赤ちゃんの喘息について
赤ちゃんは大人より気管支が細く柔らかいため、少し風邪をひいただけでも喘息の患者さんのような「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音がすることがあります。
このように、風邪をひいた時に喘息のような呼吸音がしても、成長とともにやがてなくなっていくのが普通です。
しかし、何度も「ヒューヒュー」「ゼーゼー」することがあり、さらにアレルギー体質の赤ちゃんには喘息の疑いがあります。
この記事では、赤ちゃんの喘息について解説します。喘息と似た症状が出る病気も紹介しますので、病院を受診する際の参考にしてください。
目次
1.乳幼児喘息とはどのような病気なのか
喘息とは、空気の通り道である気道が慢性的な炎症を起こして狭くなる病気です。喘息になると気道が敏感になり、わずかな刺激を受けただけでも激しい咳が出たり、呼吸が苦しくなります。
小児気管支喘息治療・管理ガイドラインでは、5歳以下を乳幼児喘息とし、学童期以降の喘息は小児喘息として区別しています。
【参考資料】『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023(web版)』日本小児アレルギー学会
https://www.jspaci.jp/journal/asthma2023/
2.症状
赤ちゃんの喘息の主なサインは、以下となります。
・風邪が治った後も「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という
呼吸音(呼気性喘鳴)がする
・息をするときに、胸のろっ骨や鎖骨のあたりがへこむ
・咳がひどくて眠れない
・機嫌が悪い、泣き叫ぶ
・母乳やミルクを飲まなくなる
【参考資料】『Asthma in Infants』AAFA.org(Asthma&Allergy Foundation of America)
https://www.aafa.org/asthma-in-infants/
「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音が24時間以上出る症状を3回以上繰り返し、その症状が出た時と次に同じ症状が出るまでに1週間以上無症状の期間があれば、乳幼児喘息と診断します。
3.喘息とアレルギー
人間の体には、細菌やウイルスなどの異物などから身を守る「免疫」という仕組みが備わっています。
しかし、この免疫の働きが何らかの原因によって過敏になり、体に害のないものにまで攻撃を開始することがあります。すると、皮膚のかゆみや咳、鼻水などが現れます。これを、アレルギー反応といいます。
喘息にはアレルギーが原因のものと、アレルギー以外の原因によるものがありますが、赤ちゃんの喘息は、ほぼアレルギーが原因だと考えられています。
また、アレルギー反応を起こしやすい体質は遺伝することがあるので、家族に喘息の人や、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの人がいると、子どももその体質を受け継ぐことがあります。
4.診断と治療
年長児であれば、呼吸機能の検査をしますが、乳幼児には難しいので、まずはこれまでの咳や呼吸音の様子、アレルギーの有無などの話をご家族からうかがいます。さらに聴診で呼吸音を聞くなどして、総合的に判断します。
問診では、「夜に咳が出ることが多い」「風邪が治った後も咳が続いている」など、どんな時にどんなことがあったのか、できるだけ正確に伝えてくださると診断に役立ちます。
適切な診断をし治療を開始するためには、起きているかもしれない喘息の小発作を見逃さない事が大切です。
夜間咳込んで起きたり、咳で嘔吐するような事がある場合は呼気性喘鳴が聞こえるか家庭でも呼吸音を確かめて見て下さい。
呼気性喘鳴の確かめ方としては、まず赤ちゃんの息が親の耳にかかるよう、赤ちゃんの口を耳元に近づけます。次に赤ちゃんの息が耳にかかるタイミングで「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音が聞こえるか確認します。
自宅で確認したことを診察時に医師に伝えましょう。
また、喘息の治療に用いられる気管支拡張薬を吸入してもらい、症状が改善するかどうかを確かめることもあります。
診察の結果、乳幼児喘息だと判断したら、重症度や状況に応じて、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬による薬物療法を行います。
5.悪化を防ぐ対策
アレルギーによる喘息では、ダニ対策が重要となります。ダニは布団や布製のソファなどを好むため、これらの寝具や家具を中心に、なるべくこまめに掃除をしましょう。
できれば布製の家具や雑貨は、部屋に置かない方がいいです。ぬいぐるみは処分するか、洗えるタイプのものを選んで月1回は洗濯しましょう。
ペットも飼わない方がいいのですが、すでに飼っている場合は、毛やフケが飛び散らないように、ペットの体を清潔に保ってください。
風邪やインフルエンザのような呼吸器の感染症にかかると、喘息の症状がひどくなることがあります。
赤ちゃんを守るため、家族や周囲の人は手洗いやワクチン接種など、感染症から身を守るための行動を心がけましょう。
空気の乾燥する時期は、部屋を加湿しましょう。
6.乳幼児喘息とよく似た病気
喘息以外にも、赤ちゃんに咳が出て呼吸が苦しくなる病気はあります。参考までに、乳幼児喘息とよく似た症状の病気を紹介します。
6−1.喘息性気管支炎
気管支炎とは、気管や気管支が炎症を起こす病気です。風邪にかかった後に起こることが多く、発熱、咳、鼻水などの症状が現れます。
赤ちゃんが気管支炎にかかると、喘息のような呼吸音が出ることがあります。このような「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音が出る気管支炎を、喘息性気管支炎といいます。
「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音があっても、顔色がよく、水分をしっかりとれているなら自宅で様子をみましょう。呼吸が苦しそうな場合は、病院を受診してください。
6−2.クループ症候群
6歳くらいまでの子どもに多い病気です。発熱やのどの痛みのほか、声がかすれて「ケンケン」という犬が吠えるような特徴のある咳が出ます。また、喘息のような「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音が聞こえることもあります。
「ケンケン」「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音がしたら、スマホなどで録音しておくと、病院を受診する際に役立ちます。
症状が軽い場合は、なるべく安静にして水分を補給していれば、1~2週間で回復します。しかし、夜間に突然症状が悪化して呼吸困難を起こすことがあるので、そのようなときは、救急で病院を受診してください。
6−3.ピーナッツの誤飲
ピーナッツの誤飲でも、喘息のような咳や呼吸音が出ることがあります。ピーナッツは表面がツルンとしているせいか気道に入りやすく、いったん気道に入るとなかなか吐き出せません。
気道に入ったピーナッツが水分でふやけると、膨らんで大きくなり、呼吸が苦しくなることがあります。また、ピーナッツから出る油分で、肺の組織が炎症を起こすこともあります。
ピーナッツはレントゲンに写りにくいため、誤飲と診断するのは難しいのが困りものです。また、ピーナッツを取り出す処置には全身麻酔が必要なので、子どもの体に大きな負担がかかります。
【参考情報】『お子様と麻酔について』日本小児麻酔学会
https://jspedanes.smoosy.atlas.jp/ja/relation_about_pa
5歳以下の子どもには、ピーナッツのようなナッツ類や、煎り大豆などの豆類は与えないようにしましょう。節分の豆まきの後は、豆が部屋に残らないよう、すぐに掃除をしましょう。
【参考情報】『食品による子どもの窒息・誤嚥(ごえん)事故に注意!』消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_047/
7.おわりに
大人の喘息は、症状が治まってもずっと治療が必要な病気ですが、乳幼児の喘息は治ることが多いです。
しかし、放っておくと小児喘息に移行することもあるので、油断せずに適切な治療を受けてください。