齢を若返らせる方法
肺年齢を完全に若返らせることは難しいかもしれませんが、健康的な生活習慣を取り入れることで肺機能を改善し、肺年齢を実年齢に近づけることは可能です。
4-1.禁煙
タバコは肺の老化に対して悪影響しかありません。喫煙を続ける限り、肺の老化を止めることはできないため、禁煙が最も重要です。
もし、既にCOPDなどの病気を発症し、肺組織が損なわれている場合、その状態を元に戻すことはできません。しかし、禁煙をすることで、肺組織の破壊や老化の進行を遅らせることは可能です。
COPDが中等度まで進行すると、肺機能の低下が速くなります。そのため、禁煙は発症前や軽症の段階で始めることが大切です。そのためには、自分の肺年齢をしっかり把握し、肺の健康に意識を向けることが必要です。
また、タバコを吸っていない人も、受動喫煙には注意が必要です。タバコの煙には多くの有害物質が含まれており、喫煙者の煙を吸うだけでも喫煙と同じ影響があります。
できるだけタバコの煙を避け、近くに喫煙者がいる場合はその場所から離れるようにしましょう。
4-2.運動
肺そのものを鍛えることは難しいですが、呼吸をサポートする筋肉を鍛えることで、肺年齢を実年齢に近づけることはできます。
呼吸筋が強くなると、肺が膨らみやすくなり、酸素を取り込む量が増えるため、呼吸機能が向上します。
呼吸筋を鍛える方法としては、ウォーキングや水泳などの有酸素運動、呼吸筋のストレッチ、腹式呼吸などがあります。
【参考情報】『呼吸筋ストレッチ体操動画』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/event/r02remote02/index.html
しかし、喘息やCOPDなどの呼吸器疾患がある人は、急に運動を始めると息が苦しくなることがあります。主治医と相談してから、無理のない範囲で運動を行いましょう。
5.おわりに
息切れや呼吸に関する不安がある場合は、早めに検査を受けて肺年齢を測定してみましょう。
自分の肺年齢を知り、早期に老化や病気に気づくことで対策が可能となり、健康維持につながります。
肺年齢が実年齢より高い人は、今は問題がなくても、将来は呼吸の問題を抱える恐れがあります。
肺の老化を食い止めるため、禁煙や運動を実行し、健康的な生活習慣を身につけていきましょう。