ブログカテゴリ
外来

咳が止まらない時に心配な病気の症状・検査・治療の基本情報

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年11月21日
咳き込む

「咳がなかなか止まらない」「咳がひどくて眠れない」「風邪は治ったのに咳が続いている」などの症状で、病院に行こうかどうか迷っている人は多いのではないでしょうか。

この記事では、咳が出て止まらなくなる原因や、咳と病気の関係について説明します。咳でお悩みの方は、まずは基本的な知識をおさえておきましょう。

1.なぜ咳が出るのか


咳は呼吸器疾患において最も多くみられる症状です。咳は体を守るための自然な反応で、誤って異物を飲み込んだ時や、刺激の強い成分を吸い込んだ時などに、それらを体の外に追い出すために出ます。

感染症にかかった時も、体の中から細菌やウイルスなどの異物を追い出そうとして咳が出ることがあります。咳は、気道粘膜を異物による障害から守る重要な役割を担っています。

肺がんや肺結核など、肺そのものに病気があることが原因で咳が出ることもあります。

また、アレルギーやストレスが原因で咳が出ることもあります。気道に刺激がない場合でも、心因性の咳が出ることがあります。

◆「咳が止まらないのはどうして?」>>

慢性的に咳が止まらない原因は、ひとつではないことが多いです。喘息などの慢性的な病気と感染症を合併している場合もあります。

呼吸器内科を受診して原因を調べ、適切な治療を受けることが大切です。

2.咳の種類

咳は、「乾性咳嗽(かんせいがいそう)」と「湿性咳嗽(しっせいがいそう)」の2種類に分けられます。
咳の種類

2-1.乾性咳嗽


乾性咳嗽は、痰が絡まない咳です。「コンコン」「コホコホ」「ケンケン」という乾いた音がします。

乾性咳嗽が出る原因には、次のようなものがあります。

・喘息
・マイコプラズマ肺炎
・クループ症候群
・アトピー性咳嗽
・ストレス
・血圧降下剤の副作用

◆「喘息の症状」について詳しく>>

2-2.湿性咳嗽


湿性咳嗽は、痰が絡んだ咳です。「ゴホンゴホン」「ゲホゲホ」「ゼロゼロ」という濁った音がします。

湿性咳嗽が出る病気には、次のようなものがあります。

・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・肺結核
・肺がん
・副鼻腔炎
・心不全
・胃食道逆流症

風邪やインフルエンザ、肺炎のときは、はじめは乾いた咳が出て、次第に湿った咳が出てくることが多いです。

【参考資料】『咳嗽に関するガイドライン第2版』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/photos/1048.pdf

◆「痰がからみ、咳が止まらない時に考えられる呼吸器の病気」>>

◆「COPD」について詳しく>>

◆「肺がん」について詳しく>>

◆「風邪」について詳しく>>

◆「インフルエンザ」について詳しく>>

◆「肺炎」について詳しく>>

3.咳が止まらなくなる原因

たばこ
病気で咳が出るときの主な原因となるものは、「細菌やウイルスなどの病原体」「アレルギーを引き起こす物質」「タバコなどの有害物質」です。

3-1.細菌やウイルスなどの病原体

風邪の原因となるライノウイルスやコロナウイルス、インフルエンザのウイルスに感染したり、マイコプラズマなどの病原体や肺炎球菌のような細菌が原因で肺炎となることで、咳が止まらなくなることがあります。

◆「風邪と間違いやすい「マイコプラズマ肺炎」とは?」>>

3-2.アレルギーを引き起こす物質


ダニやホコリ、ペットの毛などが原因でアレルギーを起こした時に、咳が止まらなくことがあります。何が原因でアレルギーを起こすのかは人によって違いますが、病院で検査をすれば調べることができます。

◆「アレルギーによる病気の症状・検査・治療の基本情報」>>

3-3.タバコなどの有害物質

タバコや粉塵、特定の化学物質など、人体にとって有害な物質を長年吸い込んでいると、呼吸器が慢性的に炎症を起こし、咳が止まらなくなることがあります。

◆「新型タバコ(加熱式・電子)がもたらす健康被害」>>

【参考情報】『咳』株式会社ツムラ
https://www.tsumura.co.jp/kampo/nayami/seki01.html

4.検査方法

止まらない咳の原因を突き止めるには、専門的な検査が必要です。
モストグラフ

4-1.呼吸機能検査

気道の状態や肺の機能を調べるために、息を吸ったり吐いたりして数値を測ります。喘息やCOPDなどの病気を調べるときに行います。

4-2.画像検査

肺炎や肺がん、肺結核などの病気を調べるときに、胸部X線検査やCT検査を行います。喘息の疑いがあるときも、他の病気ではないことを確認するために画像検査を行います。

4-3.アレルギー検査

アレルギーによる喘息が疑われる場合に行います。血液を採取してアレルギーの有無を調べたり、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を突き止めます。アレルゲンを皮膚につけたり吸入する検査もあります。

その他、必要に応じて痰の検査や血液ガス分析などを行うことがあります。

【参考情報】『ぜん息を知る 検査と診断』独立行政法人環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/test.html

◆「呼吸器内科で行われる検査」>>

5.治療法

いつまでも咳が止まらない時は、原因となる病気そのものを治療していきますが、咳がひどすぎて体への負担が大きいときは、一時的に咳止め薬を処方する場合もあります。
咳の治療

5-1.感染症による咳

風邪にかかった時は、そのまま安静にしていれば治り、1~2週間程度で咳もなくなることがほとんどです。

インフルエンザや肺炎、肺結核などの感染症は、検査で病原体が特定できれば、それに応じた抗菌薬や抗ウイルス剤を用います。

◆「インフルエンザの治療薬」>>

5-2.感染症以外の咳

喘息やCOPDは慢性的な病気なので、生涯にわたって薬を飲み続け、咳や呼吸困難などの症状をコントロールする必要があります。

◆「喘息治療のゴールと治療法」>>

肺がんは手術や抗がん剤、放射線療法を組み合わせて治療します。がんの種類や進行度、腫瘍の大きさによって治療法が異なってきます。

【参考情報】『咳について』日本咳嗽学会
http://www.kubix.co.jp/cough/c_general.html

6.予防法

感染症予防の基本は、手洗いとマスク着用、人が密集する場所を避けることです。また、インフルエンザの予防接種や、65歳以上の方は肺炎球菌ワクチンの予防接種を受けておくことをおすすめします。

肺炎球菌

◆「65歳になったら肺炎球菌ワクチンを受けましょう」>>

タバコは喘息やCOPD、肺がんの危険因子となります。自分だけではなく、家族や周囲の人も副流煙を吸い込むことで病気のリスクが高まるので、吸っている人はぜひ禁煙してください。

【参考情報】『受動喫煙 – 他人の喫煙の影響』厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-005.html

◆「咳エチケット」について詳しく>>

7.おわりに

咳が止まらなくてつらいときに、市販の咳止め薬でしのいでいる人も多いでしょう。しかし、すでに2週間以上咳が続いている場合は、重い呼吸器疾患になる前に呼吸器内科を受診して原因を突き止め、その病気に合った治療を受けることをおすすめします。

◆「呼吸器内科を横浜市でお探しなら」>>

電話番号のご案内
電話番号のご案内
横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階