昼間の眠気が耐えられないなら、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう
つい夜更かしをした時や、なかなか寝付けなかった日の翌朝は、誰でも昼間に眠くなります。
しかし、そのような眠気は一時的なものなので、多少の睡魔に襲われても、起きていようと頑張っていれば、持ちこたえられることが多いでしょう。
しかし、猛烈な眠気に襲われ、大事な会議の最中や運転中でも我慢できずに眠ってしまうのなら、病気かもしれません。
この記事では、昼間に眠くなる原因を紹介し、睡眠時無呼吸症候群の可能性について解説します。日中、強い眠気に襲われ困っている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に一瞬呼吸が止まったり、呼吸が浅くなることを繰り返す病気です。
昼間の眠気のほか、以下の症状があれば、睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いです。
・激しいいびき
・起床時の頭痛
・夜中に何度もトイレに行く
・寝汗をよくかく
睡眠中に呼吸が止まると、必要な酸素を十分に取り込めなくなるため、体が低酸素状態となります。
すると、通常は昼間に働く交感神経が、低酸素状態を改善するため、夜も活発に働くようになります。
その結果、心臓や血管に負担がかかり、高血圧や心不全、糖尿病などの合併症が現れる恐れがあります。
2.なぜ睡眠時無呼吸症候群だと昼間に眠くなるのか
睡眠時無呼吸症候群の人は、自分では気づいていなくても、毎晩何度も呼吸が止まっています。
そのたびに、夜中に何度も目が覚めて睡眠不足になったり、熟睡できずに悪夢や寝言、寝汗が増え、睡眠の質が下がります。
睡眠の質や量が低下すれば、それを補おうとして、昼間に眠くなります。また、眠気のため仕事や学習に集中できず、ミスを繰り返してしまったり、イライラすることもあります。
最悪の場合、居眠り運転で事故を起こし、自分や他人に危害が及ぶことがあります。
3.検査と治療
もしかして睡眠時無呼吸症候群では?と思った人は、病院を受診して検査を受けましょう。
3-1.検査
検査には、簡易検査と精密検査があります。
簡易検査は、「アプノモニター」という小型の医療機器を持ち帰り、就寝前に自分でセットして行います。
簡易検査の結果、さらに詳しく調べる必要があると判断されたら、精密検査を行います。
精密検査では、寝ている間の呼吸や脳波などさまざまなデータを測定して、睡眠中の体の状態を確認します。
3-2.治療
治療では、主にCPAP(シーパップ)という医療機器を用いて、寝ている間の呼吸をサポートします。
その他、患者さんの症状や事情に応じて、ASVやマウスピースを使うこともあれば、手術を行うこともあります。
睡眠時無呼吸症候群は、肥満が原因で発症することがあります。当てはまる患者さんは、減量に取り組むと、治療の効果が出やすくなります。
【参考情報】『Obstructive Sleep Apnea and Body Weight』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2440784/
4.昼間に眠くなる他の原因
睡眠時無呼吸症候群以外にも、昼間に眠くなる原因はいくつかありますが、心配ないものと、病気によるものがあります。
4-1.睡眠不足
仕事や家事に追われていたり、趣味や遊びが止められなくて、睡眠時間を削ってしまう人は多いでしょう。
たまになら、そんな日があってもすぐに体調は回復するでしょうが、慢性的な寝不足状態に陥っているなら、睡眠時間を確保する必要があります。
時間が取れない日も、なるべく質の良い睡眠になるよう、寝る前には「スマホやパソコンを見ない」、「カフェインを摂らない」、「お酒を飲まない」、「タバコを吸わない」ことを心がけましょう。
4-2.熟睡できていない
ちゃんと寝ているはずなのに、昼間に眠くなってしまうのなら、睡眠の質に問題があるのかもしれません。
例えば、精神的なストレスを抱え、眠りが浅くなっていたり、加齢により朝早くに目覚めてしまうようになり、十分に寝た気がしないこともあるでしょう。
眠りの質に問題があり辛い場合は、かかりつけ医や内科、精神科、心療内科で相談してみましょう。
【参考情報】『不眠症』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html
4-3.ナルコレプシー
遺伝子の異常により、オレキシン(ヒポクレチン)という神経細胞が働かなくなるため発症する病気です。
この病気になると、いきなり猛烈な眠気に襲われて耐えられなくなり、昼間に眠り込んでしまうことがあります。
また、大喜びしたり、びっくりしたりと感情が高まった時に、体の力が抜けてしまうことがあります。
思い当たる方は、精神科か睡眠外来を受診して相談してみましょう。
【参考情報】『ナルコレプシー』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-043.html
4-4.血糖値スパイク
糖尿病予備軍の人に起こりやすい現象です。
食後、血糖値が上がると、それを下げようとして、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
すると、健康な人なら血糖値はゆるやかに下がっていきます。
しかし、インスリンの働きが悪くなっている人は、食後の血糖値が急に上がり、その後、急激に下がることがあります。
このような血糖値の乱高下により、低血糖が引き起こされると、食事の後に強い眠気が出てきます。
4-5.うつ病
うつ病になると、不眠や早朝覚醒、過眠など、睡眠に関するさまざまな問題が起こることがあります。
そして、病気のせいで、夜なかなか寝付けなかったり、朝早くに目が覚めてしまうことが続くと、昼間に眠くなります。
睡眠の問題以外にも、「気分が落ち込む」「意欲が湧かない」「イライラする」などの症状があり、仕事や生活に支障をきたすようなら、精神科か心療内科を受診して、適切な治療を受けましょう。
【参考情報】『うつ病』神奈川県ホームページ
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/nf5/kokoro/cnt/utsu.html
5.おわりに
睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、昼間の眠気が続き、仕事や日常生活に悪影響が及びます。
さらに、血管がダメージを受け続け、心筋梗塞など命にかかわる病気を発症する恐れもあります。
しかし、早めに治療を開始すれば睡眠の質が改善され、熟睡できるようになります。
昼間の眠気や疲れに悩んでいる人は、加齢やストレスのせいだと決めつけず、一度睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみてください。