産後にいびきをかくようになった原因は?改善のために知っておきたいこと
産後は出産による体のダメージが大きく、育児の負担も重なるため、心身ともに疲れが溜まりやすくなります。
さらに、生活環境も大きく変化することで、出産前にはなかった悩みが生じることもあるでしょう。そのひとつに、いびきがあります。
妊娠をきっかけにいびきが出るようになったり、産後にいびきの音が激しくなることはよくあります。
この記事では、産後のいびきの原因と対処法を紹介します。いびきにお悩みの方は、無理のない範囲で試してみてください。
目次
1.いびきの主な原因
いびきは、空気の通り道である気道が何らかの原因で狭くなり、狭くなった気道を空気が通り抜ける際に鳴る音です。
以下、いびきが発生する原因について説明します。
1-1..疲労やストレス
疲れやストレスを感じると、体は筋肉を緩ませて緊張をほぐし、回復を促そうとします。
その際、喉周りの筋肉も緩むのですが、喉周りの筋肉が緩むと気道が狭くなるため、いびきが出やすくなります。
1-2.鼻づまり
風邪や花粉症などで鼻が詰まると、鼻から呼吸がしにくくなり、口を開けて呼吸をするようになります。
口呼吸になると、舌が落ち込んで気道を塞ぎ、空気の通り道が狭くなるので、いびきの原因となります。
1-3.肥満
肥満になると、首回りにも脂肪がつくため、気道が脂肪に圧迫され狭くなります。
さらに、舌にも脂肪がつくと、喉に落ち込んで気道を塞ぐため、いびきにつながります。
2.産後に起こりうる心身の変化
出産後の母親は、以下のような原因で、疲労やストレスが蓄積しやすくなります。
2-1.睡眠不足
特に新生児は、昼夜を問わず2~3時間ごとに授乳が必要なため、親は何度も夜中に授乳のために起きなくてはなりません。
このように、細切れでしか睡眠時間が確保できない状態が続くと、睡眠の質が下がり、心身の回復が十分にはできなくなります。
2-2.ストレス
睡眠不足に加え、育児の負担も重なると、ストレスが増していきます。
特に、初めての育児では、より不安を感じやすく、精神的なストレスが大きくなる傾向があります。
2-3.ホルモンバランスの乱れ
産前産後は、ホルモンバランスが急激に変化するため、以下のような不調が現れることがあります。
・抜け毛
・むくみ
・肌の不調:ニキビ、シミ、かゆみなど
・精神的に不安定になる:マタニティブルー、産後うつ
多くは時間とともに改善していくのですが、心身のダメージが大きいと、不調が長引くこともあります。
3.なぜ、産後にいびきが出るのか
産後のいびきの原因として考えられるのは、疲れやストレス、体重増加、精神的な不調などがあります。
3-1.疲れやストレス
先に述べたほうに、疲れやストレスを感じると、体は回復のために筋肉を緩ませます。その影響で気道が狭くなると、いびきが出やすくなります。
お子さんがだんだん大きくなり、睡眠時間が確保できるようになると、次第に体も回復してきます。すると、いびきも減ってくるでしょう。
3-2.体重増加
妊婦の体重増加は、赤ちゃんを産むために必要なことです。ただ、中には予想以上に体重が増えた人もいるのではないでしょうか。
妊娠中に肥満体型となった人が、産後も体重が戻らずにいると、気道が脂肪に圧迫されて狭くなり、いびきをかきやすくなります。
3-3.精神的な不調
出産後は、疲労やストレス、睡眠不足、ホルモンバランスの乱れなどが重なり心身が疲弊して、うつ状態に陥る可能性があります。
【参考情報】『産後うつ病について教えてください』日本産婦人科医会
https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/jyosei200311/
うつ状態になると、睡眠時無呼吸症候群という病気のリスクが高くなることが分かっています。この病気を発症すると、いびきが出やすくなります。
さらに、産後のうつ状態を改善するための薬でも、いびきが引き起こされることがあります。
睡眠薬や抗うつ剤の中には、舌や気道の筋肉が緩む筋弛緩作用が含まれたものがあります。そのような薬を服用していると、いびきが出ることがあります。
4.いびきを改善する方法
産後のいびきは、以下の方法で改善できる可能性があります。
4-1.ストレスを軽減する
産後は、体の変化によってストレスを感じやすい時期です。そのような時期に、育児や家事をがんばり過ぎると、心身への負担が重くなります。
例えば、家事やおむつ交換、寝かしつけなど、他の家族にできることはやってもらうと、負担が軽くなります。
産後ケア事業を行っている市町村もあるので、周りに頼れる人がいない場合は問い合わせてみましょう。
なるべく休む時間をとり、ストレスを溜めないことが、母子の健康にとっても大切です。
4-2.肥満の人は減量する
妊娠中の体重増加により肥満体型になってしまった人は、減量によりいびきが改善することがあります。ただし減量は、心身に余裕がある場合に限り行ってください。
ただでさえ、心身に負担にかかる時期である産後に減量をがんばり過ぎると、ストレスにつながってしまいます。
減量に取り組みたい人は、体調をみながら、産後3ヶ月頃から開始しましょう。
産後のダイエットでは、食事の量を減らすことは避けましょう。母乳の出や産後の体力回復に影響する可能性があり、自分だけではなく、子どもへの影響も懸念されます。
バランスのいい食事を心がけ、家でできる運動を少しずつ取り入れて、体を慣らしていきましょう。
4-3.産後うつの疑いがあれば治療につなげる
「気分が落ち込む」「眠れない」など、産後うつのような症状が続いていれば、心療内科や精神科の受診も考えてみましょう。
産後うつは、自分の努力や考え方で改善することはできないので、適切な治療を受ける必要があります。
うつ状態の人は、睡眠障害を合併しやすいのですが、治療により睡眠の質量が改善すると、いびきが軽減する可能性があります。
【参考情報】『Depression and Sleep: Understanding the Connection』Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/wellness-and-prevention/depression-and-sleep-understanding-the-connection
既に治療をしているにもかかわらず、いびきが良くならない場合は、薬がいびきを誘発していることも考えられます。
いびきが気になるのであれば、筋弛緩作用のない薬を服用できるかどうか、医師に相談してみましょう。
5.いびきが出る病気「睡眠時無呼吸症候群」とは
激しいいびきが続いているのであれば、睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性も否定できません。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。
この病気によるいびきは音が大きく、家族に「うるさい」「眠れない」と指摘されることも少なくありません。
検査の結果、睡眠時無呼吸症候群と診断されると、主にCPAP(シーパップ)という医療機器を用いて、睡眠中の呼吸を整える治療を行います。
睡眠時無呼吸症候群が原因でいびきが出ているなら、治療によりいびきは改善します。
◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>
6.おわりに
産後のいびきは、心身の回復とともに改善していくことがほとんどです。いびきを改善したいなら、まずは体を休めることを優先しましょう。
その上で、減量が必要な人は、心身が十分に回復してきたタイミングで、少しずつ行ってください。
心身が回復してきても、いびきが続いている場合は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
その場合、適切に治療を行えばいびきは減少し、睡眠の質もアップするでしょう。