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喘息・COPD治療薬「スピリーバ」の特徴と効果、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年08月07日

スピリーバは、喘息およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に用いる薬で、専用のデバイス(吸入用器具)にセットされています。

この記事では、スピリーバの使い方や効果、副作用などについて解説します。初めて使う方も、使っているうちに疑問点が出てきた方も、ぜひ読んでください。

1.スピリーバとはどのような薬か

スピリーバは、長時間作用性気管支拡張剤であるチオトロピウムを主成分とする、吸入用抗コリン薬(LAMA)です。

「コリン」とは、神経伝達物質であるアセチルコリンのことです。抗コリン薬は、副交感神経を刺激するアセチルコリンの働きを抑えることで気道を拡げ、呼吸をラクにする薬です。

スピリーバには、レスピマットという吸入器を使うタイプと、カプセルをハンディヘラーという吸入器に詰めて使うタイプの2種類があります。

レスピマットは喘息とCOPDに、カプセルはCOPDに用います。

【参考情報】『Tiotropium (Inhalation Route)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/tiotropium-inhalation-route/description/drg-20066394

◆「吸入薬」とは?>>

2.スピリーバの使い方


スピリーバは、以下の手順で1日1回、毎日吸入してください。朝・昼・夜、いつ吸入しても構いませんが、飲み忘れを防ぐためにも、時間を決めた方がいいです。

2ー1.スピリーバ レスピマットの吸入方法

①キャップを開ける
カチッと音がするまで、透明ケースを矢印の方向に180度回転させます。

②息を吐く

③薬を吸い込む
薬を「ゆっくり」「深く」吸い込みます。
急激に吸い込むと、むせることがあるのでご注意ください。

④息を止める
ゆっくり5 つ数え、その間息を止めます。

⑤もう一度①〜④の動作を行う
スピリーバレスピマットは、1セットで2回吸入する薬剤です。
①から④の動作を、続けて2回行いましょう。

⑥うがいをする
口の中に残った薬剤を洗い流します。

【参考情報】『成人編吸入動画 レスピマット/吸入方法【手順編】』環境再生保全機構
https://www.youtube.com/watch?v=g1nyYm1eWGk&ab_channel=%E7%92%B0%E5%A2%83%E5%86%8D%E7%94%9F%E4%BF%9D%E5%85%A8%E6%A9%9F%E6%A7%8B%E5%85%AC%E5%BC%8F%E5%8B%95%E7%94%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB

2ー2.スピリーバ カプセル(ハンディヘラー)の吸入方法

①ハンディヘラーのキャップをあける

②中の白いマウスピース(吸入口)を開ける

③吸入直前にカプセルを充填部(穴)に入れる
カプセルをシートからひとつ取り出します。カプセルに上下はありませんので、そのまま充填部に入れ込みます。

④マウスピースを、カチッと音がするまでしっかり閉める

⑤緑のボタンを1回押す
この操作でカプセルに穴があき、薬を吸入することができるようになります。
何回も押すと、カプセルが破損する恐れがあるので注意してください。

⑥息を吐き出す
このとき、マウスピースを口にくわえないでください。

⑦薬を吸い込む
マウスピースを、唇でしっかりくわえます。

頭をあげたまま、「ゆっくり」「深く」、カプセルの震える音が聞こえる、あるいは震えを感じる速さで息を吸い込みます。

肺いっぱいに深く息を吸い込んだら、苦しくならない程度に息を止め、マウスピースを口からはなします。 その後、ゆっくりと息を吐き出します。

⑧もう一度、⑥と⑦の手順を繰り返す
繰り返すことで、カプセル内の薬を完全に吸入します。

⑨カプセルを捨てる
再びマウスピースを開け、使い終わったカプセルを捨てます。
カプセルは手に取らず、直接ゴミ箱に捨てるようにしてください。

⑩うがいをする
口の中に残った薬剤を洗い流します。

【参考情報】『成人編吸入動画 ハンディヘラー【手順編】』環境再生保全機構
https://www.youtube.com/watch?v=Md5gppybwzY&ab_channel=%E7%92%B0%E5%A2%83%E5%86%8D%E7%94%9F%E4%BF%9D%E5%85%A8%E6%A9%9F%E6%A7%8B%E5%85%AC%E5%BC%8F%E5%8B%95%E7%94%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB

3.スピリーバの副作用


スピリーバの主な副作用として、以下のような症状があります。

 ・口やのどの渇き
 ・声のかすれ
 ・のどの刺激感
 ・発疹
 ・かゆみ
 ・めまい
 ・頻脈

また、緑内障や前立腺肥大があると使えないこともあるので、思い当たる方は医師に相談してください。

【参考情報】『Acute angle-closure glaucoma precipitated by local tiotropium absorption』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17005425/

4.使用上の注意点


スピリーバカプセルは、一見普通のカプセル剤(飲み薬)のように見えます。間違って内服しないように注意してください。

スピリーバは、喘息の発作を抑える薬ではありません。発作が起こり、咳や息苦しさが強くなってきたときは、医師から処方された発作治療薬(リリーバー)を服用してください。

◆「もしも喘息発作が起こったら~緊急時の対処法~」>>

吸入を忘れてしまった場合には、気がついた時点で、できるだけ早く吸入してください。次回吸入まで時間がない場合は、1回分を飛ばして、次の分から忘れずに吸入してください。

妊娠中やその可能性のある方、授乳中の方は医師に相談してください。

【参考情報】『Asthma During Pregnancy』Asthma and Allergy Foundation of America
https://aafa.org/asthma/living-with-asthma/asthma-during-pregnancy/

◆「喘息の女性が気になる妊娠中の不安や疑問に答えます」>>

5.スピリーバの薬価


スピリーバの薬価(2024年8月調べ)は、以下となります。

 ・スピリーバ吸入用カプセル18μg       105.8円

 ・スピリーバ2.5μgレスピマット60吸入150μg 3320.4円

 ・スピリーバ1.25μgレスピマット60吸入75μg 1904.7円

スピリーバの代わりとなるジェネリック医薬品や市販薬はありません。

6.おわりに

スピリーバをはじめとする吸入用抗コリン薬は、COPD治療のキードラッグのひとつであるだけではなく、喘息治療においても重要な働きをしています。

スピリーバの効果を発揮させるためには、正しい方法で吸入することが大切です。もし、うまく吸入できない場合は、医師に相談してみましょう。

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