喘息のタイプ~原因別・年齢別
喘息は、気道に炎症が生じることによって起こる病気ですが、気道の炎症が起きる原因については、完全には解明されていません。
ただ、その多くはアレルギー反応やウイルス感染が原因と考えられています。
1.喘息の原因には2つのタイプがある
喘息には、アレルギーが原因の「アトピー型喘息」と、アレルギー以外の原因による「非アトピー型喘息」があります。
1−1.アトピー型喘息
ハウスダストやダニなど、特定の物質が原因で発症する喘息を「アトピー型喘息」といいます。
小児患者では大半の70〜90%が、成人患者では30%ほどが、このアトピー型喘息だといわれています。
【参考情報】『気管支喘息の疫学』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-07-0001.pdf
私たちが普段生活している場所には、目に見えないさまざまな菌やウイルスが繁殖しています。それらの異物(=アレルゲン)から体を守るため、人間には「免疫」という防御システムが備わっています。
ところが、この免疫システムがなんらかの異常をきたすと、体にさまざまな炎症を引き起こします。これが「アレルギー反応」です。
アレルギー反応が気道で起こるとアトピー型喘息になりますし、皮膚に起こればアトピー性皮膚炎、鼻で起こるとアレルギー性鼻炎になります。
<アレルゲンの種類>
アトピー型喘息を引き起こすとされているアレルゲンは、「吸入性アレルゲン」、「食物性アレルゲン」、「接触性アレルゲン」に分けることができます。
気道の炎症を引き起こすアレルゲンは、検査で調べることができます。原因となるアレルゲンを避けるのはもちろんのこと、家の中や身の回りを清潔に保つことで、症状が改善する可能性が高まります。
1−2.非アトピー型喘息
アレルギーが原因ではない喘息を、「非アトピー型喘息」といいます。原因としては、以下のようなものが考えられます。
中でも多いのが、ウイルス感染によるものです。風邪やインフルエンザにかかったことがきっかけで咳が止まらなくなり、次第に本格的な喘息になってしまうことがあります。
帰宅時の手洗いやうがい、流行時のマスク着用など基本的な生活習慣を守って感染を予防しましょう。
最近の研究では、非アトピー型喘息は肥満と深いかかわりがあることがわかっています。ちなみに日本では、BMI25以上を肥満といいます。
【参考情報】『肥満と健康』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html
肥満の人は、脂肪が多い分気道が狭くなり、肺に入る空気の量が少なくなってしまいます。さらに、脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンが、炎症を強くすることも原因となっています。
【参考文献】『Serum levels of adiponectin and leptin in asthmatic patients and its relation with asthma severity, lung function and BMI』Elsevier
https://www.elsevier.es/en-revista-allergologia-et-immunopathologia-105-articulo-serum-levels-adiponectin-leptin-in-S0301054616301549
非アトピー型喘息は、特に中高年の方に多くみられますが、肥満を解消することで症状が改善する可能性があります。
2.子どもの喘息と大人の喘息の違い
子どもと大人の喘息には、異なる特徴がいくつかあります。
「気道の炎症」という基本的な症状は同じですが、肺や気管支の成熟度の違いや、喫煙などのリスクにより、治りやすさが変わってきます。
2−1.小児喘息
小児喘息の患者さんのうち、2~3歳までに60~70%が、6歳までに80%以上が発症するとされています。
【参考情報】『成人喘息の疫学、診断、治療と保健指導、患者教育』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-07.pdf
家族にアレルギー体質の人がいると高い確率で発症し、アトピー性皮膚炎や他のアレルギー疾患を合併するケースが目立ちます。
小児喘息患者の約7割が肺の成長とともに症状も落ち着き、寛解(長時間症状がでない状態)に至ります。
しかし、一度寛解したとしても、過労やストレス、感染症などが誘因となり、大人になってからまた発症してしまうこともあるので注意が必要です。
子どもの気管や気管支は細く柔らかいので、痰などの分泌物が多くなりがちです。そのため、ちょっとした刺激でも気管が狭まり、喘鳴が起きやすくなっています。
発作は1、2日で治まることが多いのですが、1年に何回も起こることも多いです。急な冷え込み、寒さ、雨などにより、発作の頻度が高くなります。
発作の初期段階(軽い喘鳴等)を正しく察知し、早めに対応してひどくならないように対処することが大切です。
2−2.成人喘息
成人喘息は、小児喘息と比べて、非アトピー型が多いことが大きな特徴です。
小児喘息を大人になっても持ち越した人や、小児ぜんそくが再発したケースもありますが、過労やストレスの積み重ねで体が弱ったところに、風邪などに感染したことが引き金となり、40歳以降に初めて発症するケースが多いです。
女性の場合、生理前や生理中に症状が悪化することもあります。
非アトピー型は原因がはっきりしないうえ、大人は生活の忙しさから治療がおろそかになりがちです。
また、喘息の悪化原因となる煙草やアルコールとの接触が多くなることから、小児と比べて慢性化および重症化しやすいというリスクがあります。
職業上接触しなければならない物質が原因で起こる喘息もあります。代表例として、製パン業者の小麦粉、製麺業者のそば粉、製材業者の米杉やラワンが挙げられます。
鎮解熱鎮痛剤などに配合されているアスピリンを服用して起こる「アスピリン喘息」も、中年以降に発症することが多いです。
アスピリン喘息は急速に症状が悪化し、時には意識障害をきたすほどの大発作になることがあります。呼吸困難に加え、鼻詰まりが強くなったり、嗅覚の異常が起こったりなどの疑わしい症状が出てきたら、すぐに病院を受診してください。
3.おわりに
喘息の原因はやタイプはそれぞれですが、タバコの煙やストレスを避け、家の中を清潔に保つことが大事なのは共通です。
定期的な受診・治療を続けることはもちろん、生活習慣をしっかりと見直して、症状の悪化を防ぎましょう。