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睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい年齢は?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年12月23日

睡眠時無呼吸症候群に対し、「太っている中年男性がなる病気」というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。

しかし、女性でも発症しますし、子どもからシニアまで、さまざまな年齢層の患者さんが治療を受けています。

この病気は、性別により発症しやすい年齢が違い、大人と子どもで、気を付けるべき点にも違いがあります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい年齢や、その理由を説明していきます。

1.睡眠時無呼吸症候群とは


睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が一瞬止まったり、浅い呼吸になることを繰り返す病気です。

◆「睡眠時無呼吸症候群の症状・検査・治療の基本情報」について>>

無呼吸になっても、寝ている間のことなので、自分では気がつかないかもしれません。しかし、一緒に寝ている家族やパートナーは、病気のサインである激しいいびきにより、眠りを妨げられていることがあります。

◆「いびきと病気」について>>

ほかには、日中の眠気や集中力の低下などの症状があります。この病気が原因で、居眠り運転による事故を起こした例も、たびたび報道されています。

◆「運転業務」との関連>>

放っておくと、睡眠不足による眠気や疲れだけではなく、脳卒中や心筋梗塞など、命が危険にさらされる合併症が現れることがあります。

◆「合併症」について>>

2.男性が発症しやすい年齢


男性の患者の多くは、30代~60代の働き盛りで、ピークは50代です。

30歳を過ぎると、若い頃に比べて基礎代謝が落ち、いわゆる「中年太り」になる人が増えてきます。この時期は仕事中心の生活で、運動をする機会が減る人が多いでしょう。加えて、接待や会食で、食べ過ぎたり飲み過ぎたりすることもあり、太りやすい年代です。

また、男性が肥満になると、女性に比べ、首回りに脂肪がつきやすい傾向があります。首回りに脂肪がつくと、脂肪で気道が狭くなり、無呼吸を引き起こす一因となります。

肥満は、生活習慣病につながる場合も多いのですが、睡眠時無呼吸症候群の中等度以上の男性には、高血圧や糖尿病の患者さんが多いとの報告があります。
20歳の頃と比較して、体重が10kg以上増えているという方は注意する必要があるでしょう。

【参考情報】『ビジネスパーソンにおける潜在的睡眠時無呼吸症候群に関する調査研究』慶應義塾大学医学部呼吸器内科
https://www.daiwa-grp.jp/dsh/results/39/pdf/11.pdf

さらに、糖尿病患者の23%は睡眠時無呼吸症候群を合併し、睡眠時無呼吸症候群の患者の40%は糖尿病を合併していたという報告もあります。

【参考情報】『糖尿病患者の睡眠障害について』心身医学 Vol.53 No.10, 2013
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/53/1/53_KJ00008520457/_pdf

男性は、30代以降に肥満となり睡眠時無呼吸症候群を発症することが多く、さらに、生活習慣病と合併しやすいのが特徴です。

◆「糖尿病との関係」について>>

3.女性が発症しやすい年齢


女性の発症年齢は60代がピークで、更年期をすぎると患者が増える傾向にあります。

女性ホルモンの一種であるプロゲステロンには、気道を広げる働きがあります。このホルモンが、閉経によって減ってしまうと気道が狭くなり、無呼吸を起こしやすくなります。

また、閉経後はホルモンの影響で基礎代謝が落ち、太りやすくなるのも発症の一因となります。

【参考情報】『Can’t sleep? How menopause can contribute to sleep problems』Mayo Clinic
https://mcpress.mayoclinic.org/menopause/cant-sleep-how-menopause-can-contribute-to-sleep-problems/

睡眠時無呼吸症候群による体の不調は、更年期障害の影響だと思われやすく、気づきにくい場合もあるため注意が必要です。

もし、若い頃に比べていびきが激しくなってきたようなら、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみてください。

◆「更年期以降のいびき」について詳しく>>

閉経前の女性が発症する原因には、肥満のほか、あごの骨格があげられます。

女性は男性に比べて、あごが小さい人が多いのですが、あごが小さい人は、もともと気道が狭いため、少し体重が増えただけでも気道が塞がれやすくなります。

◆「女性のいびきの原因は?ホルモンの影響と対処法を解説」>>

4.子どもが発症しやすい年齢


子どもの発症年齢のピークは2つあります。

1度目は、アデノイドが大きくなる2~6歳です。2度目のピークは、体格や体質が大きく変化する思春期です。

子どもが睡眠時無呼吸症候群になると、熟睡できないストレスや疲れから、行動が粗暴になったり、成績が下がることがあります。

また、落ち着きがなくなることから、ADHD(注意欠如・多動性障害)だと疑われる場合もあります。

【参考情報】『Symptoms of attention deficit hyperactivity disorder (ADHD)』NHS
https://www.nhs.uk/conditions/attention-deficit-hyperactivity-disorder-adhd/symptoms/

子どもの場合、睡眠時無呼吸症候群の原因がアデノイドや扁桃の肥大であれば、手術でよくなることが多いです。

手術は全身麻酔で行われ、術後に約1週間の入院が必要となります。乳幼児でも可能な手術で、ほとんどが大きく改善する可能性が高いです。そのため、アデノイドが小さくなるのを待たずに、手術を行うことがあります。

鼻閉が強い場合は、耳鼻科で鼻のレーザー治療を行うことも検討すべきでしょう。

◆「手術」について詳しく>>

新生児も、呼吸をする力が弱いことが原因で、睡眠時無呼吸症候群になることがあります。しかし、成長とともに症状がなくなることが多く、後遺症もほとんどないと言われています。

その他、気道の奇形や感染症などで無呼吸が引き起こされ、治療が必要になることがあります。

【参考情報】【参考情報】『小児の睡眠時無呼吸』行動医学研究 23巻(2017)2号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbm/23/2/23_70_75/_article/-char/ja/#:~:text=%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AEOSA%E3%81%AE%E7%99%BA%E7%97%87,%E3%81%AE%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%81%8C%E5%AD%98%E5%9C%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

5.睡眠時無呼吸症候群の疑いがあったら


もし、以下のような症状が続いているなら、睡眠時無呼吸症候群の検査ができる病院を受診して相談してください。

 ・激しいいびき

 ・起床時の頭痛

 ・昼間の眠気、集中力低下

 ・睡眠中の息苦しさ

いちばんわかりやすいサインは「いびき」です。いびきが一時的なものではなく、毎晩のように繰り返しているのなら、念のため、原因を調べておきましょう。

◆その「いびき」睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?>>

◆「呼吸器内科で検査と治療ができます」>>

6.おわりに

睡眠時無呼吸症候群は、成人では男女で発症する年代のピークが異なります。子どもの場合は、性別による違いはありません。

発症しやすい年齢にあたる人は、「いびき」や「昼間の眠気」といった症状を軽く見ずに、病気の可能性があることを認識してください。

子どもの場合、症状があっても言葉で表現できないことが多いです。気になる兆候があれば、大人が睡眠時の状況を観察して、診察時に伝えてください。

大人も子どもも、早くに病気に気づいて治療を開始すれば、ぐっすり眠れるようになり、心身の不調も改善します。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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