実は怖い!睡眠時無呼吸症候群の合併症とは?
睡眠時無呼吸症候群になると、何度も呼吸が妨げられることで睡眠不足になるだけではなく、全身にさまざまな合併症が現れることがあります。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の合併症について解説します。放っておくと命にかかわる病気になったり、治療が難しくなる可能性もあるので、思い当たる方はぜひチェックしてください。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に一時的に呼吸が止まることを繰り返す病気です。
1−1.原因
睡眠時無呼吸症候群には、空気の通り道である気道が狭くなるために発生する閉塞型、呼吸を調整する脳の働きが原因となる中枢型、これら両方が関与する混合型に分けられます。
患者の大部分は閉塞型であり、中でも肥満により気道に脂肪がついて狭くなり、睡眠中の呼吸がしにくくなった方が多いです。
【参考情報】『e-ヘルスネット』厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-026.html
1−2.症状
睡眠時無呼吸症候群の症状には、以下のようなものがあります。
・激しいいびき
・夜間に何度も目が覚める
・頭痛
・倦怠感
上記の症状があっても、疲れやストレス、加齢のせいだと思い込み、病気だと気づかない人がほとんどです。
そのため、家族に「いびきがうるさい」などと指摘されても、大したことではないと考え、検査や治療を受ける気持ちにはならないかもしれません。
しかし、この病気の本当の恐ろしさは、いびきや疲れというありきたりな症状にあるのではなく、何度も無呼吸状態を繰り返しているうちに、重篤な合併症を起こす危険が高まることなのです。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群/MSDマニュアル』MSD
https://www.msdmanuals.com
2.合併症について
睡眠時無呼吸症候群の合併症は、「体の酸素不足による症状」と「睡眠不足による症状」に分けることができます。
体の酸素不足による症状としては、心筋梗塞や脳卒中など、突然死を招く病気が筆頭に挙げられます。
睡眠不足による症状としては、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高くなったり、うつ病などの精神疾患が悪化することがあります。
2−1. 不整脈
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、無呼吸時に脈が遅くなる「徐脈」と、脈が速くなる「頻脈」を繰り返します。動悸、息切れ、疲労感を伴う心房細動も不整脈の1つです。
心房がうまく収縮できずに心不全や、血栓ができて脳梗塞を引き起こす恐れがあります。
2−2.心筋梗塞
睡眠時に呼吸が止まると血圧が低下するため、体は血圧を上げようとします。
このような血圧の低下と上昇を毎日繰り返していると、心臓や血管に負担がかかり、心筋梗塞や心不全などの心血管疾患が引き起こされることがあります。
2−3.脳卒中(脳出血・くも膜下出血・脳梗塞)
睡眠中に無呼吸になり、体が低酸素状態になることを繰り返していると、血管がダメージを受けて次第に硬くなっていきます。
すると、血管が詰まったり破れやすくなるため、脳出血やくも膜下出血、脳梗塞などの症状が出る恐れがあります。
2−4.生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)
無呼吸により体が低酸素状態になることで血管がダメージを受けることに併せ、睡眠不足によるストレスで血糖値やコレステロール値が高くなることで、さまざまな生活習慣病が発症しやすくなります。
また、既に高血圧や糖尿病を発症している人は、悪化しやすくなります。
2−5.認知症
睡眠時無呼吸症候群が、アルツハイマー型老人性認知症を発症する危険因子である可能性を示唆する報告があります。
【参考情報】『Obstructive Sleep Apnea Severity Affects Amyloid Burden in Cognitively Normal Elderly. A Longitudinal Study』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29125327/
原因ははっきり分かってはいませんが、睡眠中の低酸素状態に加え、何度も睡眠が中断されることによって、脳の部位や神経細胞がダメージを受けるせいではないかと考えられています。
2−6.精神疾患(うつ病・不安障害など)
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、うつ病などの精神疾患を発症するリスクが高いという報告もあります。
また、睡眠時無呼吸症候群と精神疾患を併発する患者さんも多くみられます。
3.おわりに
頭痛や疲れなどの症状が続いている人や、家族から「いびきがうるさい」と指摘された人も、まさか自分が睡眠時無呼吸症候群だとは思わないかもしれません
しかし、もし睡眠時無呼吸症候群だった場合、治療せずに放っておくと、心筋梗塞や脳卒中により帰らぬ人となったり、命を取り留めても麻痺などの後遺症が残る可能性があります。
一見「大したことはない」症状の裏で、日に日に血管がダメージを受け続け、重い病気のリスクが高まっていくところが、この病気の恐ろしいところです。
激しいいびきや日中の眠気、原因不明の倦怠感などが続いている人は、早めに呼吸器内科を受診して専門医にご相談ください。