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朝の咳と夜の咳で、どんな違いがある?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年11月05日

肺炎や気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)など、ひどい咳が主な症状となる病気は多種多様です。

湿った咳や乾いた咳、コンコン、ゴホゴホという音など、咳の種類を判別することで、病気を特定できることもあります。

病気を見分ける際に注目したい特徴のひとつに、咳がよく出るのが朝なのか夜なのかというタイミングがあります。

そこでこの記事では、病気を識別する際に役立つ、咳が出るタイミングについて紹介します。

1.早朝に咳が出るタイプの場合

早朝

早朝に激しく出る咳で一番考えられる病気は、気管支喘息です。
喘息はアレルギーなどによって気道に炎症がおこる病気です。

気道に長期的な炎症が起こることで、気道の粘膜は刺激に対して敏感になります。
そのため、気道が日常的な刺激(ダニやハウスダスト、カビ、ペットのフケ、煙、冷たい空気など)にすら敏感になってしまい、激しい咳や痰、ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸、息苦しさなどが出現します。

特に、喘息の炎症は夜間や早朝に悪化しやすいことが分かっており、夜間から早朝にかけて発作的に激しい咳が出るという人は、喘息である可能性が高くなります。

◆「喘息の症状について」>>

また、喘息は、季節の変わり目や気温の変化、朝の冷たい冷気などでも発作を起こすことがあります。

◆「季節の変化に注意して喘息発作を予防!」>>

このように、夜間から早朝にかけて咳が出るタイプの人は、喘息を患っている可能性があるため、早めに呼吸器専門医を受診すると良いでしょう。

仮に喘息であった場合、市販の薬剤や一般内科で処方されるような咳止めだけで治療することは難しいです。
適切な吸入薬を用いた専門的な治療を行うことで、喘息の無い人と変わらない生活を送ることができるようになりますので、早めに呼吸器専門医に相談しましょう。

【参考情報】『喘息の症状/チェンジ喘息』(アストラゼネカ)
https://www.naruhodo-zensoku.com/zensoku/symptoms.html

◆「喘息の症状・検査・治療の基本情報」>>

2.日中に咳が激しくなるタイプの場合

日中

成人の場合、日中、特になんらかの活動に伴って息切れや咳が出るという人は、COPDや慢性気管支炎などの病気の可能性があります。

例えば、運動などの動作に伴って咳や痰が増え、息苦しさを感じるというのは、COPDなどに特徴的な所見です。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

運動誘発性喘息(運動などの動作が引き金となって喘息発作が出る病気)では、運動などの身体活動が気道に影響を及ぼすことで、日中の活動時に突然咳が激しくなる可能性があります。

◆「喘息で注意すべき、運動のおはなし」>>

アレルギー性咳嗽(アレルギー物質の刺激によって出る咳)なども、日中の活動時に咳が悪化する可能性があります。
日常の活動時には多くのアレルゲン(ほこりや花粉などのアレルギー物質のこと)と接する機会が増えるため、アレルギー咳嗽などが悪化する可能性が高くなります。

【参考情報】『COPD-jp.com』日本ベーリンガー
https://www.copd-jp.com/

◆「喘息とアレルギーの密接な関係とは?」

副鼻腔炎が原因で咳が悪化する場合があります。
副鼻腔炎は「蓄膿症」とも呼ばれ、副鼻腔で炎症が起こることで発症します。

副鼻腔炎の症状は以下の通りです。

 ●黄色や緑色の粘り気のある鼻水が出る
 ●鼻づまり
 ●頭重感
 ●後鼻漏
 ●喉の違和感
 ●嗅覚障害

上記のような呼吸器症状に加え、咳や痰、微熱などもあらわれます。
後鼻漏のように、鼻から喉の方へ鼻水が流れていくと、喉の神経が刺激され咳が悪化する場合があります。

3.夜中咳で眠れないタイプの場合

夜間

夜中に咳が激しくなり、ほとんど眠れなくなってしまうという人も少なくありません。
夜中や夜間に咳が激しくなるタイプの病気にはさまざまなものが考えられます。

先にも述べたように、喘息の多くは夜間から早朝にかけて悪化する可能性があります。
しかし、夜間に咳が激しくなるからといって、それが喘息であるとは限りません。基本的に夜間は咳が激しくなりやすい時間でもあるのです。

3−1.夜間に咳が激しくなる理由


私たちの体は自律神経とよばれる神経によって支配されています。
自律神経のはたらきによって、自分の意志とは関係なく、呼吸や体温、免疫などの機能が調節されています。

そんな自律神経には、体を活発にする交感神経と、リラックスさせる副交感神経があり、この2つがバランスを取りながら健康を維持しています。
交感神経は昼に起きているときに優位となり、副交感神経は夜に眠っているときに優位となります。
副交感神経が優位になると、体の緊張がゆるんで筋肉が弛緩します。そのため、気管支や気道が狭くなり、咳が出やすくなるのです。

また、仰向けに寝転がることで、鼻水などが喉の奥に流れやすくなります。
特に、風邪や副鼻腔炎、鼻炎などを起こしているときは、夜間に鼻水や膿が喉に流れ込み、それらが刺激となるため、仰向けに寝転がるタイミングで咳が誘発される可能性が高くなります。

このように、夜間や睡眠時というのは、そもそも咳が出やすいタイミングであり、咳で夜眠れなくなるという人は非常に多いです。

【参考情報】『What causes that terrible nighttime cough?』The Ohio State University Wexner Medical Center
https://wexnermedical.osu.edu/blog/nighttime-cough

良質な睡眠を確保するためにも、睡眠時に咳が出ないように対処していく必要があります。

【参考情報】『夜間や早朝にせきが出ます/呼吸器Q&A』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q03.html

◆「咳が止まらなくて夜眠れない時の対処法と予防法」>>

4.おわりに

適切に病気を診断するためには、咳が出るタイミングが非常に重要です。
朝に咳が出やすいのか、夜に出やすいのか、日中の活動時に咳込むことがあるのかなどをしっかりと呼吸器専門医に伝えるようにしましょう。

咳という症状自体は一緒でも、病気によって治療内容が大きく変わります。
最適な治療を受けるためにも、自分自身の咳の特徴を把握しておきましょう。

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