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睡眠時無呼吸症候群の影響で、寝ている間にしびれが起きる理由

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年08月09日

正座をしたときや、体が冷えたときに、手足がしびれてしまうことはよくあります。

このような場合は心配ないことが多いのですが、夜間、就寝中にしびれを感じることがよくあるなら、睡眠時無呼吸症候群のせいかもしれません。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群としびれの関係や、寝ている間のしびれの原因について説明していきます。

夜中にしびれで目が覚める人や、起きた時に手足の違和感がある人は、ぜひ参考にしてください。

1.睡眠時無呼吸症候群とは


睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が浅くなったり止まったりすることを繰り返す病気です。肥満の人や、あごが小さい人に多い病気ですが、神経や心臓の異常で起こることもあります。

この病気になると、大きないびきや日中の眠気、集中力の低下などの症状が現れます。さらに、睡眠中の酸素不足や自律神経の乱れから、心血管疾患や生活習慣病を合併しやすくなります。

治療をせずに放っておくと、最悪の場合、寝ている間に心筋梗塞や脳梗塞を起こし、そのまま死に至ることもあります。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっと詳しく>>

2.しびれが引き起こされる理由


睡眠時無呼吸症候群という病気そのものが、しびれの原因となることはまずありません。しかし、以下のような合併症があると、しびれが現れる可能性があります。

 ・自律神経の乱れ
 ・高血圧
 ・糖尿病
 ・脳梗塞

睡眠時無呼吸症候群の合併症は、初期症状が分かりにくいため、気づいたときにはかなり進んでいることも少なくありません。

一方、上記の病気を診断された後に、実は睡眠時無呼吸症候群が隠れていたことが発覚する場合もあります。

◆「合併症」について詳しく>>

3.合併症としびれの関係


以下、合併症としびれの関係について説明していきます。

3-1.自律神経の乱れ

病気のせいで、呼吸が妨げられ熟睡できずにいると、睡眠のリズムが崩れてしまいます。すると、自律神経が乱れ、本来は昼間に活動する交感神経が夜間も働くようになります。

夜中に交感神経が活発になると、全身に力が入り、筋肉が緊張します。その結果、毛細血管が影響を受けて血行不良となり、しびれが現れることがあります。

【参考情報】『睡眠関連呼吸障害と自律神経障害』第71回日本自律神経学会総会/ シンポジウム9 / 睡眠と自律神経
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ans/57/1/57_67/_pdf

3-2.高血圧

病気の影響で、夜中に交感神経が活発になると、夜間の血圧が高くなります。

高血圧になっても、初期のうちは、ほとんど症状が自覚できません。しかし、進行すると、頭痛やめまい、吐き気などの症状が出てきます。

さらに症状が悪化すると、手足のしびれや脱力感、動悸などが現れてきます。

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、降圧剤を服用しても血圧が下がらない「治療抵抗性高血圧」を併発しやすいとされています。

高血圧の治療をしていても、血圧のコントロールがうまくいかない人は、睡眠時無呼吸症候群の症状があるかどうか、確認してみてください。

◆「高血圧との関係」について>>

3-3.糖尿病

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、重症になればなるほど、糖尿病を併発しやすくなります。

糖尿病により、血糖値が高くなると、血液がドロドロの状態になり、手先や足先の血流が悪くなります。併せて、神経の働きにも影響が出ることで、しびれが現れます。

糖尿病のしびれは、手足の片方だけではなく、左右対称に症状が出る場合が多いです。

【参考情報】『神経障害』糖尿病情報センター
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/060/01.html

◆「糖尿病」との関係について>>

3-4.脳梗塞

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、寝ている間に呼吸が止まることで、体に必要な酸素が十分に取り込めなくなります。

その結果、心臓や血管、脳に負担がかかり、動脈硬化が進むことで、脳梗塞を併発しやすくなります。

脳梗塞になると、手足のしびれの他にも、「言葉がうまく話せない」「手足の片方だけが麻痺する」などの症状が現れます。

このような症状が出たら、「すぐに」「迷わず」救急外来を受診してください。

【参考情報】『脳血管障害・脳卒中』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-006.html

◆「脳梗塞」との関係について>>

4.寝ている間のしびれ~その他の原因


睡眠時無呼吸症候群以外にも、寝ている間にしびれが起こる原因はあります。

4-1.寝ている時の姿勢

「腕に頭をのせて寝た」「狭い場所で寝返りが打てなかった」など、寝ている間の姿勢が原因で神経が圧迫され、しびれが現れることがあります。

このようなしびれは、起床後、時間とともに消えていきますが、長引く場合は整形外科を受診してください。

4-2.神経の異常

以下のような病気でも、神経が圧迫されることで、睡眠中にしびれが現れることがあります。

 ・手根管症候群:手指のしびれ
 ・椎間板ヘルニア:足のしびれ
 ・脊柱管狭窄症:足腰のしびれ
 ・胸郭出口症候群:首や肩、腕のしびれ

これらの病気では、しびれのほかにも、痛みや歩き方の変化などの症状も出てきます。

【参考情報】『手根管症候群』日本臨床整形学会
https://jcoa.gr.jp/%E6%89%8B%E6%A0%B9%E7%AE%A1%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4/

5.睡眠中のしびれが気になるときは


しびれの他、以下の症状があれば、睡眠時無呼吸症候群による合併症としてしびれが現れている可能性があるため、呼吸器内科を受診しましょう。

 ・激しいいびき
 ・昼間の眠気
 ・起床時の頭痛

上記の症状がなく、しびれだけが続いている場合は、整形外科や神経内科を受診してみましょう。

【参考情報】・『しびれの原因となる主な病気』日本神経学会
https://neurology-jp.org/public/disease/shibire_detail.html#s_01

・『Numbness』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/21015-numbness

6.おわりに

合併症が原因でしびれが起きている場合、睡眠時無呼吸症候群の治療を始めると、症状が改善する可能性があります。

また、睡眠の質が向上するので、「目覚めがよくなった」「仕事に集中できるようになった」と感じる人も多いです。

しびれの原因は多岐にわたりますが、「夜中に何度も目が覚める」「寝ても疲れがとれない」と感じているなら、病気が原因で睡眠のリズムが崩れているのかもしれません。

特に肥満体型の方は、睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病を合併していることが多いので、しびれを放置せず、早めに病院を受診してください。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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