咳の原因は猫アレルギー?症状と対処法を解説します

猫と一緒にいると、咳やくしゃみが止まらなかったり、鼻やのどがムズムズするなら、猫アレルギーの疑いがあります。
それまでアレルギーに関する病気にかかったことがない人も、猫と一緒に暮らすようになってから、症状が現れることもあります。
この記事では、猫アレルギーの原因や症状について説明しています。症状があっても既に飼っている猫との暮らしを続けたい人に向け、対処法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.猫アレルギーとは
猫アレルギーとはどんな病気なのか、原因や症状を説明します。
1-1.どんな病気なのか
猫アレルギーは、動物アレルギー(ペットアレルギー)の一種です。
動物アレルギーとは、動物の毛やフケ、唾液、尿などに含まれるたんぱく質(アレルゲン)に触れることで、くしゃみや鼻水、咳、目のかゆみ、皮膚の発疹など、さまざまなアレルギー症状が引き起こされる病気です。猫のほか、犬や鳥、ハムスター、ウサギなどが原因で起こることもあります。
猫アレルギーは、成人の約10%〜20%がかかっていると推定されており、特に都市部での飼育増加に伴って、感作率(アレルギー反応を起こす体質の人の割合)も上昇していると報告されています。
また、猫に対してアレルギーを持つ人は、トラやライオンなど他のネコ科動物のアレルゲンにも反応を示すため、動物園やサーカスなどで症状が出ることもあります。
【参考情報】『Pet allergy』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pet-allergy/symptoms-causes/syc-20352192
1-2.原因
猫アレルギーは、猫の毛や唾液、皮脂腺などに含まれるタンパク質の一種であるFeld 1(フェル ディ ワン)からFeld 8までのアレルゲンに対して免疫が過剰に反応することで起こります。このうち、ほとんどの猫アレルギーはFeld1に反応して症状が現れます。
【参考情報】『An update on molecular cat allergens: Fel d 1 and what else? Chapter 1: Fel d 1, the major cat allergen』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29643919/
Feld1は、猫の体全体や顔、毛づくろいで付着した毛や皮膚に存在しており、唾液や皮脂と一緒に広がります。猫が毛づくろいをするたびにFeld1が毛や皮膚に付着し、それが乾燥すると細かな粒子となって空気中に浮遊します。
そのため、猫に直接触れなくても、空気中のFeld1を吸い込むことでアレルギー症状が起こることがあります。特に、室内で長時間アレルゲンにさらされたり、換気の不十分な環境では、症状が出やすくなります。
また、Feld1は衣服や家具、カーペットにも付着しやすく、外出先から家に持ち込まれることもあります。そのため、猫を飼っていない家庭でも、公共施設や友人宅で猫アレルゲンに触れることで症状が現れるケースがあります。
【参考情報】『Human allergy to cats: A review of the impact on cat ownership and relinquishment』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8721548/
1-3.症状
猫アレルギーの症状には、以下のようなものがあります。
・咳
・くしゃみ
・鼻水、鼻づまり
・のどの痛みやかゆみ
・息苦しさ
・目のかゆみや充血
・皮膚のかゆみやじんましん
これらは、猫アレルゲンに触れた直後から数時間以内に現れることが多く、症状の程度は個人差があります。
また、アレルギー体質や喘息を持つ人では、気道が過敏になり、咳や息苦しさが強く出ることがあります。
重症化すると、吐き気や下痢、めまいなどの全身症状が現れることもあります。さらに、まれではありますが、アナフィラキシーショックが起こる場合には、呼吸困難や血圧低下、意識障害を伴い、命にかかわることもあります。
【参考情報】『アナフィラキシー/Q&A』日本アレルギー学会
https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=14
症状の出方は季節や環境にも影響を受け、室内の換気状況や掃除の頻度、猫の数や活動量などによって変わることがあります。
2.猫アレルギーの検査
猫アレルギーの有無は、血液検査で抗原特異的IgE抗体を測定することで確認できます。
IgE抗体とは、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)に免疫系が反応した際に、体内で生成される抗体の一種です。
【参考情報】『Immunoglobulin E (IgE)』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/ige
通常は体を守る役割を持つ免疫反応の一部ですが、アレルギー体質の人では特定の物質に過剰に反応し、くしゃみ、鼻水、咳、目のかゆみ、皮膚の発疹などの症状を引き起こします。
血液検査では、猫アレルゲンのほか、ダニ、スギ花粉、ハウスダスト、卵、牛乳など、さまざまなアレルゲンごとにIgE抗体の量を測定します。
