気をつけて!喘息と合併しやすい病気と予防法
喘息の患者さんは、ほかの病気も発症することが少なくありません。
喘息とほかの病気が合併すると、喘息の症状に加え、合併症からくる症状も現れるので、心身への負担が増します。また、喘息の症状そのものが悪化することもあります。
この記事では、喘息と合併しやすい主な病気を紹介します。合併症を予防するための方法も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.喘息とはどのような病気か
喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こっていることで、咳や息苦しさなどの症状が現れる病気です。
この病気の原因は、アレルギー性と非アレルギー性に分けられます。
アレルギー性は、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)によって症状が引き起こされます。主なアレルゲンは、ダニ、カビ、ハウスダスト、ペットの毛などです。
非アレルギー性は、タバコや気候の変化、風邪をはじめとした呼吸器感染症など、アレルギー以外の原因で発症します。
炎症により狭くなった気道は、冷たい空気や乾いた空気など、わずかな刺激にも敏感に反応します。すると、激しい咳や呼吸困難などの症状が引き起こされます。
そのため、日常生活の中で刺激を最小限に抑えつつ、炎症を和らげる治療を定期的に行う必要があります。
2.喘息と合併しやすい病気
喘息と合併しやすい主な病気は、呼吸器の病気とアレルギー性疾患です。
以下、合併しやすい病気を紹介します。
2-1.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
主に、長年の喫煙習慣によって発症する病気です。タバコに含まれる化学物質に肺が刺激され続け、炎症が生じることで、呼吸がしにくくなります。
進行すると、自力での呼吸が難しくなり、在宅酸素療法が必要となることがあります。また、肺がんや心不全などの病気のリスクが高くなります。
喘息の症状とCOPDの症状を併せ持つことを、オーバーラップ(ACO)と言います。オーバーラップに当てはまる人は、症状が重くなる傾向があります。
子どもの頃に喘息だった人が、喫煙の習慣を身につけると、オーバーラップになりやすいとされています。
【参考情報】『Asthma-COPD Overlap Syndrome (ACOS)』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/asthma/learn-about-asthma/types/asthma-copd-overlap-syndrome
2-2.アレルギー性鼻炎
花粉などアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)に刺激されて鼻腔(鼻の内部)の粘膜に炎症が起こり、腫れる病気です。
どちらも同じアレルゲンで発症することから、喘息患者のうち60%~80%程度が、アレルギー性鼻炎を合併していると言われています。
また、鼻炎によって鼻が詰まると口呼吸になるため、開いた口からアレルゲンが侵入しやすくなり、喘息が悪化する恐れもあります。
2-3.好酸球性副鼻腔炎
鼻の中に鼻茸(はなたけ:ポリープのようなもの)ができ、粘りのある鼻水や鼻づまり、後鼻漏(鼻からのどに鼻水が流れ落ちる)、嗅覚障害、頭痛、難聴などの症状が現れる病気です。
一般的な副鼻腔炎と異なり、鼻茸に好酸球という免疫細胞が多く確認されるため、この病名がつきました。
治療や手術をしても再発しやすく難治性のため、国の指定難病にされています。
風邪や細菌に感染することで鼻茸が大きくなるなど、症状が悪化するため、風邪や感染に注意する必要があります。
原因はよく分かっていませんが、喘息との合併が多いことが報告されています。
喘息を先に発症するのか、好酸球性副鼻腔炎を先に発症するのかということも、まだ分かっていません。
また、好酸球性副鼻腔炎は、NSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれるロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬に対する過敏(アスピリン喘息)を合併することも多いため、解熱鎮痛薬を使う際は、医師や薬剤師に確認することが重要です。
