睡眠時無呼吸症候群の重症度がわかる指標「AHI」について
睡眠時無呼吸症候群は、症状の度合いにより「軽症」「中等症」「重症」に分けられ、診断では重症度を測る指標「AHI」が用いられます。
この記事では、AHIについて詳しく解説します。
1.睡眠時無呼吸症候群の検査と診断
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に空気の通り道である気道が狭くなり、一時的な無呼吸状態や低酸素状態が引き起こされる病気です。
この病気になると、睡眠の質や量が低下するのはもちろん、頭痛や日中の眠気、倦怠感が現れることがあります。
また、無呼吸により体内の酸素濃度が低くなることが続くと、脳卒中や心筋梗塞などの大きな病気を引き起こす恐れもあります。
この病気は、患者さん自身も無自覚であることが多く、頭痛や眠気、抑うつなど、過労やストレスによっても起こる症状を訴える方が少なくありません。
専門医は患者さんの訴えを聞きながら、生活リズムの変化、年齢や体形、既往歴(病歴)などを確認していきます。
問診で睡眠時無呼吸症候群を疑ったら、簡易検査やポリソムノグラフィー(PSG)という精密検査で、睡眠中の呼吸状態の評価を行っていきます。
これらの検査で、呼吸が止まったり、浅くなったりする回数が、1時間に5回以上認められた場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。この際に使用する指標が、AHIです。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html#:~:text=PSG%E3%81%AB%E3%81%A6%E3%80%811%E6%99%82%E9%96%93,%E3%82%92%E9%87%8D%E7%97%87%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82>
2.AHI(無呼吸低呼吸指数)とは
AHIとは、睡眠1時間あたりの無呼吸および低呼吸の合計回数を指します。ちなみに低呼吸とは、動脈血酸素飽和度が約3%以上低下しているか、覚醒を伴う症状のことを言います。
AHIが5以上(呼吸が止まったり、浅くなったりする回数が1時間に5回以上)だと睡眠時無呼吸症候群と診断し、5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症とします。
重症度によって、治療の方法が変わってきます。軽症の患者さんは、肥満を解消したり、生活習慣を整えることで症状が改善することもありますが、中等症や重症の患者さんは、より積極的な治療が必要となります。
中等症以上の睡眠時無呼吸症候群を8年間放置すると、死亡率が約37%になるという報告もあります。
【参考情報】『Mortality and Apnea Index in Obstructive Sleep Apnea: Experience in 385 Male Patients』J He, M H Kryger, F J Zorick, W Conway and T Roth
http://www.files.e-shops.co.il/multisites/sites/3305/articles/Paper-9.pdf
しかし、適切な治療を行っていびきや無呼吸が改善すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが、健康な人と同程度まで抑えられるようになります。
3.病気を改善する生活習慣
治療を開始したら、AHIの数値が5以下になることを目指していきます。
医師から肥満を指摘された患者さんは、食事と運動を見直して減量しましょう。減量に成功するといびきが減ったり、軽度のうちなら治療がいらなくなることもあります。
寝酒や睡眠薬は筋肉の緊張を緩めるため、寝ている間に気道が狭くなり、無呼吸を悪化させる恐れがあります。タバコも気道の炎症を引き起こすため、禁煙が望ましいです。
4.おわりに
睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放っておくと、居眠り運転のリスクが高いと判断され、運転免許証の交付や更新を拒否されることもあります。
いびきや日中の眠気、起床時の頭痛など、忙しい毎日の中では見過ごしてしまうような小さな変化かもしれません。しかし、長い目で考えると、健康を維持していくためには、症状が軽いうちに、早めに問題を解決することが一番です。
専門医であれば、生活の変化、患者さんの訴えの中から病気を疑うことも可能です。体調の変化や日中の眠気を感じているという方は、お気軽にご相談ください。