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インフルエンザ治療薬「リレンザ」の特徴と効果、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年08月06日

リレンザは、インフルエンザの症状を軽減し、感染拡大を予防する薬のひとつです。

インフルエンザは、突然の高熱(38℃以上)にはじまり、頭痛、筋肉痛、関節痛、のどの痛み、咳などの症状が現れる感染症です。

よくある病気ではありますが、乳幼児や高齢者、持病のある方は重症化して、重い肺炎や脳症になることもあります。

この記事では、リレンザの特徴、使い方、副作用、使用上の注意などについて詳しく説明します。

いざというときに、正しく対処できるよう参考にしてください。

1.リレンザとはどのような薬か


リレンザは、ザナミビル水和物を主成分とした抗インフルエンザウイルス薬です。

ザナミビル水和物の白い粉末が、「ブリスター」と呼ばれる両面アルミニウムの銀色の丸いパッケージ(ディスク)に包装されています。その粉末を、専用の吸入器(ディスクヘラー)に入れて吸入します。

インフルエンザA型・B型に有効な薬で、インフルエンザウイルスが体内で増えていくのを抑えます。5歳以上から服用することができます。

以下のような、特にインフルエンザの感染リスクが高い濃厚接触者の方に対しては、予防投与も可能です。

 ・インフルエンザ発症者の同居家族または共同生活者

 ・高齢者(65歳以上)

 ・慢性呼吸器疾患または慢性心疾患がある方

 ・糖尿病などの代謝性疾患がある方

 ・腎機能障害がある方

ただし、リレンザの予防投与には保険が適用されないため、全額自己負担となります。

【参考情報】『Relenza (zanamivir) Information』U.S. FDA
https://www.fda.gov/drugs/postmarket-drug-safety-information-patients-and-providers/relenza-zanamivir-information

◆「抗インフルエンザ薬の予防投与」について>>

2.リレンザの使い方


リレンザは、専用の吸入器(ディスクヘラー)を用いて吸入する薬です。粉の状態のまま直接飲むことは、絶対にしないでください。

使用量および回数は、医師が症状に基づいて決定しますが、以下、一般的な服用方法を紹介します。

2-1.インフルエンザ治療の場合

通常は1日2回・5日間、1回につき2ブリスターを服用します。

インフルエンザの症状が現れてから2日(48時間)以内に服用することで、ウイルスの増殖を抑え、効果を発揮します。

<リレンザの吸入方法>
①吸入器(ディスクヘラー)のカバーを外し、トレーを引き出します。

②吸入器からトレーを取り外し、薬が入ったディスクを4つの穴に収まるようにセットします。

③ディスクをセットしたら、トレーを吸入器に押し込んで元の位置に戻します。

④吸入器のフタを開けて垂直に立てます。すると、ディスクの4つのブリスターのうち、1つに穴が開きます。

⑤息をゆっくりと吐き切ったら、吸入器の吸入口をしっかりと咥えます。

⑥顔を上げ、「勢いよく」「深く」薬を吸い込みます。

⑦薬を吸い込んだら、吸入口から口を離して3~5秒ほど息を止め、その後、ゆっくりと鼻から息を吐いて呼吸を再開します。

1回目を吸入したら、1度トレーを引き出して戻し、2回目の吸入の準備をします。

準備が出来たら、①から⑧の動作を繰り返し、合計2ブリスターを吸入します。

吸入後はうがいをして、口の中やのどに残っている薬を洗い流しましょう。

2-2.インフルエンザ予防の場合

通常は1日1回・10日間、1回2ブリスターを使用します。治療の場合と服用回数・期間が異なるので注意してください。

患者と接触後、1~5日以内に使用を開始してください。予防の効果があるのは、リレンザを使用している期間だけになります。

吸入方法は、インフルエンザ治療の場合と同じです。

【参考情報】『成人編吸入動画 リレンザ【手順編】』環境再生保全機構
https://www.youtube.com/watch?v=p0OFlWYdjXA&ab_channel=%E7%92%B0%E5%A2%83%E5%86%8D%E7%94%9F%E4%BF%9D%E5%85%A8%E6%A9%9F%E6%A7%8B%E5%85%AC%E5%BC%8F%E5%8B%95%E7%94%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB

3.リレンザの副作用


リレンザの主な副作用には、以下のようなものがあります。

 ・頭痛

 ・手足のしびれ

 ・口の中やのどの乾燥

 ・下痢

 ・食欲不振

これらの副作用は、1%未満の割合で報告されています。

まれに起こる重篤な副作用としては、以下のような症状が報告されています。
 
 ・顔や上半身が赤くなる、ほてる

 ・皮膚のかゆみ、蕁麻疹

 ・呼吸困難

このような副作用が現れた場合は、アナフィラキシーの可能性があるので、速やかに医師に相談し、適切な処置を受けるようにしてください。

かつて、インフルエンザの治療薬を使った子どもが、飛び降りなどの異常行動をしたという報告があったため、薬の服用が心配な人も多いでしょう。

しかし、「突然走りだす」「部屋から出ようとする」「ベランダなどから飛び降りようとする」という異常行動は、インフルエンザという病気そのものが原因となっている可能性があり、治療薬を服用しなくても現れる恐れがあります。

異常行動は、発熱から2日間以内に起こりやすいと言われています。家族がインフルエンザに感染したら、2日間は一人にせず、大人が見守っていてください。

【参考情報】『インフルエンザの患者さん・ご家族・周囲の方々へ』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/pamphlet181207_01.pdf

4.使用上の注意点

リレンザの添加物には乳タンパクが含まれています。牛乳アレルギー(乳タンパクに対するアレルギー)がある方は、アレルギー反応が出る恐れがあるので、該当する方は使用前に医師に相談しましょう。

リレンザは一般的には安全な医薬品ですが、吸入薬のため、呼吸器に疾患のある人、特に喘息の患者さんは注意が必要な薬です。リレンザと喘息用吸入薬を併用する場合は、喘息用吸入薬を先に使用するようにしてください。

妊娠中でもリレンザを服用することはできますが、心配な場合は医師か薬剤師に相談してください。

【参考情報】『抗インフルエンザウイルス薬投与時の 妊婦の安全性について』日本産科婦人科学会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vftu-att/2r9852000001vg5t.pdf

リレンザは冷暗所に保管しましょう。また、小児の手の届かない場所に保管してください。

5.リレンザの薬価


リレンザの薬価(2024年8月調べ)は、5mg1ブリスターあたり120.6円です。

リレンザに代わるジェネリック医薬品や市販薬はありません。

6.おわりに

インフルエンザの治療薬には、リレンザのほか、タミフルやイナビル、ゾフルーザなどがあります。

◆「タミフル」について詳しく>>

◆「イナビル」について詳しく>>

◆「ゾフルーザ」について詳しく>>

インフルエンザの治療薬は、症状が出始めてから48時間以内に服用することで効果が発揮されます。

突然の高熱など、インフルエンザと思われる症状が現れたら、早めに薬を処方してもらって服用すると、回復までの時間が短縮できる可能性があります。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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