咳をすると胸が痛いときに考えられる理由と病気
激しい咳が何度も出たり、咳が長引いているときに、胸が痛くなることがあります。
このような場合、咳のし過ぎが原因であることが多いのですが、何らかの病気により、咳と胸の痛み、両方の症状が現れている可能性もあります
この記事では、咳をしたときに胸が痛くなる理由や、考えられる病気について説明します。
咳が辛いときに、症状を一時的に和らげる方法も紹介しますので、参考にしてください。
目次
1.咳をすると胸が痛くなる理由
咳によって胸の痛みが生じる理由としては、筋肉痛のほか、呼吸器や心臓の病気が挙げられます。
1-1.咳のし過ぎによる筋肉痛
喘息やコロナなどの呼吸器疾患で、長期間激しい咳が続くと、胸の筋肉に強い力が加わり続け、痛みが生じることがあります。
咳をするたびに痛むほか、体を動かしたり、息を吸い込んだりするだけでも痛む場合もあります。また、痛みが脇腹や下腹に及ぶこともあるでしょう。
さらに、長引く咳や激しい咳によって、筋肉だけではなく肋骨にもダメージが続くと、肋骨が疲労骨折することもあります。
特に、骨粗鬆症により骨が弱くなっている人は要注意です。骨の折れる部位によっては、肺を傷つける可能性もあります。
1-2.肺炎
細菌やウイルスなどによって肺に炎症が起こると、発熱や倦怠感、咳、痰などの症状が現れます。痰を排出するために、咳が多くなることもよくあります。
さらに、炎症が肺を覆っている胸膜にも広がると、胸に強い痛みを感じます。呼吸とともに痛みの程度が変化する場合は、特に注意が必要です。
1-3.肺結核
結核菌に感染して起こる病気です。初期は咳や痰など、風邪と同じような症状が現れますが、進行すると、胸の痛みや血痰、全身倦怠感、微熱、体重減少などの症状も出てくるようになります。
1-4.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
肺に炎症が起こって硬くなり、呼吸がしにくくなる病気です。主な原因はタバコです。
咳や痰、息切れなどの症状から始まり、進行すると呼吸困難や胸の痛みが生じてきます。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
1-5.心臓疾患
狭心症や心筋梗塞など、心臓の病気でも、咳と胸の痛みが現れることがあります。
胸の痛みが強い場合、時には命にかかわることがあります。締め付けられるような痛みや冷や汗などがあれば、すぐに病院を受診してください。
【参考情報】『心不全で咳や痰がでるのはなぜですか?』心不全のいろは|日本循環器協会
https://heart-failure.jp/faq/answer-024/
2.胸の筋肉痛を引き起こすほどの咳が出る病気
咳のし過ぎで胸の筋肉痛が現れた場合、以下のような病気が考えられます。
2-1.喘息
気道の慢性的な炎症が原因で、咳や息苦しさが引き起こされる病気です。
喘息になると、些細な刺激にも気道が敏感に反応して咳が出ます。発作時の咳は激しく、咳が長引くと筋肉痛を起こすこともあります。
喘息の咳は、市販薬ではよくならないので、病院で薬を処方してもらう必要があります。主な治療薬は、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬です。
2-2.咳喘息
咳だけが長く続く病気です。喘息とよく似た病気ですが、喘息特有のヒューヒュー・ゼイゼイという呼吸音(喘鳴:ぜんめい)や息苦しさはありません。
風邪などの呼吸器感染症をきっかけに発症することが多く、咳が長引くことにより、胸の筋肉が徐々にダメージを受け、筋肉痛につながることがあります。
咳喘息の治療には、喘息と同じように吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を用います。治療をせずに放っておくと、喘息に移行する可能性もあるため、早めの対処が肝心です。
2-3.新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルスに感染すると、熱や倦怠感、咳などの症状が現れます。咳がひどくなると、胸や背中、お腹の筋肉が疲れて筋肉痛が現れます。
症状が落ち着くとともに、咳や胸の痛みは治まってきますが、中には後遺症により、咳が長期間続く人もいます。
2-4.マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマという特殊な病原体に感染して起こる病気です。
この病気になると、発熱や乾いた咳など、風邪のような症状が現れます。咳は激しく、しかも1カ月ほど続くため、咳のし過ぎで胸の筋肉が痛くなることがあります。
2-5.百日咳
百日咳菌に感染して発症する呼吸器感染症です。風邪のような症状から始まり、症状が進むと咳がひどくなります。
百日咳の咳は激しく、落ち着くまでに約3カ月(100日)という長い期間を要します。そのため、咳による筋肉痛が引き起こされることがあります。
治療には、マクロライド系と呼ばれる抗菌薬を用います。治療を開始すると、菌の感染力はなくなりますが、咳はしばらく続きます。
3.呼吸器内科で行う検査
咳をして胸が痛いときに、呼吸器内科で行う検査を紹介します。
3-1.画像検査
X線(レントゲン)やCTなどで胸部画像を撮影し、肺の異常や炎症などを確認します。
炎症があれば肺が白く写るため、肺炎などを見つけることができます。また、肺結核があれば空洞が写ることがあります。
3-2.血液検査
アレルギーや炎症の有無を確認します。
アレルギーによって咳が出ている場合、どのような物質に対してアレルギー反応が起こっているかを調べることができます。
また、肺炎や感染症があれば、白血球や炎症のデータに異常が現れます。
3-3.呼吸機能検査
呼吸機能や気道の状態などを調べる検査です。スパイロメトリーやモストグラフなどの種類があります。
喘息や咳喘息、COPDなどの疑いがある場合に行われます。
4.激しい咳の対処法
激しい咳が続き、胸の痛みがしんどい時にできる一時的な対処法を紹介します。
4-1.水分をとる
のどが乾燥していると咳が出やすくなるため、水分を摂取して喉を潤すといいでしょう。
ただし、冷たい飲み物はのどを刺激するため、常温または温かい飲み物を選んでください。
4-2.部屋を加湿する
部屋が乾燥していると、のども乾燥しやすくなります。特に、冬は乾燥しやすくなるので、加湿器などを使って部屋の湿度を40~60%程度に保ちましょう。
加湿器がない場合は、濡れたタオルや洗濯物を干しておくと、部屋の湿度が調整できます。
4-3.ハチミツの摂取
子どもの咳には、ハチミツの摂取が効果的だという研究結果があります。
【参考情報】『Honey for acute cough in children』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25536086
お子さんの咳が激しく辛そうであれば、ハチミツを入れて溶かしたお湯をあげてみましょう。飲みにくい場合は、レモン汁を少し入れると、口当たりがさわやかになります。
ただし、1歳未満の子どもにはハチミツを与えてはいけません。乳児ボツリヌス症という病気を発症する恐れがあります。
【参考情報】『ハチミツによる乳児のボツリヌス症』消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/microorganism_virus/contents_001/
5.おわりに
咳と胸の痛みが現れる原因は、咳のし過ぎで胸に筋肉痛が生じる場合と、呼吸器や心臓の病気によって、咳と胸の痛みが出ている場合があります。
呼吸器感染症が原因なら、快方に向かうにつれ症状は軽減しますが、喘息や心臓病など感染症以外の原因で咳が続いているなら、放っておいてよくなることはありません。
市販薬を服用しても咳がよくならないときや、咳や胸の痛みがつらくて夜も眠れない場合は、病院を受診して原因を調べ、適切な治療を受けましょう。