なぜ横になると咳が出る?原因と対処法を解説します
ゆっくり休もうと思って横になると、咳が出てしまうことがあります。
ラクになりたくて横になったのに、そのせいで咳が出てしまうと、寝付きが悪くなったり、睡眠不足になったりして、疲れがとれなくなってしまいます。
この記事では、横になると咳が出る原因や考えられる病気について説明しています。
一時的に咳を和らげる対処法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.横になると咳が出る理由
体を横にした時に咳が出る場合、考えられる理由を紹介します。
1-1.気道の乾燥
空気が乾燥しやすい冬の時期や、暖房や空調が効いた部屋では、空気の通り道である気道の乾燥が激しくなります。
気道が乾燥すると粘膜のバリア機能が低下して、病原体のような異物からのダメージを受けやすくなります。
すると、粘膜が炎症を起こしたり、ささいな刺激にも反応して、咳が出ることがあります。
1-2.気道の圧迫
肥満などで首回りに脂肪がついている人は、横になると気道の一部が圧迫され、気道が狭くなったり、一時的にふさがってしまうことがあります。
気道が狭くなると、空気が通りにくくなるため十分な呼吸ができず、苦しくなって咳が出ることがあります。
1-3.アレルギー
喘息やアレルギー性鼻炎のようなアレルギー疾患がある人は、横になると咳が出ることがあります。
特に、布団やラグ、ソファのような布製品には、ダニやホコリなどアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が潜んでいるので、それらに反応すると咳が出ます。
また、アレルゲンに反応して鼻の中や喉に粘液が溜まると、横になった瞬間に溜まった粘液が気道に垂れこみ、咳を引き起こすことがあります。
1-4.胃食道逆流症(逆流性食道炎)
胃食道逆流症とは、胃酸が食道に逆流し、胸やけなどの症状が現れる病気です。
この病気の人は、横になると胃酸が逆流しやすくなるため、喉が胃酸に刺激され、咳が出ることがあります。
【参考情報】『胃食道逆流症(GERD)ガイドQ&A』日本消化器病学会ガイドライン
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/gerd.html
【参考情報】『Cough』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/17755-cough
2.横になると咳が出るときに考えられる呼吸器の病気
横になると咳が出る場合、呼吸器の病気にかかっていることも多いです。
2-1.風邪やコロナなどの呼吸器感染症
風邪やインフルエンザ、コロナなどの呼吸器感染症にかかると、咳が出ます。
このような咳は、病気が治れば自然となくなりますが、症状が強いときや、重症化した場合には、横になっても咳が続くことがあります。また、コロナの場合は、後遺症として咳が長引くこともあります。
2-2.喘息
気道に慢性的な炎症が起こっていることで、咳や息苦しさなどの症状が現れる病気です。ダニやホコリなどのアレルゲンやタバコの煙、寒暖差などによって症状が引き起こされます。
特に、横になったときに症状が強くなるとしたら、布団などの寝具にダニが発生している可能性があります。ダニの死骸や糞もアレルゲンとなります。
治療には、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を使用します。症状が落ち着いてきても、薬は継続して服用し続けること必要があります。
2-3.咳喘息
咳だけが8週間以上続く病気です。風邪などの呼吸器感染症がきっかけで発症することが多く、発熱などの症状が治まっても咳だけが長く続きます。
喘息とよく似た病気ですが、咳喘息の症状は咳だけで、息苦しさは現れません。
治療には、喘息と同じように吸入ステロイド薬と気管支拡張薬を用います。咳喘息の患者の約30%は喘息に移行するといわれていますが、早めに適切な治療を開始すれば移行を防ぐことができます。
3.呼吸器内科で行う検査
横になった時に咳が出る場合、何らかの疾患が隠れている可能性があります。
呼吸器内科では原因を探るため、必要に応じて検査を行います。
3-1.画像検査
胸部を撮影し、肺の異常や炎症などを確認する検査です。X線(レントゲン)、CT(コンピュータ断層撮影)、MRIなどがあります。
肺に炎症などの異常があれば白く写るため、炎症部位や範囲が分かります。
3-2.血液検査
血液中にある細胞や抗体などを測定し、体の異常やアレルギーの有無を検査します。
アレルギー体質であるかどうかを調べたり、どの物質にアレルギー反応が出るのかを調べることができます。
3-3.呼吸機能検査
肺に溜められる空気の量や吐く息の速さなどを測定し、肺の機能を調べます。スパイロメトリーやモストグラフなどの種類があります。
喘息や咳喘息の疑いがある場合によく行われる検査です。
4.横になると咳が出るときの対処法
咳が激しいときや止まらないときは、なかなか眠れず体力を消耗するため、できるだけ早く和らげたいと思うでしょう。
以下、自分でできる一時的な対処法を紹介します。
4-1.水分・ハチミツを摂る
のどが乾燥していると咳が出やすくなるため、水分を補給してのどに潤いを与えましょう。
冷たい飲み物よりも、白湯など温かい飲み物の方が、のどへの刺激が少ないのでおすすめです。
また咳には、ハチミツが効果的であるという研究報告があり、スプーン1杯ほどのハチミツを飲むといいといわれています。子どもの場合は、お湯に溶かして、少しずつ飲ませるとよいでしょう。ただし1歳未満の子どもには絶対にハチミツを与えないでください。乳児ボツリヌス症にかかることがあります。
【参考文献】厚生労働省 ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html
大人の場合は、ハチミツ入りのコーヒーがよいという報告もあります。
4-2.部屋を加湿する
部屋の湿度が低いと、喉が乾燥して咳が出やすくなります。40~60%程度の湿度を保ち、のどへの負担を軽くしましょう。
加湿器がなければ、濡れたタオルや洗濯物を部屋に干して、湿度を上げましょう。
濡れマスクも効果的です。濡れマスクは、冷たい空気の刺激から気道を守り、とくに喉や鼻の粘膜の乾燥を防ぐ効果が高いです。
4-3.頭を高くして寝る
うつ伏せや仰向けで寝ると、気道が圧迫されて咳が出やすくなります。
気道の圧迫を防ぐためには、枕などを使って頭を高くして寝ましょう。また、仰向けで寝るよりも横向きに寝た方が、気道の狭窄が起きにくくなります。
ただし、新型コロナウィルス感染症の場合、酸素の取り込みやすさや痰の出やすさなどの点で、うつ伏せが推奨されていますので、参考にしてください。
【参考情報】『新型コロナウィルス感染症における呼吸サポート 呼吸が楽になる「うつ伏せ」のすすめ』 日本看護技術協会
https://jsnas.jp/wp-content/uploads/2020/06/utsubuse.pdf
4-4.アレルゲンの除去
アレルギーを引き起こす物質であるダニやホコリを除去しましょう。
寝室をこまめに掃除し、寝具もしっかりと洗濯しましょう。布団は乾燥機を利用してダニを死滅させたり、布団用の掃除機でダニの死骸やホコリを吸い取りましょう。
寝室に空気清浄機を置いてもいいでしょう。
5.おわりに
横になると咳が出る原因には、気道の乾燥やアレルギー、呼吸器の病気などがあります。
のどを潤したり、部屋の湿度を保っても咳が2週間以上続いている場合は、病院を受診して原因を調べましょう。
放っておくと、症状が悪化したり、治療が難しくなることもあります。おかしいと感じたら、早めに医師に相談し、適切な治療を受けましょう。