喘息の人がタバコを吸うと、なぜ症状が悪化するのか
タバコは、喘息をはじめとした呼吸器疾患の症状を悪化させます。
しかし、タバコが体に良くないと分かっていても、なかなかやめられないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、タバコを吸い続けることによる喘息への影響を説明するとともに、禁煙の方法についても紹介します。
喘息の方はもちろん、禁煙の一歩が踏み出せない方も、タバコの影響について一緒に考えていきましょう。
目次
1.喘息の人がタバコを吸ってはいけない理由
喘息患者の気道には、慢性的な炎症が起こっており、少しの刺激でも敏感に反応してしまう状態にあります。
治療により症状が出なくなると、つい「治ったのかな?」と思ってしまいますが、症状が出ていない時でも、炎症はずっと続いているのです。
喘息患者さんは、症状の有無にかかわらず、気道に慢性的な炎症があることを自覚し、気道への刺激を少なくすることで、発作を防ぐことを治療の目標としましょう。
発作を引き起こす要因には、ダニなどのアレルゲンや冷たい空気など、さまざまな種類がありますが、そのうちのひとつがタバコです。
タバコには、たくさんの化学物質が含まれており、体によくない有害物質も多く含まれています。中でもニコチンには、強い毒性や依存性があると言われています。
【参考情報】『ニコチン』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-034.html
タバコの有害物質に反応すると、もともと気道にあった炎症はさらに悪化し、ますます気道が過敏になっていきます。
【参考情報】『喫煙と呼吸器疾患』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-003.html
すると、わずかな刺激でも喘息の発作が起こるようになり、発作が増えるにつれ、気道の炎症も進行していきます。
2.喫煙者が周囲に与えるリスク
タバコの煙には、喫煙者本人が吸い込む主流煙と、タバコの先から出る煙である副流煙があります。
どちらにも多くの化学物質が含まれていますが、吸っている本人よりも周りの人が吸ってしまいがちな副流煙の方が、より多くの有害物質を含んでいると言われています。
【参考情報】『副流煙』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-044.html
また、タバコのにおいや喫煙者が吐く息にも有害物質が含まれているので、そちらも周囲の人に影響を与えます。
【参考情報】『Asthma and Secondhand Smoke』CDC
https://www.cdc.gov/tobacco/campaign/tips/diseases/secondhand-smoke-asthma.html
タバコを吸わない方も、家族や職場などに吸っている人がいれば注意が必要です。
3.喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のオーバーラップ
長期間タバコを吸い続けていると、COPD(慢性閉塞性肺疾患)を発症する恐れがあります。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
COPDは、タバコをはじめとした化学物質による長期間の刺激により、気道や肺が障害される病気です。
COPDになると、慢性的な咳や痰、息苦しさが現れます。重症化すると、「まるで溺れているように苦しい」と訴える患者さんもいるほど、その症状はつらいものです。
さらに、COPDに加え、喘息まで発症すると、呼吸状態はますます悪化して、治療も難しくなります。
喘息に加えCOPDを発症することを「喘息とCOPDのオーバーラップ(asthma and COPD overlap:ACO)」と呼び、予後が悪いとされています。
COPDになっても、最初は気づかないことが多いので、いつのまにか喘息と合併していることがあるのが恐ろしいところです。
【参考情報】『喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き2018』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20170105152906.html
4.おすすめの禁煙方法
自分のために、そして周囲のためにも禁煙が大切だと、あらためて理解していただけたのではないでしょうか。
そこで、具体的な禁煙方法を紹介するので試してみてください。禁煙にチャレンジする際は、タバコを「少しずつ減らす」のではなく、「一気にやめる」と成功しやすくなります。
4−1.吸ってしまう原因を考え、対策を行う
みなさんは、どのような時にタバコを吸いたくなるのでしょうか。
例えば、飲み会で吸いたくなるという人は、飲みに行かないというのも一つの案です。もし、飲みに行くのであれば、タバコを吸いたくなったタイミングで、冷水を飲むという方法もあります。
禁煙の第一歩として、「いつ」「どんな場合に」自分がタバコを吸いたくなるのかを考えてみましょう。そして、そのような場所や機会を避ける対策を行います。
そのうえで、家庭や職場で禁煙宣言をすれば、周りが喫煙を制御してくれるかもしれません。
4−2.タバコの代わりになるものを口にする
タバコを吸いたくなったら、ガムや飴、タブレットを食べて、気持ちを落ち着かせます。
もし、食べ物の糖分が気になる場合は、運動を行うのもおすすめです。運動には、喫煙したいという気持ちやイライラを和らげる精神的な効果と、喫煙の機会を減らすという物理的な効果があります。
4−3.禁煙補助薬を使用する
ニコチンパッチやニコチンガムなど、禁煙補助薬を使ってみる方法もあります。
タバコがやめられない原因のひとつに、ニコチンへの強い依存があります。ニコチンパッチやニコチンガムを使用すれば、体の中にあるニコチンの量をコントロールして、徐々にタバコを減らしていくことができます。
4−4.禁煙外来に通う
自力で禁煙する自信がない方や、確実に禁煙したい方、早く禁煙に成功したいという方は、禁煙外来を受診してみましょう。
禁煙外来では、医師の専門的なアドバイスを受けながら、自分に合った方法で治療を進めていくことができます。
また、市販の禁煙補助薬より効果が高い、医療用の禁煙補助薬を使うことで、離脱症状を和らげることもできます。
【参考情報】『禁煙治療ってどんなもの?』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-007.html
5.おわりに
喘息の人は、タバコをやめないと症状が悪化して、発作に苦しむ恐れがあります。
さらに、COPDを発症すると、少しの動作でも息苦しさを感じ、思うように体が動かない状態になります。
つらい状態を防ぐには、やはり禁煙が一番です。とはいえ、禁煙はそう簡単ではありません。
禁煙にチャレンジしたけどうまくいかなかった人や、医師のアドバイスを受けたい人は、禁煙外来を受診してみてください。
一人で何とかしようと無理をせず、上手に専門家の力を借りて、禁煙を成功させましょう。