喘息発作やウイルス感染を予防する、マスクの付け方と選び方
みなさんは普段、マスクをどのようにして選んでいますか?
最近では手作りのものや冷感タイプなども増え、ファッションの一部としてマスクをしている人も少なくありません。
多種多様なマスクですが、逆に選択肢が多くなれば多くなるほど、
「いったい何が違うのか」
「どれを選べばいいのかわからない」
と迷ってしまう方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、マスクの基本的な役割や種類をはじめ、
マスクが喘息発作の予防に役立つ理由や
自分に合ったマスクの選び方など、
意外に奥が深い「マスク」についてご紹介いたします。
目次
1.マスクの役割
あなたは、マスクをどのような時に着用しますか?
新型コロナウイルス感染症が流行してからというもの、
外出時はもちろん、屋内でも常にマスクをしているという方が多いと思いますが、
流行以前は、
・病気にかかった時
・人混みで病気をうつされたくない時
・花粉が飛んでいる時
・料理や配膳をする時
・掃除の時
・ノドが痛い時
・冬の寒い時
・空気が乾燥している時
などの場面でマスクをつけるというのが一般的でした。
今やマスクの需要は年間を通してあると言えますが、
新型コロナウイルスに加えてインフルエンザなどのウイルス性・細菌性の病気が流行する秋から冬の時期は、より一層マスクの着用が欠かせません。
【参考情報】『Use and Care of Masks』CDC
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/prevent-getting-sick/about-face-coverings.html
◆「コロナだけじゃない!ウイルス感染で咳が出る病気と感染予防法」>>
1−1.喘息発症予防・発作予防にはマスクが有効
一般的に喘息と呼ばれる「気管支喘息」の発症原因として最も多いのが、ハウスダストや花粉などのアレルゲン物質です。
また、咳だけがいつまでも出る「咳喘息」や、咳と痰が長い間続く気管支炎のおもな原因は、風邪やインフルエンザなどのウイルスによるものです。
◆「咳喘息とはどのような病気か?原因・症状・治療について」>>
したがって、もともとアレルギー体質の方や呼吸器系が弱いという方は、普段からマスクをつけてアレルゲン物質や病原菌の吸入を減らすことで、喘息や気管支炎の発症を防ぐことができると考えられます。
1−2.喘息の天敵、インフルエンザ
喘息や気管支炎の方がインフルエンザに感染すると、もともと健康だった人に比べてインフルエンザが重症化したり、肺炎の併発や喘息発作が起こりやすくなったりする恐れがあります。
発作をたびたび繰り返すことで、気道のリモデリング(炎症が悪化して気道が狭くなったまま元に戻らなくなること)を引き起こすため、インフルエンザが完治した後も喘息発作が起きやすい状態が続くのです。
予防接種を毎年受けていただくことはもちろん、最低限の予防対策として
・マスクの着用
・手洗い
・うがい
の3点セットを毎日の習慣にしましょう。
1−3.「咳エチケット」を知っていますか?
咳エチケットとは、
“咳やくしゃみが出る時に周りの人に病気をうつさないためのマナー”
のことです。
厚生労働省が提唱しているもので、新型コロナウイルスが広まってさらに認知されるようになりました。
一人ひとりが「咳エチケット」を心がけ、感染予防に努めましょう。
2.マスクの種類による性能の違い
マスクの大切な役割がわかったところで、ここからは具体的な種類について違いを見ていきましょう。
2−1.マスクの分類と形状
マスクは使用目的によって、「家庭用」「医療用」「産業用」に分けることができます。
このうち、みなさんが日常的に使う機会の多い「家庭用マスク」について、形状と素材別に分けると次のようになります。
“不織布”とは・・・
文字通り“織らないで作られた布”のことで、繊維を織る代わりに熱や化学物質で接着したり、機械でからみ合わせたりして作った薄いシート状の布のことをいいます。
木綿で織るガーゼに比べて安い単価で大量生産でき、形も加工しやすく捕集性や通気性に優れることから、マスク用フィルターとしても多く使用されるようになりました。
以前は家庭用マスクと言えばガーゼ素材が主流でしたが、現在では不織布タイプが大半を占めています。
2−2.粒子の大きさとフィルターの性能
空気中にはさまざまな粒子が無数に飛んでいます。
このうち、人体に影響があるウイルスや細菌などの粒子がどのくらいの大きさなのかを比べてみましょう。
【参考情報】(一社)日本衛生材料工業連合会
http://www.jhpia.or.jp/index.html
こうして並べてみると、ウイルスや細菌がとても小さく、花粉が思いのほか大きいということがわかりますね。
マスクのパッケージによく「花粉対策用」や「ウイルス対策用」などと書かれていますが、これらの一番大きな違いは粒子を通すフィルターの性能です。
