新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」の特徴と効果、副作用
ゾコーバは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に用いる飲み薬です。
同じコロナの治療薬であるラゲブリオやパキロビッドは、高齢者や持病のある方など、基本的には重症化リスクのある患者さんに処方する薬ですが、ゾコーバは重症化リスクのない患者さんにも処方できます。
この記事では、ゾコーバの使い方や効果、副作用などについて解説します。初めて飲む方や服用に不安がある方は、ぜひ読んでください。
1.ゾコーバとはどのような薬か
2022年11月に緊急承認されたゾコーバは「エンシトレルビルフマル酸」という抗ウイルス薬です。
コロナが発症してから3日(72時間)以内に服用すると、主な症状である鼻水や鼻詰まり、のどの痛み、咳、発熱、倦怠感が出る期間を1日(24時間)短縮できるとされます。
【参考情報】『Efficacy and safety of ensitrelvir in patients with mild-to-moderate COVID-19: the phase 2b part of a randomized, placebo-controlled, phase 2/3 study』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36477182/
また、投与の対象となるのは「12歳以上」とされているので、小さなお子さんは使えません。
ゾコーバは、コロナウイルスが作られるのに必要な酵素の働きの邪魔をし、ウイルスが体内で増えるのを抑制します。
コロナに感染した人のうち「高熱または咳・のどの痛み等の症状が強い」患者さんに用いられます。
ラゲブリオやパキロビッドなどのコロナ治療薬は、基本的には重症化のリスクのある患者さんのみが使える薬ですが、ゾコーバは重症化リスクのない患者さんでも使うことができるのが特徴です。
重症化リスクは低くても、つらい症状に苦しんでいる人が、少しでも早く症状を改善したいという声に応えることができる薬です。
2. ゾコーバの用法・用量
ゾコーバは「1日1回」「24時間ごとに」内服し、計「5日間」続けて服用します。
多くの薬は、1回につき1錠など毎回同じ量を服用しますが、ゾコーバの飲み方は少し特殊です。
具体的には、まず1日目に「3錠(375mg)」を飲み、その後、2日目〜5日目には「1錠(125mg)」を飲みます。
ゾコーバの血中濃度を目標値まで上げるために、1日目だけ多く飲む必要があります。
3. ゾコーバの副作用
最も多い副作用は「高比重リポタンパク質(HDL)の減少」です。ただし、これは一過性の症状であると言われています。
HDLとは、俗に「善玉コレステロール」とも言われ、体内で増えすぎたコレステロールを回収して肝臓に戻す働きを持つ脂質の仲間です。
減少すると動脈硬化のリスクが上がりますが、ゾコーバの副作用で減少した場合はすぐに元に戻るので、そんなに心配はいりません。
ゾコーバは副作用の少ない薬ですが、まれに息苦しさや発疹、かゆみ、嘔吐、下痢、頭痛、浮腫といったアレルギーのような副作用が現れることがあります。
現在のところ、重篤な副作用は報告されていませんが、新しい薬のため情報が少なく、ここに記載されていない副作用が現れる可能性があります。服用後に少しでも気になることがあれば、速やかに主治医に相談してください。
4.使用上の注意点
先にも述べましたが、ゾコーバは1日目は3錠、それ以降(2−5日目)は1錠と、1日目だけ内服する錠剤の量が異なります。服用量を間違えないように注意してください。
ゾコーバは症状が現れてから3日(72時間)以内に飲み始めないと、効果が期待できない薬です。処方されたら、その日からすぐに飲み始めてください。
内服中に症状が改善して体調がよくなると「もう飲まなくていいかな?」という気持ちになるかもしれません。
しかし、途中でやめてしまうと、薬が持つ本来の効果が得られない可能性があるので、必ず5日間、最後まで飲み切るようにしてください。
ゾコーバは、併用する薬の効果に影響を与える場合があります。持病などで、ほかの薬が欠かせない方は、医師・薬剤師に必ず相談してください。お薬手帳を持参すると、相談時に役立ちます。
妊婦はゾコーバを飲んではいけません。動物実験では、胎児への悪影響や流産などが認められています。妊娠している可能性のある方も、使わないようにしましょう。授乳も赤ちゃんに悪い影響が出る恐れがあるので、ゾコーバ服用中はやめておきましょう。
【参考情報】『ゾコーバ錠の妊娠に関する注意喚起の実施について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001068201.pdf
5.ゾコーバの薬価
ゾコーバの薬価(2024年8月調べ)は、以下となります。
・ゾコーバ125mg:7407.4円/錠(5日分:51851.8円)
ゾコーバの代わりとなるジェネリック医薬品や市販薬はありません。
2023年5月、新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく「5類相当」に該当する新興感染症に分類されました。
基本的には、5類の感染症には自己負担が求められるのですが、政府の特例措置により、コロナ治療薬の代金には公費の支援がありました。
しかし、2024年3月で公費による支援は終了し、4月から医療費の窓口負担割合に応じ、ゾコーバが処方された場合、最大約15,000円の自己負担が生じることとなりました。
【参考情報】『令和6年4月からの治療薬の費用について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001219096.pdf
6.おわりに
ゾコーバと同じような、コロナの治療に使う抗ウイルス薬には、以下のようなものがあります。
・ベクルリー
コロナは、決して甘くみていい病気ではありませんが、ほとんどの患者さんは風邪と同じような症状で終わり、薬を飲まなくても治る人も多いです。
しかし、症状がつらくて苦しいときは、ゾコーバのような治療薬を服用できないかどうか、医師に相談してください。