【参考情報】『好酸球性副鼻腔炎(指定難治306)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4537
2-4.アトピー性皮膚炎
かゆみのある湿疹が現れる、慢性的な皮膚の病気です。湿疹は、良くなったり悪くなったりを繰り返し、長期間続きます。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚を守るバリア機能が低下しているため、皮膚を通して体内にアレルゲンが侵入しやすくなっています。
すると、アレルゲンに反応して喘息の症状が現れたり、もともとある症状が悪化しやすくなります。
アレルギー体質の人は、アトピー性皮膚炎がよくなったと思ったら、今度は喘息になってしまう…と、別のアレルギー性疾患を発症することがよくあります。こうした症状が次々と現れる現象を、「アレルギーマーチ」と呼んでいます。
2-5.食物アレルギー
卵や小麦など、特定の食物に対してアレルギー反応を起こす病気です。
食物アレルギーも、アトピー性皮膚炎と同じくアレルギー性疾患なので、アレルギーが原因で喘息になった人は発症しやすくなります。
◆「食物アレルギーと糖分に注意!喘息の人がフルーツ摂取で気をつけたいこと」>>
2-6.胃食道逆流症(GERD)
胃酸や胃の内容物などが食道へと逆流し、咳や胸やけなどの症状が現れる病気です。
空気の通り道である気道と、食べ物の通り道である食道は一緒になっているため、喘息の発作による咳が、胃の内容物を逆流させることはよくあります。
また、胃の内容物が逆流すると、逆流した胃の内容物が刺激となり、気道の炎症を悪化させることもあります。
3.合併しやすい病気を防ぐにはどうすればいいのか
喘息の悪化を招く合併症を防ぐための対策を紹介します。
3-1.禁煙
COPDにより壊れてしまった肺の組織は、二度と元の健康な状態には戻りません。喫煙者は、COPDの発症を防ぐために禁煙しましょう。
禁煙が難しい時は、禁煙外来でサポートを受けることができます。ひとりでの禁煙は難しいことが多いので、専門家の力を上手に利用して、禁煙を成功させましょう。
3-2.アレルゲンの除去
アレルギーで喘息が引き起こされる人は、アレルゲンを避け、生活環境の中からアレルゲンを取り除きましょう
定期的な掃除や寝具の洗濯などで、アレルゲンを溜めないようにすることが大切です。特に寝室はアレルゲンが溜まりやすいので、空気清浄機を使ってもいいでしょう。
上記の対策により、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎の予防・改善も期待できます。
3-3.呼吸器感染症の予防
風邪などの呼吸器感染症が原因で、副鼻腔炎が生じることがあります。
また、これらの呼吸器感染症は喘息の悪化にもつながる可能性があるため、手洗いやうがいなどの基本的な感染予防対策をしっかりと行い、習慣にしましょう。
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症は、予防接種も効果があるので、喘息の患者さんは忘れずに接種しておきましょう。
3-4.虫歯の予防
虫歯や歯周病があると、細菌が上顎から副鼻腔へと侵入して繁殖し、副鼻腔炎になることがあります。
そして、副鼻腔炎による炎症が気道に広がると気道の過敏性が増し、喘息が悪化する恐れがあります。
虫歯を防ぐために、歯磨きをしっかり行い、定期的に歯科検診を受けましょう。
3-5.スキンケア
皮膚を守るバリア機能が低下していると、弱った箇所からアレルゲンが体に侵入しやすくなります。
バリア機能を保つためには、刺激の少ない洗浄剤で皮膚を清潔にし、その後、しっかりと保湿することが大切です。保湿剤はたっぷりと乗せるように塗ると、効果が高まります。
3-6.食生活の見直し
肥満だと、脂肪細胞から分泌される「レプチン」という物質の影響で気道の炎症が促され、喘息が悪化することがあります。
また、脂肪分の多い食事は肥満を招くだけではなく、胃食道逆流症を引き起こす原因にもなります。
カツ丼やラーメンなど、脂肪分が多く太りやすいメニューが好きな人は、控えるようにしましょう。
4.おわりに
喘息の患者さんは、他の病気を合併すると、症状が悪化する恐れがあります。
禁煙やアレルゲンの除去、食生活の見直しなどを行い、合併しやすい病気を予防しましょう。
喘息は慢性疾患であるため、医師による定期的な診察が大切です。診察により健康状態をチェックしておくと、合併しやすい病気も早めに見つけて対処することができます。