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喫煙者は要注意!タバコで睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる理由

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年04月04日

タバコの煙に含まれる化学物質は、呼吸器疾患の原因になるだけではなく、睡眠の質を低下させる恐れがあります。

この記事では、喫煙により睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる理由や、喫煙が睡眠に与える影響について解説します。

1.睡眠時無呼吸症候群とは


睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。

代表的な症状はいびきや昼間の眠気ですが、寝汗をかいたり、夜中に頻尿になる人もいます。

この病気になりやすいのは、肥満体型の人、扁桃肥大がある人、加齢による筋力低下がある人、顎が小さい人などです。

また、生活習慣とも深い関連があり、タバコやアルコールを摂取する習慣がある人は、発症しやすいと考えられています。

◆「睡眠時無呼吸症候群」について詳しく>>

2.喫煙は睡眠の質や呼吸機能を低下させる


喫煙は、人体にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られています。ここでは、喫煙が睡眠や呼吸器系に与える影響と、タバコが原因で発症する可能性のある呼吸器疾患について説明します。

2−1.睡眠への影響

タバコの煙に含まれるニコチンには強い覚醒作用があるので、就寝前に喫煙すると睡眠の質が低下する恐れがあります。

寝る前に吸うと、寝付くのに時間がかかって眠りが浅くなったり、日中に眠気や倦怠感を感じることもあるでしょう。

ほかにも、夜中に目が覚めてしまったり、睡眠のリズムが乱れてしまうなど、喫煙により睡眠が妨げられることがわかっています。

【参考情報】『Sleep quality in cigarette smokers and nonsmokers: findings from the general population in central China』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6591832/#CR7

2−2.呼吸器系への影響

タバコの煙には、ニコチンをはじめとする化学物質が多く含まれています。これらを吸うと、気道が刺激され、咳が出やすくなります。

喫煙が習慣になると、刺激にさらされてきた気道が炎症を起こし、気道が狭くなります。すると、咳がひどくなったり痰が増えてきます。

さらに、肺を構成する器官である肺胞が破壊されると、肺胞周囲にある血管に動脈硬化が引き起こされます。

喫煙との関連が深い呼吸器疾患には、下記のようなものがあります。

・喘息
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・肺や咽頭、喉頭、鼻腔などのがん
・結核(死亡リスクが高まる)
・新型コロナウイルス感染症(重症化や死亡リスクが高まる)

◆「タバコで咳が出る理由と咳が長引くときに疑われる3つの病気」>>

タバコの煙には、タバコを吸う人が直接吸い込む「主流煙」と、周囲にいる人が吸い込む「副流煙」があります。

実は、副流煙は主流煙よりも多くの有害物質を含んでいます。そのため、吸っている本人だけではなく、周囲にいる家族や同僚にもマイナスの作用をもたらすのです。

加熱式タバコは、副流煙の発生が少なく、紙巻タバコに比べてにおいが少ないとの理由で、喫煙者の間で人気があります。

しかし、ニコチンなどの有害物質が含まれていることに変わりはありませんし、目に見えなくても、吐き出した呼気には有害物質が含まれています。

◆「紙巻タバコ(加熱式・電子)がもたらす健康被害」>>

肺や気管など呼吸に関する部位は、タバコの煙による影響を受けやすいため、喫煙によりさまざまな病気が引き起こされる可能性があるのです。

【参考情報】『喫煙と呼吸器疾患』厚生労働省e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-003.html

3.喫煙者は睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高い


喫煙により慢性的な炎症を起こした気道は、むくんで狭くなります。すると、空気の通りが妨げられ、無呼吸や低呼吸を起こしやすくなります。

そのため、喫煙者は非喫煙者に比べて、睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高まるのです。

喫煙と睡眠呼吸障害(睡眠中に異常呼吸が見られる病気の総称)との関連について調べた研究によれば、喫煙者は非喫煙者に比べて、AHI(無呼吸低呼吸指数)がおよそ2〜4倍高くなることがわかっています。

◆「AHI」について>>

喫煙は、特に重症の睡眠時無呼吸症候群と関連が深いとされており、睡眠時無呼吸症候群の患者さんに対しては、早期の禁煙が推奨されています。

【参考情報】『喫煙者は睡眠時無呼吸症候群(SAS)リスクが高い』無呼吸ラボ
https://mukokyu-lab.jp/factsheet/factsheet14.html

4.おわりに


喫煙は睡眠時無呼吸症候群を起こすリスクを高めるだけではなく、睡眠の質を低下させたり、さまざまな呼吸器疾患の原因になります。

喫煙者で睡眠の悩みを抱えている人は、禁煙によって睡眠時無呼吸症候群の症状が軽減し、睡眠の質を上げる効果が期待できます。

しかし、「禁煙したいけれど、どうすればよいのかわからない」「自己流で禁煙にチャレンジして失敗した」という人も多いのではないでしょうか。

禁煙は、我慢や努力という意志の力だけで成功させるのは難しい側面があります。確実に禁煙したいなら、医療の力を借りるのが早道です。

当院では禁煙治療、そして睡眠時無呼吸症候群の診断と治療を行っています。喫煙の習慣がある方、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は、お気軽にご相談ください。

◆当院の禁煙外来について>>

◆当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について>>

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