睡眠時無呼吸症候群の検査について
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に無呼吸や低呼吸になることを繰り返す病気です。
肥満が原因になることが多いのですが、あごの骨格やアデノイド肥大、心臓の病気が原因となることもあります。
この病気を放っておくと、睡眠の質量が低下するだけではなく、心筋梗塞など命にかかわる病気になったり、昼間の猛烈な眠気により交通事故を起こしてしまう恐れがあります。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の診断から検査までの流れを説明していきます。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群を疑う3つのサイン
睡眠時無呼吸症候群を疑うサインとして、「いびき」「昼間の眠気」「起床時の疲れや頭痛」があります。
1−1.いびき
いびきは誰でも出ることがありますが、毎日のように出ていたり、一緒に寝ている人が眠れなくなるほどうるさいのなら、何らかの病気が潜んでいる可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群では、いびきが続いたのち、数十秒の間いびきが止まり、その後苦しそうな呼吸をすることがあります。
1−2.昼間の眠気
昼間の眠気は、夜に熟睡できないために起こります。睡眠時無呼吸症候群になると、本人は気づいていなくても、呼吸が止まるたびに何度も夜中に覚醒しています。そのため睡眠不足となり、日中にウトウトしてしまうのです。
運転をする仕事をしている方は、居眠り運転に注意が必要です。実際に、睡眠時無呼吸症候群による交通死亡事故も発生しています。
1−3.起床時の疲れや頭痛
朝起きた時に疲れや頭痛がある人は、寝ている間に無呼吸を繰り返すことにより、体が低酸素状態になっている可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群の頭痛は、起床時に生じ・30分以内に治まる・1か月に15日以上発生する、といった特徴があります。
頭痛がひどくて病院を受診したら、睡眠時無呼吸症候群だと診断された方も少なくありません。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html#:~:text=PSG%E3%81%AB%E3%81%A6%E3%80%811%E6%99%82%E9%96%93,%E3%82%92%E9%87%8D%E7%97%87%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82>
2.放っておくとどうなる?
「いびき」「昼間の眠気」「起床時の疲れや頭痛」は、「よくあること」「大したことではない」と思われがちな症状なので、病気だと自覚するのは難しいかもしれません。
しかし、毎晩のように無呼吸を繰り返しているうちに、体が酸素不足になり、心臓や血管、脳に負担がかかっていきます。すると、心筋梗塞、高血圧、脳卒中などの合併症が現れる恐れがあります。
心当たりのある方は、眠気を評価するエプワース眠気尺度(ESS)という自己診断表でチェックすることもできます。
11点以上だと、睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いので、早めに病院を受診しましょう。10点以下でも、いびきや昼間の眠気、起床時の疲れや頭痛がある方は、念のため病院を受診することをおすすめします。
【参考情報】『Epworth sleepiness scale(ESS)』SASnet
https://www.kaimin-life.jp/ess.html
3.睡眠時無呼吸症候群の検査
病気の疑いがあれば、睡眠中の呼吸状態などを調べる検査を行います。
3−1.問診
病院では、日中の眠気や集中力の低下、頭痛、いびきなど具体的な症状とともに、患者さんの年齢や体型、病歴などをお尋ねします。
一緒に寝ている家族やパートナーは、患者さんの睡眠時の状況を客観的に説明することができるので、受診時に同伴してもらうと診断の役に立ちます。
3−2.簡易検査
問診で病気の疑いがあれば、簡易検査を行います。
簡易検査では、アプノモニターという小型の装置を自宅に持ち帰り、血液中の酸素濃度やいびき、呼吸の状態を調べるセンサーを装着して一晩〜二晩眠り、データをとります。
検査結果は、睡眠時に呼吸が止まったり、浅くなったりする回数(無呼吸低呼吸指数:AHI)という指標を基に見ていきます。
AHIが5(1時間に5回)以上の場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。また、5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症と分類して、治療計画を立てていきます。
簡易検査で、明らかに重症だと判断されたら、精密検査をせずに治療を開始することもあります。
3−3.精密検査
簡易検査の結果、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと判断されたら、ポリソムノグラフィー(PSG)という精密検査を行います。
ポリソムノグラフィーでは、体にたくさんのセンサーをつけて一晩眠ることで、脳波や心電図など、より多くの項目をチェックすることができます。
3−4.その他の検査
鼻やのどの異常により無呼吸状態が発生している可能性がある場合は、内視鏡やX線で口腔内・のどの検査を行うこともあります。
また、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、40〜50代の肥満体型の男性に多いことがわかっています。
当てはまる人は、高血圧や脂質異常症(高脂血症)、糖尿病などの有無を調べるため、血液検査や尿検査など基本的な生活習慣病の検査を併せて行うことがあります。
【参考情報】『Interactions Between Obesity and Obstructive Sleep Apnea』National Center for Biotechnology Information
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3021364/
4.おわりに
「いびきがひどくなった」「どれだけ寝ても眠い」「寝起きにボーッとしてだるい」などの症状は、疲れやストレスによるものと思われがちです。しかし、その背景には睡眠時無呼吸症候群という病気が潜んでいる恐れもあるので、早期の診断・治療が大切です。
診断された場合は、CPAPなどの治療を行うことで、重症化を防ぐことができますので、このような睡眠時の症状が続いている人は、早めに呼吸器内科を受診してください。