睡眠時無呼吸症候群と飲酒の関連とは?症状が悪化する理由と飲酒時の注意点
寝る前にお酒を飲むと、いびきや無呼吸など睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化する恐れがあります。
しかし、お酒を飲むのが好きな人や、仕事の付き合いで飲酒の機会が多い人は、禁酒は難しいでしょう。
この記事では、飲酒によって睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化する理由と、飲酒の注意点について解説します。お酒を飲んだ後にいびきや無呼吸がひどくなる人は、ぜひ読んでください。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まったり、浅くなったりすることを繰り返す病気です。
代表的な症状には、激しいいびきや寝汗、起床時の頭痛、日中の眠気などがあります。
この病気は、肥満の人や顎が小さい人、扁桃腺が大きい人に起こりやすいのですが、生活習慣とも関連があります。
特に、飲酒や喫煙の習慣がある人は、悪化の原因になっている可能性があります。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群/SAS』厚生労働省e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-026.html
2.飲酒と睡眠の関係
飲酒と睡眠には深い関係があり、適度な飲酒にはリラックス効果があることが知られています。
実際、寝る前にお酒を飲むと「寝つきがよくなった」「よく眠れるようになった」と感じる人は多いでしょう。
しかし、アルコールを摂取すると、寝付くまでの時間は短くなるのですが、時間の経過とともに眠りが浅くなっていくため、睡眠の質が低下してしまいます。
例えば、夜中に何度も目が覚めて寝付けなくなったり、朝早く目が覚めてしまったりして熟睡できないことがあります。
さらに、寝酒の習慣がある人は、アルコールを摂取しないと寝付けなくなったり、「夜中に目が覚めないように」とアルコールの摂取量が増えていき、不眠症やアルコール依存症につながる可能性があります。
【参考情報】
『アルコールの作用』厚生労働省e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-003.html
『Alcohol consumption and sleep quality: a community-based study』Cambridge Core
https://www.cambridge.org/core/journals/public-health-nutrition/article/alcohol-consumption-and-sleep-quality-a-communitybased-study/C8A260D7730877B32FA1CAA47116D619
3.飲酒で症状が悪化する理由
アルコールには、筋肉を緩める作用や神経の活動を抑える作用があります。そのため、寝る前にお酒を飲むと、睡眠中に気道の筋肉がゆるんで、舌が気道側に落ち込みやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群の人は、もともと健康な人より気道が狭くなっています。さらに、飲酒で気道の筋肉がゆるむと、さらに空気の通り道が狭くなり、いびきや無呼吸が激しくなります。
◆「そのいびき、睡眠時無呼吸症候群のせいかもしれません」>>
また、アルコールを摂取した後に眠ると、睡眠中の動脈血酸素飽和度(SPO2)の平均値や最低値が低下し、SPO2 90%未満の時間が長くなります。
SPO2の正常値は96〜98%であるため、飲酒により就寝中、長時間酸欠状態に陥っていることが推測されます。
睡眠中に低酸素状態が長く続くと、頭痛や眠気、疲労感などの症状につながるだけではなく、循環器疾患や脳血管疾患といった合併症のリスクが高まるため、大変危険です。
【参考情報】『飲酒が睡眠時の呼吸障害と脈拍数に及ぼす影響』産業衛生学雑誌48巻(2006)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/48/Special/48_KJ00004429987/_pdf
4.無呼吸が続くと心臓病のリスクが高まることも
睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする状態が続くと、脈拍数や血圧が上昇して動脈硬化の原因になります。
動脈硬化が進むと、就寝中に不整脈や狭心症、心筋梗塞を起こしやすくなり、突然死の原因になることがわかっています。
特に、飲酒後にすぐ眠ると、心筋の酸素消費量と供給量のバランスが崩れがちで、心臓により負担がかかりやすくなります。
【参考情報】『自律神経と不整脈 閉塞性睡眠時無呼吸症候群における不整脈発生と 自律神経の関係』心電図:日本心電学会誌vol.36no.1(2016)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jse/36/1/36_55/_pdf/-char/ja
5.飲酒時に気をつけてほしいこと
睡眠時無呼吸症候群の人やその疑いがある人は、病院で適切な治療を受けるとともに、飲酒の量やタイミングを見直しましょう。
5−1.飲酒の時間とタイミング
アルコールが体外へ排出される時間には個人差がありますが、就寝の4時間前までには飲酒を終えておくのが理想的です。
しかし、仕事の付き合いなどで、やむを得ず遅い時間にお酒を飲むこともあるでしょう。そのような場合は、量を控えめにしたり、消化の良いメニューとともにお酒を楽しみましょう。
5−2.飲酒の量や頻度
飲酒量は、ビールなら中瓶1本、チューハイなら350ml1缶程度を目安とします。男性に比べてアルコールの分解が遅い傾向にある女性や、65歳以上の人は、さらに量を減らすと安心です。
寝酒をしないと眠れない人は、睡眠薬の服用も検討しましょう。ただし、睡眠薬の種類によっては、無呼吸やいびきなど睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させてしまう危険があるため、主治医に相談して薬を処方してもらいましょう。
6.おわりに
睡眠時無呼吸症候群になると「夜中に目が覚める」「熟睡した感じがしない」など眠りの質が低下します。すると、ますますお酒の力を借りて、寝つきをよくしたいと思うかもしれません。
しかし、寝酒はさらに症状を悪化させるので、睡眠時無呼吸症候群の患者さんやその疑いがある人は、飲酒の量やタイミングに気を付けて、いびきや動脈硬化など症状の悪化を防ぎましょう。