喘息治療に使う吸入器「ネブライザー」の種類と使い方
喘息の患者さんのうち、特に乳幼児は「ネブライザー」という吸入器を使うことが多いでしょう。
病院だけではなく、家庭でも使うことができますし、小さな子でも薬が服用しやすくなるというメリットがあります。
この記事では、ネブライザーの基本的な種類や使い方、メリット・デメリットをお伝えしていきます。
お子さんが吸入を嫌がる場合の工夫も紹介しますので、ぜひ読んでください。
目次
1.ネブライザーとは何か
ネブライザーとは、液体の薬を細かい霧状にして、気管支や肺に届けるための医療機器です。
薬液が霧状になると、呼吸をするだけで自然に吸入できるので、薬をうまく飲むことができない乳幼児や高齢者に便利です。
医療機関でも用い、患者さんに貸し出してくれるところもあります。また、家庭用の製品も販売されています。
【参考情報】『What is a nebuliser?』Asthma + Lung UK
https://www.blf.org.uk/support-for-you/nebulisers/what-is-it
2.ネブライザーの種類と特徴
ネブライザーには、3つのタイプがあります。以下、それぞれの基本的な特徴を説明します。
2−1.ジェット式
圧縮した空気の力で薬液を吸い上げ、霧状にします。3種類の中で。もっともスタンダードなタイプです。
ほとんどの薬剤で使用することができ、お手入れが簡単なのが魅力です。
しかし、空気を圧縮する時の音が大きいので、夜間や早朝に使用する際は、周囲への配慮が必要かもしれません。
2−2.超音波式
超音波の力で薬剤を振動させ、霧状にします。
大型でパワーが強く、長時間の吸入にも対応できます。医療機関でもよく使われています。
ただ、大型なので、持ち運びには適していません。また、薬剤によっては使用できないこともあります。
2−3.メッシュ式
超音波で薬剤を振動させた後、機器の内部にあるメッシュ(細かい穴)から押し出して霧状にします。
小型で軽量なので、持ち運びに便利です。また、寝ながら吸入できるので、体調が悪くて起き上がるのがしんどいときでも使えます。音も静かです。
ただ、薬剤によっては、メッシュ式だと使用できないことがあります。
製品によっては、毎回メッシュを変えることができます。衛生面が気になる方には、そこもメリットとなるでしょう。
【参考情報】『ネブライザーについて』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/feature03.html
3.吸入口の種類
ネブライザーの吸入口は、2種類あります。
3−1.マウスピース
口にくわえて使用します。太いストローを使うような感覚で薬剤を吸い込んでいきます。
3−2.マスク
口と鼻を覆い、呼吸とともに薬剤を吸入します。マウスピースをくわえることができない方や、唾液が吐き出せない方に使われます。特に、乳幼児はマスクの方が効果的に吸入できます。
4.ネブライザーの使い方
ネブライザーの使い方は、以下の通りです。
①1回分の薬液をよく振り、ネブライザーのボトルに入れます。
②ネブライザーの電源をつけ、薬液が噴射しているのを確認してから口に当てます。
③ゆっくり呼吸しながら、薬液を吸入します。
・マウスピースの場合は、鼻呼吸になっていないことを確認します。また、吸入中に唾液がボトル内に逆流しないように、唾液が溜まったら吐き出すようにしましょう。
・マスクの場合は、顔から離れてないか確認します。
④ボトル内に薬剤がなくなれば、吸入終了です。
・マスクの場合は、顔をタオルで拭きましょう。
⑤うがいをします。難しい場合は水を飲むのもいいでしょう。
・気管支拡張薬だと必要ありませんが、ステロイドの場合は必要です。
・うがいが難しければ、水を飲んでください。
【参考情報】『【大気環境・ぜん息などの情報館】正しい吸入方法を身につけよう1/6 ネブライザーの使い方』環境再生保全機構公式動画チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=KeJtbCJETqY
ただし、自宅での吸入については、誤った使用による症状悪化を防ぐため、自己判断で行わず医師の指示に従って行いましょう。
特に子どもの吸入中は、呼吸の様子や顔色を観察し、苦しそうにしていたり、吐き気や頭痛などがあったりする時は吸入をやめ、ひどい発作や頻回の発作がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
また、ネブライザーは、常に清潔に保ち使用することが重要です。
5.子どもがうまく吸うための工夫
ネブライザーは、小さなお子さんでも服薬できるというメリットがあります。
しかし、吸入に時間がかかると、途中で飽きてしまうことがあります。また、音や振動におびえてしまうお子さんもいます。
もし、お子さんが吸入を嫌がる場合は、以下の方法を試してみてください。
5−1.カバーをつける
ネブライザーに、お子さんが好きなキャラクターの絵がついたカバーをつけてみましょう。
ネブライザーは、子どもにとって見慣れないものであり、怖くて近寄りがたい印象があるかもしれません。少しでも抵抗をなくし、スムーズに吸入できるような演出をしてみましょう。
5−2.遊びながら吸入する
吸入時間は、子どもにとっては長く感じられるので、じっと座っているのは難しいかもしれません。
座りながら遊ぶことができるおもちゃや絵本、動画を用意して、飽きさせない工夫をしてみましょう。
5−3.シールで達成感を与える
チェック表を用意し、吸入ができたらシールを貼る方法もあります。
「できた」という事実が目に見えることで、吸入への自信や達成感が持てる可能性があります。
【参考情報】『シールを強化子とした幼児の吸入行動の強化』石舘美弥子|日本大学大学院総合社会情報研究科
https://gssc.dld.nihon-u.ac.jp/wp-content/uploads/journal/pdf07/7-419-430-ishidate.pdf
5−4.食用エッセンスを入れる
薬剤に、いちごやバニラなどの食用エッセンスを数滴入れると、甘い香りが楽しめて、お子さんが喜ぶかもしれません。
薬剤にエッセンスを入れても、効果効能に影響はありません。ただし、量が多いとかえって変な味になるので注意しましょう。
【参考情報】『芳香剤添加ネブライザーにおける噴霧後溶液の薬剤安定性』耳鼻咽喉科展望 47 : 補1;9~13,2004
https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo1958/47/Supplement1/47_Supplement1_9/_pdf/-char/ja
6.おわりに
ネブライザーを使うと、乳幼児でも簡単に服薬できるというメリットがあります。しかし、家庭用に購入する際は、1万円程度の費用がかかります。
初めて使用する際は、可能なら病院で貸し出してもらい、使用感を確認してみましょう。その後、必要だと感じたら、家庭用の購入を検討しましょう。
小児喘息は大人の喘息とは違い、寛解(ほとんど症状がでない状態)を目指すことが可能です。
お子さんが吸入を嫌がると、親もくじけそうになるかもしれませんが、根気よく治療を続け、症状を改善していきましょう。