過敏性肺炎について
過敏性肺炎とは、カビや細菌、羽毛などの特定の物質を繰り返し吸い込むことによるアレルギー反応が原因で起こる肺炎です。
1.過敏性肺炎とは
特定の物質を繰り返し吸い込むことにより、アレルギー反応が起こり、気管支や肺に炎症が生じる病気です。
【参考資料】『Hypersensitivity Pneumonitis』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/hypersensitivity-pneumonitis#:~:text=Hypersensitivity%20pneumonitis%20is%20an%20immune,and%20animal%20proteins%20or%20chemicals.
聞きなじみのある「肺炎」とは異なります。「肺炎」は細菌やウイルスなどの微生物が増殖することで発症します。
過敏性肺炎の原因物質としてはカビ(真菌)や細菌、鳥の糞、羽毛、ポリウレタンの原料となるイソシアネートなどがあります。
アレルギー性の病気のため、同じ原因物質を吸っても発症する人としない人がいます。
〜病名と原因抗原〜
●夏型過敏性肺炎・・・高温多湿な住居で増殖したカビ
●鳥飼病・鳥関連過敏性肺炎・・・鳥の糞や羽毛
●農夫肺・・・牧草に繁殖したカビや菌
●塗装工肺・・・塗料に含まれるイソシアネート
●加湿器肺・・・放置した加湿器で増殖したカビ
●きのこ栽培者肺・・・きのこ胞子や栽培環境の菌
アレルギーを起こす原因物質は100~200種類以上あるといわれており、挙げたような生活環境にかかわる物質が関係することが多いです。
また、過敏性肺炎は、数時間~数週間での体調不良を生じる急性過敏性肺炎と、数か月から数年で進行する慢性過敏性肺炎に分けられます。
急性過敏性肺炎の内訳は、夏型過敏性肺炎が74%、農夫肺が8%、加湿器肺が4%、鳥飼病が4%です。
慢性過敏性肺炎の内訳は、鳥関連過敏性肺炎が60%、夏型過敏性肺炎が15%、住居関連過敏性肺炎が11%です。
夏型過敏性肺炎は夏期に発症し、加湿器肺や羽毛製品による鳥関連過敏性肺炎は冬期に発症します。
2.症状
過敏性肺炎の症状は、痰が出ない乾いた咳、呼吸困難、発熱、運動時の息切れ、疲労感などを認めます。
入院する場合もあり、原因物質から離れることで入院後に一時的に症状が良くなっても、退院後に原因物質を吸い込み再発することが多いのが特徴です。
慢性過敏性肺炎が進行した場合には、手の指が太鼓のばちのように変形する「ばち指」を認めます。
また、慢性の場合、発熱や疲労感よりも、運動時の息切れ、咳の症状が主になります。
3.検査
主な検査は胸部CT検査や血液検査です。
胸部CT検査では、炎症の影があるかを確認します。
血液検査では、原因物質(抗原)に対する抗体があるかを確認します。
急性過敏性肺炎では特異抗体が陽性となり、慢性過敏性肺炎では抗体陽性率が低いです。
また、原因物質を吸入する吸入誘発試験、気管支鏡で肺に生理食塩水を入れ回収した液の成分を調べる気管支肺胞洗浄、胸腔鏡または開胸術で肺の一部を採取して調べる肺生検などを行う場合もあります。
4.治療
治療の基本は、原因物質を避けることです。
重症の場合や慢性過敏性肺炎が進行した場合は、ステロイド薬や免疫抑制薬、抗繊維化薬が使用されます。
呼吸困難が続く場合は、自宅で行う酸素吸入が検討されます。
家での原因物質を避けるための対策として、水回り・エアコン・壁などのカビの防止や除去、鳥の羽毛布団など鳥関連の製品は家に置かない、加湿器などフィルターがあるものは定期的にメンテナンスを行い、頻繁に水を交換しましょう。
職場での原因物質を避けるための対策としては、防塵マスクを使用するなど対策を行いましょう。
それでも改善しなければ、簡単なことではありませんが、引っ越しや職場環境の改善が必要です。
【参考資料】「新・呼吸器専門内科医テキスト」日本呼吸器学会
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/
5.おわりに
過敏性肺炎は、カビや菌の増殖などが原因のことも多く、誰にでも起こる可能性がある病気です。
咳や発熱などの気になる症状がありましたら、早めに呼吸器内科を受診しましょう。