咳止め薬の市販薬と処方薬の違いについて
咳は、体にとって非常に大事な防御反応です。吸い込んでしまったほこりなどの異物を吐き出す働きのほか、風邪などの病気にかかった時は、体内から細菌やウイルス、痰などを排出する役目を持っています。
しかし、激しい咳は非常につらく、体に負担がかかります。そんな時には、効果的に咳止めを使用することが大切です。
この記事では、咳止めの効果や副作用、市販の咳止め薬と処方薬との違いなどを紹介しながら、咳止めを使用する際の注意点を解説します。
目次
1.市販薬と処方薬のちがい
咳止め薬は「市販の咳止め薬」と「医師が処方する咳止め薬(処方薬)」に大別することができます。
1−1.市販の咳止め薬とは?
パッケージに「せき」や「せき止め」などの表記があり、医師の処方箋がなくてもドラッグストアなどで手軽に購入することができる薬です。
テレビのCMなどでも「咳に効く!」等のキャッチコピーがなされているため、具体的な商品名が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
【参考情報】『鎮咳去痰薬』ジョンソン&ジョンソン
https://www.jnj.co.jp/consumer/cold
錠剤・カプセル剤・液剤・散剤(粉薬)などの種類があり、自分にあったものを選ぶことが可能です。
咳止め薬というカテゴリーに分類される市販薬の成分には「dl-メチルエフェドリン塩酸塩」、「ノスカピン」、「ジフェンヒドラミン塩酸塩」、「トラネキサム酸」、「ジヒドロコデインリン酸塩」など、さまざまな成分が使用されています。
商品によって使用されている成分は異なりますが、例えば、商品Aには成分1と成分2、商品Bには成分1と成分3と成分4など、ひとつの商品に複数の成分が含有されており、これが市販薬と処方薬を分ける大きなポイントのひとつとなっています。
1−2.医師が処方する咳止め薬とは?
医師が発行した処方箋がないと購入できない咳止め薬です。
処方薬には、市販薬にはない成分が含まれた薬が豊富にあります。
錠剤・カプセル剤・液剤・散剤(粉薬)などのほか、吸入薬や貼り薬もあります。咳の原因によっては、注射薬を用いることもあります。
専門的には単純に「咳止め」というカテゴリーには分類できませんが、医師が必要な検査をして、適切な成分を選んで処方し、根本的な原因を治療しながら、咳の症状を緩和していきます。
【参考情報】「薬が見える」(医療情報科学研究所)
https://www.byomie.com/
2.処方薬のメリット
処方薬の最大のメリットは、「医師がその人の症状に合わせて出す薬」であることです。咳止め薬を処方する前には必ず診察があり、必要に応じた検査が行われます。
医師は、「この咳の原因はなにか?」ということを必ず考えます。今出ている咳をただ止めれば良いということではなく、咳の原因である病気を治療するための戦略を考えます。
その結果、必要に応じて咳止め薬を処方することもありますし、場合によっては咳止め薬ではなく病気の根本的な原因を治療するための薬を処方します。
3.処方薬と市販薬との決定的な違いは?
処方薬は基本的に「ひとつの薬にひとつの成分」が含有されており、患者さんの症状や状態に応じて複数種類の成分を組み合わせて処方します。
例えば、市販の咳止め薬に汎用されている「ジフェンヒドラミン塩酸塩」という成分は、アレルギーなどの症状を止めるためには効果的な成分ですが、“咳止め”としては必要な成分ではありません。
【参考情報】『Diphenhydramine』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a682539.html
どんな成分であっても、薬を飲むということには副作用が伴う可能性があるため、必要のない成分は処方しないのが一般的です。
しかし、市販薬はより多くの人の症状を緩和するために、幅広く効果的な複数の成分を組み合わせるという考えで作られているため、ひとつの商品に複数の成分が含有されているのです。
市販薬は手軽に手に入るというメリットがある一方で、自分には必要のない成分も含まれていることがある、という事実を頭に入れておきましょう。
【参考情報】「くすり・病気について」(アスゲン株式会社)
https://www.asgen.co.jp/mas/aid1.html
4.市販の咳止め薬は処方薬より効果が弱い?
一般的に、処方薬は市販薬よりも“強力”というイメージがあり、市販薬は処方薬より効果が弱い代わりに、副作用も少ないという認識を持つ人もいるかもしれません。しかし、そのイメージは必ずしも正しいとは言い切れません。
例えば、市販の咳止め薬の中にはコデイン(ジヒドロコデインリン酸塩)という成分が含まれているものがあります。
コデインは脳の中枢神経に働きかけることで、強制的に咳が出るのを防ぐ成分ですが、医療用麻薬に指定されている医薬品でもあり、使用方法によっては依存を招くこともあります。また、12歳以未満の小児への使用は禁止されています。
【参考情報】『No Codeine or Tramadol for Children Under 12』FDA(Food and Drug Administration)
https://www.medpagetoday.com/pediatrics/generalpediatrics/64673
「市販薬だから絶対安全」とは限らないので、薬は用法容量を守って使用しましょう。
また、これは咳止め薬に限りませんが、市販薬があまり効かないと思われている背景には、医師の診察を介していないため、症状に合っていない製品を選んでしまっていることも考えられます。
市販薬を使用しても効果がないと感じたら、医師や薬剤師に相談し、適切な薬を紹介してもらいましょう。
5.おわりに
ドラッグストアに行けば、咳止め薬を簡単に手に入れることができます。
しかし、なかなか止まらない咳に苦しんでいる人は、早めに咳の原因を突き止めることが重要です。
市販薬で咳が止まらないときは、呼吸器専門医に相談し、市販薬でも良い程度の症状なのか、処方薬で治療する必要がある病気なのかを明確にすることをおすすめします。