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睡眠時無呼吸症候群と糖尿病の関係について

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年04月20日

睡眠時無呼吸症候群患者の糖尿病合併率は、軽症患者は2.8%、重症患者は14.7%との報告があり、重症になるほど合併率が高まることがわかります。

【参考資料】Am J Respir Crit Med 2005;172:1590-1595
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16192452/

また、別の研究では、糖尿病患者のうち72%が睡眠時無呼吸症候群を合併していたとの報告がありました。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と糖尿病の関係性について解説します。

1.睡眠時無呼吸症候群と糖尿病の基礎知識

ここでは、それぞれの病気について簡単に紹介します。

1−1.糖尿病とは

糖尿病とは、インスリンというホルモンが不足したり、はたらきが悪くなることにより、高血糖状態が続く病気です。

原因として、食べ過ぎ、肥満、運動不足、遺伝などがあります。

高血糖状態が続くと、血液がドロドロになり、血管に負担がかかります。

その結果、以下のような合併症が引き起こされることがあります。

・糖尿病性網膜症:目の血管が傷つくことで、失明の危険があります。
・糖尿病性腎症:腎不全になり、人工透析が必要になります。
・糖尿病性神経障害:手足のしびれや顔面麻痺、壊疽の危険があります。

初期症状として「のどの渇き」が現れることがありますが、自覚症状がない場合も多いです。ほかに、高血糖の影響で、尿の頻度の増加、体重の減少、疲れやすいといった症状があります。また、意識障害を引き起こすこともあります。

◆「糖尿病」について詳しく>>

1−2.睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に無呼吸や低呼吸になることを繰り返す病気です。

この病気の原因は、肥満体型、顎が小さい、飲酒、睡眠薬の服用、首が短い、扁桃肥大、歯並びが悪い、などが挙げられます。

無呼吸や低呼吸を繰り返していると、体に必要な酸素を十分に取り入れることができないため、低酸素状態に陥ります。

そして、毎晩のように低酸素状態が続くことで、血管や心臓など全身に悪影響が及びます。

その結果、高血圧や脂質異常症、糖尿病などさまざまな合併症が現れ、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気が引き起こされることがあります。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっと詳しく」>>

2.睡眠時無呼吸症候群を放置すると糖尿病になりやすい


血糖値を下げるはたらきを持つホルモン・インスリンは、睡眠不足が続くとはたらきが悪くなります。

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、病気の影響で熟睡できず、本人に自覚はなくても睡眠不足になりがちです。そのため、インスリンのはたらきが悪くなり、血糖値が下がりにくくなります。

アメリカのシカゴ大学の研究によれば、一日の睡眠時間を4時間に制限することを1週間続けると、糖尿病の初期と同じ程度の高血糖になったという結果も報告されています。

【参考資料】「図解 睡眠時無呼吸症候群を治す!最新治療と正しい知識」白濱龍太郎 日東書院
https://tg-net.co.jp/tatsumi_book/8439/

一方で、糖尿病患者が睡眠時無呼吸症候群の治療を始めたらインスリンの反応が改善し、血糖コントロールがよくなったとの報告もあります。

【参考資料】「こんなに怖い 図解 睡眠時無呼吸症候群」白濱龍太郎 日東書院
https://tg-net.co.jp/tatsumi_book/8045/

◆「あなたの危険度チェック」>>

3.睡眠時無呼吸症候群の治療

病院では医師が問診を行い、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると判断した場合、簡易検査を行います。

簡易検査の結果、睡眠時無呼吸症候群と診断されると、治療には、CPAP(シーパップ)など睡眠中の呼吸をサポートする装置を用います。

◆「CPAP」とは?>>

同時に、肥満体型の人は減量する、寝酒を控えるなど、生活習慣の見直しも行っていきます。

◆「飲酒」との関連>>

◆「肥満」との関連について>>

4.糖尿病の治療

糖尿病治療の基本は食事療法です。

血糖値をコントロールするためには、ご飯や甘いものなどの糖質を控え、肉や魚などのたんぱく質を積極的に摂ることが大切です。

食べる順番によっても血糖値の上がり具合が変わるので、野菜やおかずから先に食べ、ご飯は後半に食べましょう。

また、食後にウォーキングなど軽い運動をすると血糖値が下がりやすくなります。

筋肉量が多いとインスリンのはたらきも高まるので、エスカレーターではなく階段を使うなど、普段から体を動かすようにしましょう。

糖尿病の程度によっては、飲み薬やインスリン注射を使用します。

軽度の2型糖尿病の場合は、食事療法のみで血糖値をコントロールできる方もいますが、難しい場合は薬を服用します。

薬を服用しても、治療の基本は食事療法なので、普段の食事をコントロールすることが大切です。

◆「糖尿病になったら知っておきたい食事のポイント」>>

4.おわりに

睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放っておくと、糖尿病を合併しやすくなります。

また、既に糖尿病と診断されている人は、症状が悪化しやすくなります。

糖尿病の人で、「いびき」「昼間の眠気」がある人は、睡眠時無呼吸症候群の検査ができる病院を受診しておくと安心です。

もし、睡眠時無呼吸症候群と診断されたら、治療により血糖値が改善できる可能性があります。

◆「当院の睡眠時無呼吸症候群治療について」>>

◆「当院の糖尿病治療について」>>

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