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アレルギー性の咳は、市販薬でよくなるの?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年09月02日

咳が長引いていて、なかなかよくならない場合、アレルギーが原因かもしれません。

咳が止まらなくてつらいとき、ドラッグストアなどで咳止め薬を購入して使うこともあると思いますが、アレルギーが原因で咳が出ている場合、風邪などの感染症の咳とは違う対応が必要となります。

この記事では、アレルギーが原因で咳が出る病気と、市販薬を使用する場合の注意点を解説します。咳で困っている人は、ぜひ読んでください。

1.アレルギーとは何か


人間の体には、細菌やウイルスなどの異物から身を守るための仕組み「免疫」が備わっています。

この免疫の仕組みが、何らかの原因により、本来は害のないものまで攻撃してしまうことがあります。

すると、咳や鼻水、皮膚のかゆみ、眼のかゆみなどの症状が引き起こされます。これを「アレルギー反応」といいます。

【参考情報】『アレルギーとは』アレルギーポータル|日本アレルギー学会
https://allergyportal.jp/knowledge/about/

◆「アレルギー」について詳しく>>

2.アレルギーで咳が出る病気

アレルギーが原因で咳が出る病気には、以下のようなものがあります。

2−1.喘息

喘息とは、鼻や口から肺までの空気の通り道である気道が慢性的に炎症を起こすことで、激しい咳が出たり、呼吸が苦しくなる病気です。

喘息は、アレルギーが原因のものと、過労やストレスなどアレルギー以外の原因によるものがあります。

アレルギーの喘息では、ダニやホコリ、ペットの毛などを吸い込むと、炎症により過敏になった気道の粘膜が反応して咳が出ます。

◆「喘息」について詳しく>>

◆「ストレスと喘息」について詳しく>>

2−2.花粉症


花粉症とは、スギやヒノキなど特定の植物の花粉が鼻や目の粘膜に触れることにより、アレルギー症状を起こす病気です。

くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど鼻の症状と、目のかゆみ、充血、涙など目の症状が特徴ですが、のどがイガイガして咳が出ることもあります。

◆「花粉症」について詳しく>>

2−3.アトピー咳嗽


アトピー咳嗽(がいそう)とは、のどのイガイガ・ムズムズがあり、咳が出る病気です。

花粉症やアトピー性皮膚炎など、アレルギーによる病気を経験した人がなりやすく、特に中年女性に多い病気です。

◆「アトピー咳嗽」について詳しく>>

3.アレルギー以外の原因で咳が出る病気

アレルギー以外の病気で咳が出ることもあります。

3−1.呼吸器感染症による咳

風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの呼吸器感染症にかかると咳が出ます。

これらの感染症が治ったのに咳だけが残っていたり、特定の季節や時間になると咳が出る場合は、アレルギーの疑いがあります。

◆「インフルエンザ」について詳しく>>
◆「新型コロナウイルス」について詳しく>>

【参考情報】『Cold or allergy: Which is it?』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/common-cold/expert-answers/common-cold/faq-20057857

◆「風邪をひいた時の基礎知識・対処法・病院受診の目安」>>

3−2.感染症以外の呼吸器疾患による咳


COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺がんなど、感染症以外の呼吸器疾患でも咳が出ます。

痰がからみ「ゴホンゴホン」「ゲホゲホ」という濁った音の咳が続くときは、これらの病気を疑うことがあります。

◆「痰がからみ、咳が止まらない時に考えられる呼吸器の病気」>>

3−3.呼吸器疾患以外の病気による咳


胃食道逆流症や副鼻腔炎、心不全など呼吸器以外の病気や、ストレスや薬の副作用で咳が出ることもあります。

血管運動性鼻炎、俗に「寒暖差アレルギー」と呼ばれる病気でも、咳や鼻水、くしゃみなどが出ることがあります。

しかし、これはアレルギーではなく、急激な温度の変化により自律神経のバランスが崩れることで症状が出ると考えられています。

【参考情報】『血管運動性鼻炎』徳島県医師会
https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/902-2013-11-05-00-42-28

4.アレルギーの咳は市販薬で良くなるのか

風邪で咳が止まらなくてつらいとき、咳止め薬で一時的に症状を抑えて体力の消耗を防ぐことは問題ありません。

しかし、アレルギーが原因で咳が続いているときは、市販薬では効果が得られなかったり、かえって症状を悪化させる場合もあるので注意が必要です。

◆「咳止め薬の市販薬と処方薬の違いについて」>>

4−1.喘息の場合


喘息の咳は、市販薬ではよくなりません。症状を改善するためには、病院を受診して吸入ステロイド薬をはじめとする薬を処方してもらい、毎日服用する必要があります。

ステロイドは、副腎という身体の器官で作られるホルモンの一つで、強い抗炎症作用と免疫抑制作用があります。この作用を活かして作られたのがステロイド薬です。

市販の咳止め薬や風邪薬を使っても症状がよくならず、咳が2週間以上続いている場合は、呼吸器内科を受診して咳の原因を調べてください。

症状が改善しないにもかかわらず市販薬を飲み続けていると、喘息が悪化することもあります。

◆「喘息や咳喘息にベストな病院選び」>>

4−2.花粉症の場合


花粉症の市販薬は、鼻水やくしゃみを抑えるための抗アレルギー薬が一般的です。

しかし、抗アレルギー薬では咳を抑えることはできないため、咳を緩和したいときは、咳止め薬を使ってください。

咳止め薬を使う場合、抗アレルギー薬と一緒には使わないでください。
 
市販薬を使っても症状がよくならない場合は、症状に合わせて耳鼻科、眼科、呼吸器内科、アレルギー科などを受診してください。

花粉症の症状は、新型コロナウイルスに感染した時の症状と似ています。特に、微熱がある場合は花粉症と決めつけず、コロナも疑ってください。

◆「新型コロナウイルス感染症の咳の特徴」>>

4−3.アトピー咳嗽の場合


アトピー咳嗽の治療には、抗ヒスタミン薬やステロイドなど、病気の原因や重症度に対応した薬を使う必要があります。

抗ヒスタミン薬は、アレルギー症状を引き起こす体内の神経伝達物質の一つであるヒスタミンの働きを抑えることで症状を改善する薬です。

アレルギーによる病気を経験した人で、2週間以上咳が長引いていている人、市販薬を使っても症状がよくならない人は、病院を受診してください。

◆「咳が止まらない時は何科の病院に行けばよいか」>>

5.おわりに

咳は、気道に異物や刺激がある時に、それらを体から追い出すために起こる防御反応で、風邪による咳であれば1週間程でよくなっていきます。

しかし、咳が2週間以上続いている場合は、喘息をはじめとしたアレルギーか、COPDなどの呼吸器疾患であることが多いです。その場合、処方薬でしか治療できません。

市販薬を使っても咳がよくならないときは、呼吸器内科を受診して咳の原因を調べ、症状に合った薬を処方してもらってください。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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