睡眠時無呼吸症候群は遺伝する?なりやすい体型と治療法について解説
睡眠時無呼吸症候群は、肥満の人や顎が小さい人に起こりやすい病気です。
体型や骨格は遺伝の影響を受けることがあります。そのため、「睡眠時無呼吸症候群は遺伝する病気なのでは?」と不安に感じる人もいるでしょう。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群は遺伝するのかどうかを解説し、治療法を紹介します。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まったり、浅くなったりする状態を繰り返す病気です。いびきや日中の眠気、起床時の頭痛などの症状が現れます。
睡眠時無呼吸症候群は、ポリソムノグラフィー(PSG)という検査で無呼吸低呼吸指数(AHI)を測定して判断します。AHIが5以上だと、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
2.睡眠時無呼吸症候群になりやすい体型とは
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、気道が狭くなったり、ふさがれたりすることで、無呼吸やいびきなどの症状が発生します。
2−1.肥満
肥満の人は、空気の通り道である気道の周りや舌に脂肪が蓄積しています。それらの脂肪に圧迫されて気道が狭くなったり、太くなった舌が気道をふさいだりするため、睡眠中の呼吸がしにくくなります。
特に、お腹周りに脂肪がつく内臓脂肪型肥満は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群の発症リスクを高めることがわかっています。
【参考情報】『CQ20.OSAと内臓脂肪』睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン(2020)
https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
2−2.あごが小さい
日本人は欧米人よりもあごが小さいため、やせていても睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい傾向があります。
あごが小さい人はもともと気道が狭いので、少しの体重増加でさらに狭くなり、症状が現れます。
【参考情報】『Craniofacial Phenotyping in Chinese and Caucasian Patients With Sleep Apnea: Influence of Ethnicity and Sex』Journal of Clinical Sleep Medicine
https://jcsm.aasm.org/doi/full/10.5664/jcsm.7212
3.肥満は遺伝するのか
肥満は、食習慣や運動習慣といった環境的な要因によるものが大きいのですが、遺伝的な要因もゼロではありません。
3−1.肥満の種類
肥満は、原因によって原発性肥満と二次性肥満に分類されます。
原発性肥満は、胃や腸などの臓器周囲に脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」と、皮下に脂肪が蓄積する「皮下脂肪型肥満」に分けられます。どちらも、主に生活習慣の乱れが原因です。
【参考情報】
『内臓脂肪型肥満』e-ヘルスネット |厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-051.html
『皮下脂肪型肥満』e-ヘルスネット |厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-054.html
一方、肥満の原因がホルモンや薬剤の影響、遺伝子異常など病気であることが明確なものを二次性肥満といいます。
3−3.肥満と遺伝子の関連
肥満の発症には、環境的な要因と遺伝的な要因の双方が関連しています。
原発性肥満は、糖質や脂質の過剰摂取、運動不足、過度なストレスといった、環境的な要因が大きく影響しています。
ただ、体重やBMIは多数の遺伝子の影響を受けることから、原発性肥満の発症には遺伝的な要因も関連していると考えられています。しかし、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。
遺伝性肥満は、特定の遺伝子を持つ人が発症するので、親から子へと遺伝する可能性があります。
【参考情報】『肥満に影響する遺伝マーカーを解明―日本人17万人の解析により肥満に関わる病気や細胞を同定―』国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
https://www.amed.go.jp/news/release_20170912-01.html
4.顎の骨格は遺伝するのか
顎の骨格は遺伝することがわかっており、睡眠時無呼吸症候群の人が多い家系では、顎や上気道の形が家族間で似ていることも明らかになっています。
しかし、顎の骨格には遺伝的な要因だけではなく、環境的な要因も大きく関わっています。たとえば、乳幼児期の指しゃぶりやうつぶせ寝などは、顎や顔の骨格、歯並びなどに影響を与えます。
【参考情報】『うつぶせ寝で育てられた小児の顎顔面形態に関する研究』小児歯科学雑誌1999年37号4巻P.695〜699
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspd1963/37/4/37_695/_pdf/-char/ja
5.睡眠時無呼吸症候群の原因が体型である場合の治療法
肥満のある睡眠時無呼吸症候群の患者さんに対して減量療法を行った研究では、体重の減少に伴って、AHIや日中の眠気が改善するといった結果が得られています。
ただし、減量だけで症状を軽減するのは難しいため、CPAP療法を併せて行う必要があります。
睡眠時無呼吸症候群の原因が顎の骨格である場合には、手術によって顎の位置を移動させ、顔面の骨格を広げる治療を行うことがあります。
しかし、骨を切る手術は体への負担が大きく、顔面の知覚異常や噛み合わせの異常といった合併症を起こす可能性があります。
まずは、CPAP療法やマウスピースによる治療などを行ったうえで、手術を希望する場合には、治療実績が豊富な医師に相談することが大切です。
【参考情報】『CQ.24OSAの減量療法』『CQ.28OSAの顎顔面形成術治療』睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン(2020)
https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
6.おわりに
睡眠時無呼吸症候群という病気そのものが遺伝することはありません。しかし、肥満や顎の小ささといった、病気を起こしやすい体型や骨格については遺伝する可能性があります。
しかし、「自分はこういう体型なのだから仕方ない」とあきらめて病気を放っておくのは危険です。症状が悪化して、心血管疾患のリスクが高まる恐れがあります。
家族やパートナーから「いびきがひどい」と指摘されたら、睡眠時無呼吸症候群の検査ができる病院を受診して相談してみましょう。
早めに治療を開始すると、気になる症状が緩和されて睡眠の質量が上がり、合併症を防ぐことができます。