睡眠時無呼吸症候群の治療に使う「マウスピース」とは?
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に何度も呼吸が止まったり、浅くなる病気です。初期には、いびき、睡眠の質の低下、日中の眠気や頭痛などの症状が現れます。
さらに、無呼吸により体が低酸素状態になることで心臓や血管に負担がかかるため、治療せずに放っておくと、脳卒中や心筋梗塞を招くこともある恐ろしい病気です。
この記事では、代表的な3つの治療法を紹介し、特にマウスピースについて詳しく解説します。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群・3つの治療法
睡眠時無呼吸症候群の治療では、寝ている間に空気の通り道である気道が塞がるのを防ぐため、CPAP(シーパップ)、ASV、マウスピースなどの装置を用います。
1−1.CPAP(シーパップ)
最も代表的な治療法です。寝る前に鼻にマスクを装着し、専用の装置から空気を送り込んで気道を広げ、無呼吸を防ぎます。
【参考情報】『CPAP(シーパップ)とはどのような治療法ですか?』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q32.html#:~:text=CPAP%EF%BC%88%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%97%EF%BC%9A%E6%8C%81%E7%B6%9A%E9%99%BD%E5%9C%A7,%E9%81%A9%E7%94%A8%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
1−2.ASV(Adaptive servoventilation)
ASVは、もともとは慢性心不全の患者さんの呼吸困難感を改善するために開発された、マスク式の人工呼吸器です。
CPAPと同じように、鼻から空気を送り込むことで、睡眠時の無呼吸を防止します。
1−3.マウスピース
歯列矯正などに使用されるマウスピースと同じような歯型の装置です。スリープスプリントとも呼ばれます。
就寝時に口の中に入れて装着すると、寝ている間に下あごが前に出て、舌がのどの奥に落ちづらくなることで、舌の位置が上がって気道が広がり、空気が通りやすくなります。
また、装着することで口呼吸がしづらくなるため、鼻呼吸習慣の助けになります。
【参考記事】『マウスピース』無呼吸なおそう/TEIJIN
https://659naoso.com/medical/treatment/mouthpiece
2.マウスピースのメリット・デメリット
マウスピースのメリットとしては、「CPAPやASVより小さいので携帯に便利」、「装着しても目立たない」、「装着時のストレスが少ない」ことがあります。
デメリットとしては、歯や口腔内の健康状態によっては装着できないこと、そして、マウスピースだけでは、重症の患者さんの睡眠時無呼吸症候群を十分に改善することは難しいことが挙げられます。
睡眠時無呼吸症候群の治療でマウスピースを使うには、以下のような条件があります。
・歯周病や虫歯がない
・歯が上下合わせて20本ぐらいある
・下の歯を上の歯より8ミリ以上前に出せる
マウスピースは歯科で作成しますが、その前に呼吸器内科などで検査を受け、睡眠時無呼吸症候群と診断される必要があります。
また、マウスピースの種類には、上下顎一体型と上下顎分離型の2種類があります。
上下顎一体型は、保険適用で費用負担が1~2万円程で作ることが可能で、上下顎分離型と比べ小さいサイズですが、圧迫感を感じやすいなどのデメリットがあります。
上下顎分離型は、微調整ができ使用感がよいですが、保険適用外のため費用負担が大きく、サイズが大きいため目立つといったデメリットがあります。
それぞれにメリット、デメリットがあるので作成時に歯科で相談しましょう。
重症の患者さんでも、どうしてもCPAPやASVが合わない人にはマウスピースを勧めることがあります。また、普段はCPAPやASVを使っている患者さんが、旅行や出張の時にだけ、携帯に便利なマウスピースを使うこともあります。
マウスピースは、毎日起床後に水で洗ってください。歯磨き剤で磨くと、中に含まれる研磨剤で傷つくことがあるので避けてください。また、熱湯で消毒すると変形してしまう恐れがあります。しっかり汚れを落としたいときは、専用の洗浄剤を使うと安心です。
【参考記事】『Mouthpieces and Dental Devices』American Sleep Apnea Association
https://www.sleepassociation.org/sleep-apnea/mouthpieces/
3.おわりに
マウスピースは、CPAPやASVより手軽に用いることができますが、歯や口腔内が健康でないと装着できません。また、重症の患者さんの症状を改善するには、効果的な治療法とは言えません。
睡眠時無呼吸症候群と診断されても、重症度や健康状態によってはマウスピースでの治療が向いていないこともあるので、医師の判断に従って適切な治療法を選んでください。
治療とともに、肥満や生活習慣を改善する取り組みも大切です。医師や看護師、栄養士と協力して食生活を見直し、生活のリズムを整えていきましょう。