更年期以降の女性のいびきの原因は?改善のためにできること
女性は、年齢とともにいびきが増える・激しくなることがあります。特に更年期をきっかけに、その傾向が強くなります。
更年期は、女性ホルモンの影響でさまざまな不調が起こりやすい時期ですが、いびきも女性ホルモンの関係で増えることがあります。
この記事では、更年期以降にいびきが増える原因を解説します。改善のための方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.いびきの主な原因
いびきは、何らかの原因によって気道が狭くなった場合に発生します。
気道が狭くなる原因には、以下のようなものがあります。
1-1.疲労やストレス
疲労やストレスが強くなると、体は回復のために筋肉を緩ませて緊張をほぐします。
その際、のど周辺の筋肉も緩むため気道が狭くなり、いびきが出やすくやります。
◆「睡眠時無呼吸症候群とストレスの関係とは?ストレスが原因で発症するのか」>>
1-2.風邪などによる鼻づまり
風邪や花粉症などで鼻が詰まると、鼻に空気が通りにくくなるため、口呼吸になることがあります。
口呼吸になると、舌が気道に落ち込んで狭くなるため、いびきの原因となります。
1-3.飲酒
アルコールには、筋肉を弛緩させる作用があります。
そのため、お酒を飲むと舌の筋肉が緩んで気道に落ち込み、いびきが出ることがあります。
1-4.喫煙
タバコの煙に含まれる有害物質が気道に慢性的な炎症やむくみを起こし、気道が狭くなることでいびきが生じます。
1-5.睡眠薬
ハルシオンやレンドルミンなど「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれる睡眠薬には、筋弛緩作用のある成分が含まれています。
従って、服用すると舌や気道の筋肉が緩んでいびきが出やすくなります。
1-6.肥満
肥満体型の人は、首回りにも脂肪がついているので、気道が圧迫されて狭くなり、いびきをかきやすくなります。
【参考情報】『Snoring』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15580-snoring
1-7.骨格
骨格が細い人や顎が小さい人は、もともと気道が狭い為、痩せていてもいびきをかく傾向があります。
また、噛み合わせが悪いこともいびきの原因となることがあります。
2.更年期とその症状
更年期とは、閉経前後の約10年間(45~55歳頃)の時期を指します。
この時期は、女性ホルモンの分泌量が減少する影響で、以下のような症状が現れることがあります。
・ホットフラッシュ(突然のほてり、異常な発汗)
・動悸、息切れ
・疲れやすさ、倦怠感
・頭痛
・精神症状(抑うつ、イライラなど)
・睡眠障害(不眠、寝つきが悪いなど)
更年期の症状は個人差が大きく、ほとんど症状のない人もいれば、治療が必要なほど重くなる人もいます。
【参考情報】『更年期障害』日本産科婦人科学会
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=14
3.なぜ更年期以降にいびきが増えるのか
更年期以降にいびきが増える理由としてまず挙げられるのは、女性ホルモンの減少です。
女性ホルモンの一種であるプロゲステロンには、気道を広げる働きがあります。
そのため、女性は男性よりいびきが少ないのですが、更年期になるとプロゲステロンが減少するので気道が狭くなり、いびきが出やすくなってしまいます。
【参考情報】『Progestin and estrogen reduce sleep-disordered breathing in postmenopausal women』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2543656/
また、加齢に伴い筋肉量が減少すると、生命維持のために最低限必要なエネルギー量である基礎代謝量が減少します。そのため、太りやすくなり肥満体型になってしまうと、いびきが発生します。
さらに、更年期障害の症状として睡眠障害が現れると、心身の緊張を解こうとして筋肉が緩み、喉周辺の筋肉も緩んでしまいます。すると、気道が狭くなっていびきが出やすくなります。
睡眠障害が辛い時には、睡眠薬を使いたくなることもあるでしょう。しかし、睡眠薬の中には筋弛緩作用を持つものもあるため、知らずに服用してしまうといびきが悪化していきます。
4.更年期以降のいびきを改善する方法
更年期以降のいびきは、健康的な体型を維持することで改善が可能です。
まず、肥満体型の方は、標準体重を目指して減量に取り組みましょう。
標準体重は、身長(m)×身長(m)×22で計算できます。
例えば、身長155cmの人なら、1.55×1.55×22=52.86となるので、52~53kgが標準体重となります。
全身の脂肪が落ちてくると、のど周辺の脂肪も落ちてきます。すると、脂肪に圧迫され狭くなった気道が広がって、いびきが出にくくなってきます。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動で体を動かすと、基礎代謝量が上がって太りにくい体になるため、いびきの予防に有効です。
また、舌の筋力も鍛えると予防効果が高まります。
噛み応えのある食材を積極的に摂ったり、舌を動かす体操を継続して行うと、舌の筋力がアップしていびきが軽減していきます。
舌を鍛えると、いびきの大敵である口呼吸の改善にもつながるため、二重の意味で効果があります
睡眠障害や精神的な問題を和らげるため、睡眠薬を使いたい場合は、病院を受診して筋弛緩作用のない睡眠薬を処方してもらいましょう。
ほかには、就寝時に横向きやうつ伏せで寝ることや、加湿器などで室内の湿度を40~60%に保ち乾燥を防ぐことも、いびき改善につながることもあります。
5.対策してもいびきが改善しなかったら
いびきを改善する対策を行っても効果が感じられなかった場合、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因で、いびきが出ている可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。
この病気になると、毎晩のように激しいいびきをかいたり、夜中に何度も起きてしまうことがあります。その他、日中の眠気や起床時の頭痛などの症状も現れます。
もし、睡眠時無呼吸症候群が原因でいびきが出ている場合、放っておくと生活習慣病や心血管疾患が合併することがあります。
また、閉経後の女性に多い病気である骨粗鬆症のリスクも高まります。
しかし、これらのリスクは治療によって改善することができます。
6.おわりに
更年期以降のいびきを改善するためには、健康的な体型維持と筋力アップが効果的です。
しかし、対策を行ったにもかかわらず、いびきが良くならない場合は、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみましょう。
「更年期だから、多少体に変化があっても仕方がない」と思うかもしれません。しかし、不調の原因が、更年期とは別のところに隠れている場合もあります。
いびきの原因が、睡眠時無呼吸症候群であった場合、治療によりいびきは減少します。また、就寝中の呼吸がスムーズになることで、睡眠の質量が上がり、熟睡感も得られることが期待できます。