肺性心について
肺の病気の影響により、心臓に異常が生じることを“肺性心”といいます。
肺性心が進行すると、右心不全になります。
1.原因
肺や肺血管の障害、胸郭変形(ろっ骨など胸部の骨の変形)などにより、肺に血液を送る心臓(右心系)に負担がかかると、心臓の病気が引き起こされます。
一般的に、肺の影響を受けない左心疾患や生まれつきの心疾患には当てはまりません。
肺性心の原因となる代表的な病気として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎(ILD)、肺高血圧症があります。
1-1.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
肺性心の原因として最も多いのが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。
COPDになると低酸素状態になり、肺の血管が収縮します。肺の血管が収縮すると、血液を送り出す力が多く必要になるので、血圧が高くなります。
肺高血圧症が進行すると、心臓に負担がかかり、右心不全につながります。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
1-2.間質性肺炎(ILO)
間質性肺炎(ILO)とは、肺の間質に炎症が起こる病気です。
肺の間質に炎症が起こると、肺が厚く硬くなり、肺の血圧の上昇につながります。
原因不明で発症する“特発性肺繊維症”(IPF)が代表で、10%程度が肺高血圧症を合併し、重症例では30~60%が合併します。
1-3.肺高血圧症
肺高血圧症とは、心臓から肺につながる血管の血圧が高くなる病気です。
血圧が高いということは、血液を送り出す力が多く必要なので、その分心臓に負担がかかります。
その結果、心臓が働きすぎて大きくなり、負担に耐えられなくなると右心不全になります。
【参考情報】『Pulmonary hypertension』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pulmonary-hypertension/symptoms-causes/syc-20350697
2.症状
肺性心になると、体を動かすときに必要な心拍出量(心臓が動いて送り出す血液の量)が少なくなります。したがって、体を動かしたときに呼吸困難や倦怠感が生じます。
重症になると、胸痛や失神なども生じます。
進行して右心不全になると、肝臓の肥大、胸水・腹水、足や顔面のむくみなどが生じます。
3.検査
胸部レントゲン検査により、心臓の大きさや肺に影がないかを確認します。
肺高血圧症では、心臓が大きくなります。
呼吸機能検査により、COPDかどうかを確認します。
心電図や心臓の超音波検査により、心臓に異常がないかを確認します。
右心カテーテル検査により、肺の血圧を測定します。
肺性心の原因や状態を確認するために、特に重要となる検査です。
4.治療
肺性心の治療でもっとも重要なことは、原因となった呼吸器疾患を治療することです。
COPDや間質性肺疾患の方は、それぞれの程度に合わせて薬物療法、酸素治療、リハビリテーションなどを行います。
肺高血圧症では、肺血管拡張薬などを使用します。
低酸素血症がある場合は、程度により酸素療法を行います。
呼吸機能や低酸素血症を改善することにより、心臓の負担が軽減され、肺性心の改善につながります。
重症な右心不全の場合は、強心薬を使用します。薬物療法でも改善できない場合は、人工肺や心臓・肺移植をすることもあります。
また、肺性心の原因にかかわらず、安静を保ち、食事を減塩にして心臓の負担を減らします。
【参考資料】『新・呼吸器専門内科医テキスト』日本呼吸器学会/南江堂
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/?fbclid=IwAR3HXKhqiuker_02pE5wPuZPmoAa9Rg-6-g_RgcRMak8rjaAOvIDxZIXIMs
5.おわりに
肺性心は、放っておくと右心不全が起こり、死につながる病気です。
COPDなどの持病がある方は適切な治療を受けることが大切です。
息苦しさや倦怠感など気になる症状がある場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。