測定値が高いほど、その物質に対して体が敏感であることを示していますが、必ずしも症状が出るとは限りません。
また、血液検査と併せて、皮膚プリックテスト(皮膚に微量のアレルゲンを刺して反応を見る方法)を行うこともあります。こちらは即時型のアレルギー反応を確認できるため、血液検査と合わせて総合的に診断されることが多いです。
検査結果の解釈には注意が必要で、IgE値が高くても症状が出ない場合や、逆に低くても症状が強く出る場合があります。
したがって、猫アレルギーの診断は、検査結果だけでなく、実際の症状や生活環境の状況を総合的に評価して行うことが重要です。
3.猫アレルギーの治療
残念ながら、猫アレルギーそのものを根本的に治すのは難しいため、現れている症状を和らげる治療が中心となります。
治療の目的は、症状の軽減と生活の質の維持であり、発作や重篤な症状を防ぐことにもあります。
3-1.抗ヒスタミン薬
アレルギー反応が起こると、体内でヒスタミンという化学物質が放出されます。このヒスタミンが鼻や目、皮膚のヒスタミン受容体に結合することで、くしゃみや鼻づまり、かゆみなどの症状が引き起こされます。
抗ヒスタミン薬は、このヒスタミンと受容体の結合を阻害し、くしゃみ、鼻水、かゆみ、目のかゆみなどのアレルギー症状を和らげます。
抗ヒスタミン薬には、アレグラなどの飲み薬のほか、点鼻・点眼薬があります。副作用として、眠気や口の渇きが出ることがあります。
3-2.喘息治療薬
猫アレルギーによる咳や息苦しさ、呼吸困難がある場合には、気管支拡張薬や吸入ステロイド薬などの喘息治療薬が使用されます。
<気管支拡張薬>
狭くなった気管支を広げ、呼吸を楽にする薬です。吸入型と内服型があります。
<吸入ステロイド薬>
気道の炎症を抑える薬で、長期的に使用することで咳や息苦しさの発作を防ぐ効果があります。
<併用療法>
症状の重い場合は、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬を併用することで、より安定した呼吸を保つことができます。
喘息治療薬は症状が出る前から予防的に使うこともあり、定期的に使用することで発作の回数や重症度を減らすことができます。
4.猫アレルギーの対処法
猫アレルギーがある人の健康を考えると、やはり猫を飼わないのが一番であることは事実です。しかし、既に猫を飼っていて、これからも猫と暮らしたいという方も多いでしょう。
その場合は、症状をこれ以上悪化させないために、環境対策や日常的なケアを組み合わせることが効果的です。
4-1.こまめな掃除
猫の毛やフケなどのアレルゲンは、家具、床、布製品などさまざまな場所に付着するので、こまめに掃除をすることで、アレルゲンの量を減らすことができます。
<掃除機>
HEPAフィルター付き掃除機を使うと、ごく小さなアレルゲンまで吸引できます。
<床や家具の拭き掃除>
濡れた布で拭くと、埃や毛が舞い上がらず効果的です。
<布製品の洗濯>
猫が使う毛布やベッドカバーは定期的に洗濯しましょう。洗濯の際は高温水や洗剤でアレルゲンを除去します。
<猫のトイレ>
猫のトイレ周辺はアレルゲンが集まりやすいので、毎日掃除し、消毒することが望ましいです
4-2.換気をする
空気中に浮遊する猫のアレルゲンを吸い込まないよう、こまめな換気が有効です。室内の空気を循環させることで、アレルゲン濃度を下げられます。
<空気清浄機の活用>
HEPAフィルター付きの空気清浄機は、微細な猫アレルゲンを捕集できます。特に寝室やリビングなど、猫がよくいる場所に設置すると効果的です。
<換気のタイミング>
掃除やブラッシングの直後に換気を行うと、空気中に舞ったアレルゲンを効率よく排出できます。
4-3.猫のケア
猫自身のケアも、アレルゲン対策の重要なポイントです。
<ブラッシング>
猫の抜け毛を減らすため、定期的にブラッシングを行いましょう。長毛種は特に抜け毛が多いため、こまめなブラッシングが必要です。
<ブラッシング時の注意>
毛が舞い上がることがあるためマスクを着用し、作業後は手を洗いましょう。
<シャンプー>
体質や猫の皮膚状態に応じて、獣医師の指導のもとで猫を洗うことでアレルゲンを減らす効果があります。
4-4.布製品を避ける
カーペット、ラグ、布製ソファなどはアレルゲンが付着しやすいため、できるだけ減らすか、掃除がしやすい素材を選ぶとよいでしょう。
<ソファや椅子>
布製よりも、皮革や合皮製の家具を選ぶとアレルゲンが付着しにくく、掃除もしやすくなります。
<寝具・カーテン>
洗濯可能な素材にすることで、定期的な掃除や洗濯が可能です。
4-5.寝室には入れない
寝室は布団やカーペットなど布製品が多く、猫アレルゲンが溜まりやすい場所なので、猫を寝室に入れないことをおすすめします。
また、布団や枕カバーはこまめに洗濯し、アレルゲンの蓄積を防ぎましょう。
寝室で空気清浄機を使用することでも、空気中のアレルゲン濃度を下げることができます。
5.おわりに
猫アレルギーを根本的に治すことは現時点では難しいですが、生活環境を工夫したり、症状に応じた対症療法を行うことで、症状の軽減や生活の質の維持は可能です。
これまで猫と一緒に暮らして問題がなかった人でも、「最近咳や鼻水が増えた」といった変化を感じた場合は、早めに呼吸器内科やアレルギー科を受診してください。
同時に、部屋の掃除や猫のケアも行い、抜け毛などのアレルゲンをこまめに取り除く対策も講じましょう。









