喘息の咳はうつる?うつらない?
新型コロナウイルス感染症の流行を機に、「咳エチケット」や「感染対策」という言葉が世間一般にも広く認知されるようになりました。
今やマスクをして外出することが当たり前となり、ショッピングセンターや飲食店などにも速乾性手指消毒剤(アルコール消毒剤)が常備されています。
ソーシャルディスタンスという考え方も重要視され、人混みを避けるという考え方が一般的となりました。
病院や医療機関、医療従事者の間では、以前からこれらの感染対策が一般的であったのですが、それが世間にも認知され、実践されるようになったのは大きな進歩です。
しかし、その一方で問題となるのが、咳に対する誤解と偏見です。
もちろん、咳に含まれる飛沫にはウイルスや細菌が含まれている場合があり、常に咳エチケットを守る必要があることは言うまでもありません。
しかし、咳でうつる病気とうつらない病気があることも事実で、「咳をしている人はうつる病気を持っているのではないか?」と決めつけるのは早計です。
そこでこの記事では、咳ではうつらない病気のひとつである気管支喘息の咳と、うつる病気である感染症の咳について解説していきます。
1.喘息の咳の特徴
喘息は、空気の通り道である気道(気管支)に慢性的な炎症が起こり、健康な人なら問題のないちょっとした刺激に対しても反応して発作が起きる病気です。
喘息の発作が起こると、激しい咳や痰のほか、呼吸困難や胸(心臓周辺)の痛みが出ることもあります。
発作が起きていない時でも、常に気道に炎症が起きているため、咳などの症状が出やすくなっています。
喘息は、アレルギーやストレスが原因となり発症する病気です。感染症ではないので、どんなに激しい咳が出ても、人にうつることはありません。
【参考情報】『喘息の特徴は?』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/check.html
◆「喘息、アレルギー、疲労、メンタルと食事の関係について」>>
2.感染症の咳の特徴
風邪やインフルエンザなど、ウイルスや細菌、その他病原性微生物が喉や気道などに感染して起こる病気を総称して呼吸器感染症と呼びます。
感染した細菌やウイルスによって症状や重篤度は異なりますが、基本的には咳やくしゃみ、鼻水、発熱など、風邪に似た症状が出現します。
呼吸器感染症で出る咳やくしゃみなどの“しぶき”には、大量のウイルスや細菌が含まれます。そのため、患者さんが咳をするとウイルスや細菌が飛散し、それを別の人が吸い込むことで飛沫感染が起こります。
だからこそ、感染を拡大させないための咳エチケットが重要なのです。
咳やくしゃみをする際に口と鼻を覆うことは、今では当たり前になりましたが、常にしっかりとマスクをすること、そして手洗いうがいの徹底が必要です。
◆「喘息発作やウイルス感染を予防する、マスクの付け方と選び方」>>
環境中に存在するウイルスや細菌を体内に入れないためには、正しい手洗いをすることが大切です。
アルコールによる消毒だけではなく、、石鹸と流水による手洗いを徹底するように心がけましょう。
【参考情報】『咳エチケット』東京都感染症情報センター
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/flu/cover-cough/
3.喘息と感染症の咳は違う
3−1.喘息の咳
喘息の咳には、以下のような特徴があります。
●熱や喉の痛みなどの症状がないのに咳や痰が続く
●「ゼーゼー・ヒューヒュー」という喘鳴と呼ばれる呼吸音がある
●夜間や早朝など決まった時間になると咳が出る
●タバコの煙やハウスダストなどに反応して咳が出る
喘息は感染症とは違い、咳をしたからといって病気が広がることはありません。
しかし、放っておくと重症化して命にかかわる発作を起こすことがあるため、早めの治療が必要です。
3−2.感染症の咳
一方、発熱や喉の痛みが伴う咳は、感染症の可能性が高くなります。その場合、咳が出るたびにウイルスや細菌が外に飛んでいき、病気がどんどん広がっていきます。
症状が軽く、風邪だと思われるときは、なるべく安静にしていれば1週間程度で咳は治まります。インフルエンザやマイコプラズマ肺炎など、風邪より症状が強い病気は、病院を受診して原因がわかれば、抗ウイルス薬や抗菌薬を投与して治療します。
原因に応じた治療を進めていくことで咳は減っていきますが、ほかの人に病気をうつすことを防ぐため、咳が出ている間はなるべく人込みを避け、自宅で過ごすのが望ましいです。
【参考情報】『Learn About Cough』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/warning-signs-of-lung-disease/cough/learn-about-cough
4.おわりに
喘息以外にも、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺がんなど、咳が出ても人にうつらない病気はたくさんあります。
自分の咳が喘息によるものか、感染症によるものか判断できずに不安な時は、呼吸器内科を受診して原因を調べておくと安心です。