フィルターの性能は、捕集試験(特別な装置で空気中の粒子をフィルターを通して集めること)によって測定します。
ただし、花粉はPM2.5などの大気汚染物質で傷つけられると破裂して30㎛から1.0㎛以下にまで小さくなることがあります。
吸い込んだ時に肺の奥(肺胞)まで届くのは5.0㎛以下の粒子なので、30㎛以上の粒子をカットするとされる花粉対策用マスクでは、フィルターを通り抜けてしまうことになります。
花粉対策用は「通気性がよい」などの利点もありますが、花粉が飛び始める時期はインフルエンザの流行期とも重なります。
購入の際はパッケージのフィルター性能表示をよく読んで、外出時にはウイルス対策用やPM2.5対策用のマスクを選んでおくとよいでしょう。
3.マスクでウイルス・細菌はどこまで防げるか
ここまで、マスクの役割や性能についてお話してきましたが、マスクをしているからといって、絶対に感染しないというものではありません。
なぜなら、マスクは顔に完全に密着しているわけではなく、どうしても顔とマスクの間にすき間ができてしまうからです。
フィルターがどれだけ高性能であっても、すき間がある限りウイルスなどの侵入を100%防ぐことはできません。
主流のプリーツ型を例に、空気が出入りしやすいポイントを見てみましょう。
このように、すき間は全方向にできやすくなっています。
マスクの性能を最大限活用するためには、顔の大きさに合ったサイズ選びと正しいつけ方を知っておくことが大切です。
3−1.サイズの選び方
マスクを購入する際にまず気を付けていただきたいのが「サイズ選び」です。
1箱にたくさん入っているお徳用マスクを買い置きして、家族全員で共用しているという方も多いのではないでしょうか。でも、女性と男性、大人と子供では当然顔の大きさが違います。
顔の大きい人が小さ目のマスクを付けた場合、耳の付け根が痛くなったり呼吸がしづらくなったりしますし、顔の小さい人が大き目のマスクを付けた場合、隙間が大きく空いてしまいます。
マスク選びに「大は小を兼ねる」はあてはまりませんので、個々に合ったサイズのマスクを購入しましょう。
<サイズの測り方>
1.親指と人差し指でL字型を作ります。
2.L字型にした状態で、耳の付け根の一番高いところに親指、鼻の上の付け根から1cm下のところに人さし指を当てます。
親指から人さし指までの長さを定規で測ったら、下の表にあてはめてみましょう。
サイズの呼び方はメーカーによって違いがありますが、選ぶ際の目安にしてください。
3−2.マスクの正しい付け方(プリーツタイプ)
1.マスクのオモテとウラ、上下を確認する
開いてみた時にプリーツが出っ張る方がオモテ、ワイヤーが入っている方が上です。
プリーツが一方向のタイプは、ヒダが下向きになります。
2.マスクを2つに折る
次に、オモテ側が外になるよう、真ん中から2つに折ります。
3.顔につける
次の手順で、マスクを顔にぴったりフィットさせましょう。
このようにポイントを押さえた正しい付け方をすれば、マスクと顔とのすき間を極力減らすことができます。
【参考情報】『新型コロナウイルスの空気伝播に対するマスクの防御効果』東京大学
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/content/000003662.pdf
3−3.マスクはいつも清潔なものを
洗って干して使える布タイプのマスクもあるようですが、不織布タイプのマスクは原則として使い捨てです。
前日のものを使いまわしたりせず、1日1枚の使用を目安にしてください。
くしゃみや咳をすればマスクの内側に雑菌がたくさん付きますし、花粉がたくさん飛んでいたりすればマスクの外側にウイルスや花粉がたくさん付いています。
目に見えなくても一日使用したマスクはかなり汚れていますから、こまめに交換したほうが良いでしょう。
また、使ったマスクの表裏をむやみに触ったり、その辺に放置したりしないよう、取扱いには十分注意しましょう。
4.ケースを使っていつも清潔なマスクを
マスクの予備を持ち歩く時や、食事でマスクを一時的に外したい時などに、そのままカバンやポケットに入れたりしていませんか?
特に、使用したマスクをむやみに触ったり、適当に放置したりするのは衛生上望ましくありません。
そこでおすすめしたいのが「マスク専用ケース」です。
ケースにしまうことにより、マスクに付着したウイルスなどが他に付いてしまうのを防ぐことはもちろん、逆にマスクが汚れたり、折れ曲がったりするのを防ぐこともできるのでとても便利なアイテムです。
かわいいデザインから機能性重視のものまでいろいろな種類があり、100円ショップや雑貨店などで購入することができます。
5.おわりに
家庭用マスクは基本的には飛散を防止するものであり、ウイルスや花粉などからの完全な予防対策にはなりませんが、自分の顔の大きさや用途などに合わせたものを選んで正しく使用すれば、とても心強いアイテムです。
色や形、材質も豊富にありますので、自分が使いやすいマスクを選んで身につけましょう。