子どもの頃の喘息は大人になって再発する?
喘息はその発症時期で大きく2種類に分類されており、15歳までに発症する小児喘息と、成人してから喘息症状が出現する成人喘息が存在します。
成人喘息の患者さんの中には、子どもの頃に喘息を患っていて、成長につれ治ったとばかり思っていたのに、大人になってから再発してしまった、というケースも少なくありません。
そこで今回は、成人喘息に焦点を当て、成人喘息の治療方法や喘息再発時の対応などをお伝えします。
目次
1.成人喘息とは
成人喘息は「大人の喘息」とも呼ばれます。文字通り、大人になってから喘息症状が出現したタイプの喘息のことを指します。
喘息の病態そのものは小児喘息も成人喘息も同じであり、気道の炎症が喘息の主たる要因です。
2.気道に炎症があるとどんな問題があるか
長期的(慢性的)な炎症によって敏感になっている気道に、何らかのアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)が反応することで、喘息の発作が発現します。
発作が起こると、激しい咳や呼吸困難感が出現し、場合によっては重篤な状態を呈することもあります。
そんな喘息発作の原因となるのは、花粉やダニ、ほこりなどのアレルゲンだけではなく、冷たい冷気や強い香りなど、健常者にとっては何の問題もないことでも激しく反応し、発作を起こす可能性があります。
また、喘息発作が出現していない時でも、喘息患者の気道は常に炎症を起こしているため、気道の内部がむくみ、通常よりも咳や痰が増加します。気道の粘膜が弱くなっているため、細菌やウイルスなどの感染症にも罹りやすくなり、免疫力も低下します。
3.成人喘息に多い「非アトピー型」とは?
喘息には、アトピー型(アレルギー型)と非アトピー型(非アレルギー型)があります。
アトピー型の喘息は特定のアレルギー物質(ダニや花粉など)が発作の引き金となります。
小児喘息のほとんどは、アレルゲン(アレルギーを引き起こすもの)がきっかけとなって気道に炎症が起こる、アトピー性の喘息であることが知られています。
一方、大人の喘息にはアレルゲンが特定できない非アトピー型のものが多く見られ、喘息発作を引き起こす原因を突き止めることが難しい場合が多々あります。
このような場合、アレルゲンがあっても特定できないのか、それとも特定のアレルゲンがないのか、明確には判断できません。
そのため成人喘息の場合、どんな状況で喘息の症状が出るのか、普段から自分を観察することが重要です。
仕事が忙しくなったときや人間関係に悩んでいるときなど、大きなストレスを感じる状況が喘息発作の引き金となる場合もあるため、自分の体調の変化を記録しておくことが勧められます。
【参考情報】『大人の喘息』沢井製薬
https://kenko.sawai.co.jp/prevention/201712.html
4.成人喘息は再発型とは限らない
成人喘息には、小児期の喘息が再発するというケースだけではなく、大人になってから突然発症するという場合もあります。成人喘息患者のうち6〜8割は成人してからの急な発症であると報告されています。
【参考情報】『成人喘息の疫学』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-07.pdf
小児喘息は、学童期を過ぎると肺機能の成長によって症状が軽快することが多いため、次第に症状が出なくなることが多いです。しかし、仕事や環境の変化などの影響を受けることで、大人になってから再発する可能性があることもまた事実です。
【参考情報】『Why Asthma Can Hit You Harder as an Adult』Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/why-does-asthma-hit-you-harder-as-an-adult/
ただ、小児期に喘息を経験している患者さんは、病気に対する知識や対処方法を理解している場合が多いので、自分自身で「この咳は喘息かもしれない」と気付くことができます。
しかし、大人になって突然喘息を発症するような場合は、激しい咳や痰が出現しても、喘息による症状であると気がつくことが出来ずに、病院への受診が遅れる可能性が高いです。
大人の喘息は再発型だけではなく、突然発症するケースもあるということを理解しておき、「普段とは違う咳」を感じた時は、早めに呼吸器専門医を受診するようにしましょう。
早期に発見し早期に治療を開始することが出来れば、深刻な病態を呈することなく、いつもと変わらない日常を送ることができます。
5.自分で気道の状態を管理しよう
ピークフローメーターという器具で呼吸機能の検査をおこなうことで、自分自身で気道の状態を把握することができます。
ピークフローを利用することで、気道の状態を具体的に数値化することができるため、客観的に自分自身の体調を把握することができます。
その数値を喘息日記などで記録していくと、喘息がきちんとコントロールできているかどうかを知ることができたり、記録を診察時に医師に見せることで薬が効果的に効いているかどうかを共有することができたりするので、とても便利です。
【参考情報】『喘息(ぜんそく)の原因』第一三共ヘルスケア
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/33_zensoku/
6.アレルギー物質に注意
成人喘息の大半が非アレルギー型であるとはいえ、アレルギー物質には注意が必要です。
大人になると小児期よりも行動範囲が広くなるため、子ども以上に環境には注意する必要があります。
アルコールやたばこの煙など、大人だからこそ注意が必要なアレルギー物質も存在しますので、自分自身が苦手とする環境を理解することが大切です。
7.おわりに
成人喘息こそ日々の自己管理が大切だということがおわかりいただけましたでしょうか。
喘息は完治しない病気であることをよくご理解いただき、毎日の吸入薬の使用や定期受診だけではなく、体調の変化やストレスなどにも注意して生活しましょう。