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新型コロナウイルスが喘息患者に及ぼす影響とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年11月08日
喘息 コロナ

喘息などの呼吸器疾患を抱える患者さんは、新型コロナウイルス感染時に重篤化するリスクが高く、慎重な対策が必要となります。

この記事では、コロナが喘息に及ぼす影響について、お伝えしていきます。

1.喘息患者は重篤化のリスクが高い

コロナウイルス

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、呼吸器感染症の一種です。

そのため、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、呼吸器系に基礎疾患を持つ患者は重症化のリスクが高く、基礎疾患を持たない方以上に感染に注意する必要があります。

◆「新型コロナウイルス感染症が呼吸器の病気に及ぼす影響」>>

◆「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について詳しく>>

2.高リスク者こそ感染しないことが最も重要

医療現場
コロナの治療薬も開発されてきましたが、特効薬といえるものは、未だ存在していません。

そのため、「万が一感染しても自分は重症化しないだろう」と考えるのではなく、絶対に感染しないということを意識した行動が大切です。

◆「喘息の方がやるべき新型コロナウイルス感染症対策」>>

3.医療提供体制のひっ迫によるリスク


コロナの流行により、世界中の医療機関が翻弄され疲弊している様子は、ニュースなどで多く報道されました。

現在は、ピーク時に比べるとマシではありますが、新しい変異株が現れ、再びコロナが流行することは、大いに考えられます。

以前のような流行が訪れると、コロナ患者への対応に医療資源が割かれてしまい、ほかの患者さんを受け入れることが難しくなってしまう恐れがあります。

3−1.喘息発作時の救急対応のリスク

救急

喘息治療においては、喘息発作時の救急対応が非常に重要です。

喘息発作を起こさないための治療と、喘息発作時の対応が両輪となることで、喘息治療は成立しています。

◆「喘息の症状・検査・治療の基本情報」>>

しかし、コロナの対応で医療機関での受け入れができなかったり、救急隊の到着が遅れる可能性があれば、喘息患者にとって非常に大きなリスクとなります。
 
わずか数分単位の時間のロスでも、最寄りの救急病院に迅速に搬送できないとなると、喘息発作時には取り返しのつかない状況を招くかもしれません。
 
このように、医療提供体制や救急隊の状況、公共交通機関(電車の運転時間短縮など)のイレギュラーな運行など、さまざまな間接的な影響が、喘息患者さんに及ぶ恐れがあります。

【参考情報】『新型コロナウイルス感染症発生下における医療提供体制及び検査体制の現状に関する各都道府県知事の御認識について 』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00022.html

3−2.薬剤欠品のリスク

オルベスコ
吸入ステロイド薬は、喘息患者にとって発作を予防するための非常に重要な薬剤です。

しかし、吸入ステロイドのひとつであるオルベスコ(一般名シクレソニド)が新型コロナウイルスに効果があるのでは?という記事が世に出たことにより、一時期、オルベスコに出荷停止の制限がかけられました。

その結果、通常在庫を抱えているはずの病院や薬局にもオルベスコが流通しなくなり、一部の喘息患者はオルベスコの処方が受けられなかったり、代替薬への切替が検討されたりなどの影響を受けました。

◆「喘息治療薬オルベスコ」について詳しく>>

このような薬剤の欠品はオルベスコだけではなく、イソジンガーグル(イソジンうがい液)や消毒液でも起こりました。
 
今後どのような研究報告が発表されるのかは分かりませんが、喘息患者が普段利用している薬剤や医療機器がコロナにも利用できるということになれば、何らかの出荷制限がかけられても不思議ではありません。

◆「喘息治療に使用する吸入薬の種類」について詳しく>>

4.おわりに

喘息などの呼吸器系の基礎疾患を持つ患者さんが、新型コロナウイルス感染症重症化の高リスクを抱えていることはいうまでもありません。

ウイルスによる直接的な影響だけではなく、医療提供体制のひっ迫や薬剤流通制限などの間接的な影響も視野に入れておくことが重要です。
 
感染を避けるのはもちろん、さまざまな状況を想定し、事前にできる準備をしておきましょう。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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