喘息の子どもが保育園・幼稚園に入る前に知っておきたいこと
喘息のお子さんが保育園や幼稚園に入園すると、初めての環境で発作を起こすのではないかと心配になるかもしれません。
また、遠足や運動会などの行事に参加してもいいのかどうか、迷うこともあるでしょう。
この記事では、入園前に知っておきたいこと、園の先生たちに伝えておきたいこと、親が気をつけておいてほしいことなどを紹介します。
目次
1.生活管理指導表を提出しましょう
まずは入園面接時に、子どもが喘息であることを伝えましょう。入園が決まると、園側から子どもの状態を把握するために使われる「生活管理指導表」が渡されるので、主治医に記入してもらい、園に提出してください。
【参考情報】『保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表(気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性結膜炎) 』こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/1bd0041a/20231016_policies_hoiku_38.pdf
その上で、配慮してほしいことや発作が起きた時の対処法を、具体的に伝えておくとよいでしょう。
どこまで個別に対応してもらえるかは園側の状況にもよりますが、先生たちとよくコミュニケーションをとり、お互いができる範囲で協力していきましょう。
お子さんは、まだ自分の体調を把握するのは難しいかもしれませんが、「ゼーゼーしてきたら走らない」など、年齢に応じて気を付けてほしいことを伝えておきましょう。
◆「「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音・喘鳴(ぜんめい)とは?」>>
2.発作が起こりやすい「運動」と「掃除」に注意
喘息の発作が起こりやすいのは、運動や掃除の時間です。特に、マラソンやかけっこなど過呼吸になりやすい運動では発作が起こりやすくなります。
2−1.運動にあたっての注意
運動については、主治医や園の先生とも相談して、「運動前に気管支拡張薬を吸入する」「発作が起こりやすい運動は無理をせずに見学する」など、お子さんの状態に合わせた対処を行ってください。
運動の前には準備運動を行い、徐々に体を慣らしておくと発作が出にくくなります。また、冷たい空気を吸うと発作が起こりやすくなるので、冬はマスクを着けるのもいいでしょう。
喘息だからといって、むやみに運動を制限してしまうと、体力がつかなくなります。さらに、運動不足で肥満になると、ますます喘息が悪化する恐れもあります。
オリンピックでメダルを獲得したスケートの清水宏保さんや羽生結弦さんなど、喘息をコントロールしながら優秀な成績を残したアスリートは少なくありません。
発作を予防しながら、お子さんが好きな運動を続けられるよう、上手にサポートしてあげてください。
【参考情報】『気管支喘息児と運動、学校体育について』日本小児アレルギー学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspaci1987/15/3/15_3_263/_pdf
2−2.掃除にあたっての注意
幼稚園や保育園によっては、園児にハタキ掛けや雑巾がけなどの掃除をさせるところがあります。
喘息のお子さんは、ホコリを吸い込んで発作が起こることがあるので、掃除で体調が悪くなるようでしたら、「掃除のときはマスクをつける」「水くみなどホコリがたたない仕事を担当する」などの配慮を園にお願いしてみましょう。
ウサギなどの生き物を飼育している園もありますが、動物の毛やフンが引き金となって発作が起こることがあるので、掃除やエサやりなどの当番からは外してもらった方が安心でしょう。
3.遠足やお泊りなどの行事は事前に内容を確認
普段は喘息の症状をコントロールできているお子さんも、遠足や運動会などの行事では、いつもとは違う環境や疲れから思わぬ発作を起こすことがあります。
行事の前には、あらかじめ主治医や担任の先生と情報を共有し、準備を進めていきましょう。
遠足の前には、行先やスケジュールを確認しておきましょう。動物園や工場見学など毛やホコリが多い場所、稲刈りの後の脱穀やパン作り体験など、細かい屑や粉が舞う状況で発作が誘発されることがあります。
例えば、「動物園では、小動物に直接触れるコーナーには入れないでください」など、お子さんに合った対処法を担任の先生に伝え、発作を防ぎましょう。
花火やキャンプファイヤー、焼き芋、たき火、バーベキューなどの煙で発作が誘発される恐れもあります。
【参考情報】『Managing your asthma at firework displays』Asthma + Lung UK
https://www.asthma.org.uk/advice/living-with-asthma/seasonal-celebrations/bonfire-night/
できればその間は室内で過ごすのが望ましいのですが、お子さんの気持ちを考えると難しいこともあるかもしれません。
そのような場合は、「マスクを着ける」「少し離れた風上から見学する」などの対処でしのげるかどうか、主治医や担任の先生と相談してください。
年長さんになると、お泊りの行事もあるでしょう。参加にあたっては、内容を確認し、主治医の指示を仰いでください。気管支拡張薬は必ず処方してもらい、発作時の対応を書いたしたメモを担任の先生に渡しておきましょう。
4.呼吸器の感染症を予防しましょう
幼稚園や保育園での集団生活が始まると、風邪やインフルエンザなどさまざまな感染症にかかることが多くなります。特に入園当初は、慣れない環境で疲労が重なり、しょっちゅう風邪をひくお子さんもいるでしょう。
風邪を予防するには、手洗いやうがいをすることが基本です。小さいうちは上手にできないかもしれませんが、手洗いやうがいの大切さを繰り返し伝え、習慣化できるようにしましょう。
喘息のお子さんは、呼吸器の感染症にかかると症状が悪化する恐れがあるので、インフルエンザの予防接種を受けておきましょう。ただし、ワクチンには卵の成分が含まれているため、卵アレルギーのあるお子さんは主治医に相談してください。
【参考情報】『保育所におけるアレルギー対応ガイドライン 』日本小児科医会
https://www.jpa-web.org/dcms_media/other/%EF%BC%88%E5%88%A5%E6%B7%BB%EF%BC%92%EF%BC%89%E4%BF%9D%E8%82%B2%E6%89%80%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%EF%BC%882019%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%89%88%EF%BC%89.pdf
5.おわりに
小さい子どもは自分で症状を伝えることが難しく、また、遊びを中断するのが嫌で、少しくらい苦しくても我慢してしまうことがあります。
家庭で発作が起こったり、「いつもより元気がない」など、お子さんの体調が心配なサインがある時は、先生に伝えておきましょう。
また、年長さんになったら、苦しいときには我慢しないで先生に伝えるよう、お子さんに教えておきましょう。
子どもは日々成長します。年齢とともに体力がつき、症状が落ち着いてくることも多いので、園の先生や主治医と連携をとりながら、適切に対応していきましょう。