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タバコで咳が出る理由と、咳が長引くときに疑われる3つの病気

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年04月19日
タバコ 咳

タバコを吸うと、ゴホゴホと咳き込んでしまったり、しょっちゅう咳が出ることはありませんか? 

自分が吸わなくても、家族や職場の人がタバコを吸っているため、流れてくる煙にむせてしまい、困っている人もいるのではないでしょうか。

この記事では、タバコにより咳が出る原因と、タバコを吸う人の咳が長引いているときに疑われる3つの病気を紹介します。タバコを吸う習慣のある人と、周囲に喫煙者がいて咳が続いている人は、ぜひ読んでください。

1. なぜタバコを吸うと咳が出るのか

タバコ咳
タバコの煙には、ニコチン、タール、一酸化炭素をはじめとした数千種類以上の化学物質が含まれるといわれています。

タバコを吸うと、これらの化学物質や、目に見えないほど小さなゴミのかけらにのどや気管支が刺激され、咳が出やすくなります。

また、咳は強いにおいに誘発されて出ることもあるため、タバコの香りが刺激となって、咳が出ることもあります。

【参考情報】『たばこの煙と受動喫煙』e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-05-004.html

2. 一時的な咳と慢性的な咳の違い

煙
タバコの煙以外にも、花火や蚊取り線香、バーベキューの煙を吸ったときに、のどや気管支が刺激され、咳が出ることがあります。このような咳は、刺激となる煙を避ければ止まります。

また、風邪やインフルエンザなどの呼吸器疾患で咳が出ることもありますが、病気が治れば咳は止まります。

しかし、タバコを吸う習慣のある人が、2週間以上咳が続いているときは、タバコに含まれている有害物質に刺激され、喘息の発作が誘発された可能性があります。

さらに、咳が8週間以上続いているときは「慢性の咳」と診断され、喘息のほかCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんなどの病気を疑います。

3. タバコで咳が続くときに疑われる3つの病気

3つ
長い間タバコを吸い続けていると、気管支や気道、肺が刺激を受け続け、次第に傷ついていきます。すると、アレルギーを発症しやすくなりますし、呼吸器の機能が低下して病気にかかりやすくなります。

3-1.喘息

喘息とは、気道が慢性的に炎症を起こして狭くなり、呼吸がしにくくなる病気です。咳や息切れ、呼吸困難などの症状があり、最悪の場合、死に至る発作を起こすことがあります。

喘息の原因は、アレルギーによるものと、アレルギー以外によるものがありますが、タバコの煙はアレルギーを引き起こす誘因となります。

喘息は完治が難しい病気で、主な治療としては、気道の炎症を抑えて発作を防ぐ薬を毎日服用し、喘息をコントロールし続ける必要があります。また、発作が起きてしまった時に発作を鎮めるための薬も使われます。

◆「喘息の症状・検査・治療の基本情報」>>

◆「喘息の方が喫煙した時の症状の悪化」について詳しく>>

3-2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、長期にわたって有害物質を吸い込むことによって、気道や肺などの呼吸器に障害が生じる病気です。代表的な症状は息切れで、特に階段や坂道の上り下りが苦しくなります。

COPDの主な原因は、長年の喫煙習慣です。そのため、COPDは「肺の生活習慣病」とも呼ばれています。放っておくと、呼吸困難で寝たきりになったり、肺炎や肺がんを引き起こすことがあります。

COPDの治療は第一に禁煙ですが、狭くなった気管支を広げ呼吸を楽にする気管支拡張薬を使った治療が主に行われます。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

3-3.肺がん

肺がんにはいくつか種類がありますが、特に小細胞肺がんと肺扁平上皮がんは、喫煙との関連が強いとされています。男性の小細胞肺がんの原因は、ほぼ100%タバコであると言われています。

肺がんは、初期には自覚症状がないことが多いのですが、タバコが強く関係している小細胞肺がんや肺扁平上皮がんでは、咳や痰、血痰などの症状が比較的出やすいとされています。

肺がんの治療法には、手術、放射線治療、薬物療法があり、肺がんの種類や進行度などを踏まえ、治療法を決定します。

◆「40歳以上と喫煙者は知っておきたい!肺がんの症状・検査・治療の基礎知識」>>

4. 受動喫煙による咳

受動喫煙

タバコを吸う人だけではなく、家族や周囲の人も、喫煙者のタバコから立ち上る煙を吸い込んで、咳が出ることがあります。特に乳幼児は、大人より気道の粘膜が未熟で弱いため、わずかな刺激にも敏感に反応して咳き込みます。

さらに、タバコに含まれる化学物質は、火を消した後でも髪の毛や衣類、壁などに付着して、においや有害物質を放出し続けています。これらの残留物質を「サードハンド・スモーク(三次喫煙)」といいます。

【参考情報】『三次喫煙(サードハンド・スモーク)』e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-057.html

サードハンド・スモークは、火を使わない加熱式タバコでも発生し、アレルギーや喘息を引き起こす原因になると考えられています。特に、室内で過ごす時間が長い乳幼児への影響が懸念されています。

◆「新型タバコ(加熱式・電子)がもたらす健康被害」>>

5. 禁煙のメリットと難しさ

禁煙
呼吸器疾患以外にも、喫煙によってリスクが高まる病気はいろいろありますが、早めに禁煙すれば、病気の発症や進行を防ぐことができます。

しかし、タバコには強い中毒性があるため、意志の力だけではなかなか禁煙できないのが実情です。命にかかわる病気になっても、タバコがやめられない人もいます。

タバコがやめられないのは「ニコチン依存症」という病気だからであって、その人の我慢や努力が足りないせいではありません。

【参考情報】『Nicotine dependence』CAMH(Centre for Addiction and Mental Health)
https://www.camh.ca/en/health-info/mental-illness-and-addiction-index/nicotine-dependence

禁煙にチャレンジしたい人は、自分ひとりで克服しようとせず、ぜひ禁煙外来を受診して適切な治療を受けてください。

◆禁煙外来>>

禁煙に成功すると、病気にかかるリスクが下がるだけではなく、「睡眠の質がよくなる」「口臭が改善する」「肌のハリ・ツヤがよくなる」など、さまざまなメリットがあります。

6. おわりに

タバコを吸っている人は、咳が出ても「よくあること」だと思い、のど飴をなめたり市販薬を用いたりすることで不快感を減らそうとします。

しかし、タバコによって誘発された病気により咳が出ているのなら、市販薬では治りませんし、病院への受診を延ばしていることで、病気が進行する恐れもあります。

2週間以上咳が続いているときは、一度呼吸器内科を受診して、咳の原因を調べてみましょう。呼吸器内科では禁煙外来を設けていることも多いので、ついでに禁煙の相談をするのもおすすめです。

◆「咳が止まらない時は何科の病院に行けばよいか」>>

◆「市販の咳止め薬は効く?効かない?」>>

◆「1週間以上咳が止まらない時、どうしたらいい?」>>

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